第七話 年頃の幼馴染なんだから、関係が進むのなんて当たり前よね?女の子同士だって、先に進めるのよ?
前回のあらすじ 『ノーブラ抱きつかれて、良い匂いに包まれるなんて幸せ以外の何物でもないけど、だからって喜ぶのも違うわよね?真は大変なんだから(泣き顔に興奮する患者)』
ふたり、抱き合ったまま静かに涙を流す。
私は、真の心の中を全て知ることなんて出来ないけれど、それでも出来る限り、真の隣にいると決めた。
彼…彼女の幸せが、私の幸せ。
真が平穏に暮らせるようになるまで、私は…なんでもする。
そう、なんでも…。
メイクだって、身嗜みだって。
男の子だった真には、わからないことだらけのはず。
身体のことだってそう。
肌のケアや下着のサイズ、選び方…。
それだけじゃない…。
もっと…もっと大切な事も。
だって、真は元々男の子だもの。
思春期真っ盛りの『元気』な男の子…。そのほとばしるリp…性y…えーと、つまり、そういうことも発散させるのも大事だと思うの。
もちろん、自分でスるんだろうけど、それだって…。
私がっ!
私がっ!いろいろっ!
教えてあげたいっ!
…むしろ一緒に覚えていくっていうのも、大事なんじゃない?
これから先、一緒にいる時間が増えれば増えるほど、ふたりでスる機会って多くなるに決まってるの。
だって、年頃の幼馴染で、お互いに大好き。そんなふたりが一緒にいて、何も起こらない何てことある訳ないわっ!!
ううん…
是非、お願いしますっ!!
あぁ…泣いてる真も可愛いわ…。
この泣き顔だけで、私は…私は…っ!
「…ごめんね、瑠璃…。俺、不安で不安で…」
目を真っ赤なまま顔を上げる。
…もう何年も見ていなかった、真が泣いているところ。
がんばり屋さんで、我慢強くて、目標にまっすぐ進んでいく真。
何でも、まっすぐ努力してきた真が――
「不安」なんて言うなんて。
…馬鹿ね、私。
支えるって決めたんでしょ?
だったら、ちゃんと向き合わなきゃ。
私は身体を離し、まっすぐ真を見る。
涙で潤んだ瞳。
赤くなった目元がとても煽情的だけど、それは私の心に焼き付けるの。
「真…昨日も言ったけど、私はあなたのことが好き。大好き。いつからかなんてわからないくらい、ずっと好き」
言葉を止めない。
「だから、もう間違えたくない。離れたくない。…それに、真が苦しんでるの、見たくない」
真の目が揺れる。
「だから私は、隣にいるの」
さらに一歩、踏み込む。
「真が笑えるようになるまで、支え続ける。…そのあとも、離れない」
胸の奥が熱くなる。
「お願い。一緒にいさせて。…あなたの隣を、私にちょうだい」
ぽろり、と涙が落ちた。
安堵と覚悟が混ざった、不思議な涙。
あぁ…。
やっと言えた。
これで、本当に陽太とのことは終わり…ね。
『ごめんね…』
最後に、もう一度だけ心の中で彼に謝る。
そして、これからの私は、真だけのもの。
……のはず、なんだけど。
あれ?
…
真は真っ赤な顔のまま、まるで動かない。
…というか、小さくプルプルと震えている…?
え?なに?
何かあったの??
「え、ちょっと真?どうしたの?」
そう声を掛けても、私の顔を見てくれない。
え?
どういうこと?
「真ってばっ!!」
仕方なく顔を両手で挟んで向けるけど、今度は目を回してるみたい…?
小首を傾げる私に、小さい声で呟くように…
「隣をちょうだいなんて……まるでプロポーズじゃん…」
息も絶え絶えな様子でそれだけ言うと、顔を覆って蹲る。
あぁ、そういう…。
もう、真ったら純情なんだからっ!
今時、プロポーズくらい普通にするでしょうに、ねぇ??
…
…
ん?
プロポーズ??
「…あ」
小さくひと言呟くと、一気に熱が上がる。
顔、耳、頭の先まで全部熱い。
「あ…え…」
「……」
お互い、言葉出ない。
それに、さっきから心臓がうるさい。
ガードレールを棒で叩いてるような音が、鼓膜に直接響いているようで、頭がクラクラする。
血管を流れる血流の音なのかしら?
あぁ、もうっ!
身体中が熱くなってきたっ!
恥ずかしくって、もう今どうなってるのかわかんないっ!!
立ってるのか、座ってるのかもわかんないくらい。
何これなにこれ?
……
「・・・~~~///!?!?」
深呼吸よ…落ち着いて…
…冷静になりなさい、瑠璃。
ただひと言、『違う』って言えばいいだけ。
落ちついて…
「そ…」
そんなわけない?
私は、さっき『好き』って、『大好き』って言ったじゃない。
『離れたくない』『離れない』って言ったじゃない。
それなのに、『違う』の?
…もう、自分に嘘を吐かないって決めたのは誰?
なのに、また嘘を吐くの?
…
……馬鹿ね、私。
「…そうよ」
「…え?」
煮え立つほどに顔が熱いし、視点も定まらないくらいにドキドキしてるけど、それでも真に向き直って私は続ける。
「…だから…プ…プロポーズだって…言ってる…のょ…」
「…」
最後のあたりは、もう声が出てるのかどうかもわからないけど。
それでも言えた。
ちゃんと、言えたんだ…。




