第四話 真面目に大切な話をする時ってあるの。もちろん、頭の中の事は表に出さないけど。
前回のあらすじ『お手洗いで真がナニかしてたけど、それは追々一緒にヤるとして、下着を着けてる時におっぱい揉んでたら妹に見られた』
客間のテーブルに人数分の座布団が敷かれ、父、母、真、妹の琥珀と私が並ぶ。
すでに私の頭には、父のげんこつが落ちているが、これからまだ聞かれる中で、さらに怒られるのかもしれない。
でも、それも仕方のないこと。
何故か女の子なった真のことを、みんなに信じて貰えるなら、これくらいの試練何てことないわっ!!
「…いや、瑠璃が怒られたのは、自業自得じゃないかな……」
隣に座る真が、やや呆れつつも申し訳なさそうに呟く。
…まぁ確かに、朝から騒いだのは悪かったかもしれないわね…。
「…そこじゃないんだよなぁ…」
うるさいわね。
私は真の事が大好きで、しかも女の子になったんだし、積極的なスキンシップくらいいいじゃないっ!
大体、キスしたり、おっぱい揉んだりしたくらいで怒られてたら、今後付きあったり突きあったり、結婚した時どうするのよ。
「…なんか変なの混じってるけど?突きあうって何さ?」
何って…ナニよ?
もう、男の子ならみんな望むでしょ?
好きな女の子と、ナニをナニして女の子のナニに……。
「…ごめん、俺が悪かったから黙ってて」
……もう、照れ屋さんなんだからっ!
そんなところも好きっ!!
しかし、そんな私の心を知らない両親の目は、とても厳しい。
…というよりは、不審者を見る目だわ。
でも、それも仕方ない事…。
真が、急にこんな可愛い女の子になって、しかも私と両思いで関係を迫って来るなんて、誰も思いもしない事。
私だって驚いたもの。
だけど、真が望むなら、私はっ!!
「瑠璃っ!うるさいから黙りなさい」
あ、はい。
これは結構本気だ。
仕方ない、しばらく黙っていましょう。
父の小さく咳ばらいが合図であるかのように、母が口を開く。
「あの…ごめんなさいね。うちの娘が変な事してしまって…」
「え?あ、いえ……瑠璃も動転してたんだと思いますから、気にしないでください」
「でも……」
申し訳なさそうな母。
その目は、情けなさで曇っているのだろうか。
「でもね。君もこんな朝早くから遊び歩いていてはね…。変な人もいるんだから、気を付けなければならんだろう?……親御さんは、このことを知ってるのかね?」
「……いえ」
「…そうか。今日の事は、親御さんにも謝らなければならないから……あ、君、名前は?」
あ、聞くんだ。
聞いちゃうんだ…。
どんなことになるのかな…?
「あ、真です。あの、織部真…です。おじさん…」
父が小さく頷き。
母が「あれ?」と首を傾げ。
琥珀が目を丸くする。
三者三様の反応だった。
「そうか…。うちの近所にも織部さんってうちがあってね。そこの息子さんも、真というんだ。珍しい偶然だね」
あ、お父さん、まだ気づいてない。
「…あの…さっき織部さんから電話があって、真くんが女の子連れ込んでて。話を聞こうとしたけど姿を消したって……」
「あ、いえ。俺はそんなことしませんよ。彼女なんていませんし、怒られるような事もしません」
その言葉に、母がはっとする。
「あら……その言い方……」
いいところまで来てるっ!
もう少し!
「…で、君の家は?近くなのかね?」
「え?…えぇ、はい。その……この前の道を、蜜柑山の方に行った、角の家で…」
父も母が驚いたような表情で、真を見る。
「……やっぱり、真兄ちゃんなの?」
ぽつりと呟いたのは琥珀だった。
子どもの感覚って、本当に鋭い。
真は小さく頷く。
「……うん。そうだよ」
その言葉に、父も母も目を見開く。
「……真くん?」
「え? でも……女の子……」
肩を落とし、涙目で俯く真。
唇を噛みしめ、膝の上の両の拳は小刻みに震えていた。
…そうよね。
不安で仕方ないわよね。
朝起きたら女の子になってて、誰に言っても信じて貰えなくて。
唯一信じた私にはセクハラされて……。
涙なしには聞けない話だわ…。
「瑠璃は、わかってるなら自重してよっ!」
また怒られてしまった。
でも仕方ないじゃない?女の子になった真が可愛すぎるのが悪いんだし。
誤解のないように言うなら、私は『女の子』が好きなんじゃなくて、『男の子でも女の子でも真の事が好き』なんだから、間違えないようにねっ!?
「瑠璃っ、そういう話は後になさい!」
はい。
後で、真を捕まえて朝までシます。
…
しばらくして。
織部のおじ様とおば様が、息を切らせながら訪ねて来た。
朝、女の子になった真を家に帰した(つまりは追い出した)後、事情を聴こうとしたけどどこにもいなくて、あちこち連絡をしながら探していたらしい。
…そりゃそうよね。
まあ、普通、朝起きたら息子が娘になってたなんて、考えるわけないものね。
私は客間の隅で、お茶を啜りながら耳をそばだてる。
「…本当に……本当に、真なの?」
「どうして、こんな事に?」
真の両親の不安と心配が、私にも手に取るようにわかる。
理解しようにも、理性がそれを許さないのだ。
おば様は涙を流しながら真を抱きしめ、おじ様も頭を抱えている。
いや、不安や心配よりも、もっとふたりを苦しめていることがあるのだろう。
『真の言葉を信じてあげなかったこと』
仕方ない、と思う。
多分、私だって、自分の子供の性別がいきなり変わったら、受け入れられないと思うもの。
でも、それが本人を傷つけたと思えば、親の立場ならどれほど後ろめたく思えるのか。
私には、その心の奥底の悲しみまではわからない。
わかるのは…
これからは、遠慮なく真とベタベタ出来て、ボディタッチもOKで、そのうちあんなことやこんなことをシて……いろいろ性癖が開発できそうってことくらい。
長期的には、結婚も視野に入れるべきよね、うんっ!
でも、今は真の家族の戸惑いや悲しみに寄り添うのが先。
私は、姿勢を正し、正座をして真たちに向かう。
「おじ様、おば様。真は、女の子になっても真です。私が小さい頃からずっと一緒に過ごした、大事な幼馴染です。それは何も変わりません」
真も、ご両親もはっとして私を見る。
「姿が変わっても、中は昔のまま…。優しくて、カッコいい真のままです。ただ、今はまだ心が穏やかではないと思いますので、私に出来ることは協力させてください」
「瑠璃ちゃん…」
「瑠璃…」
「瑠璃ちゃん……ありがとう。お願いすることがあるかもしれないから、その時はよろしく頼むよ?」
みんな涙ぐんで私の言葉を聞いてくれる。
…信用があるっていいわ~…
普段の行いって、本当大切だわっ
ここからが本題よっ!
「つきましては」
私は背筋をぴんと伸ばす。
「私と真、しばらく一緒にいるというのはどうでしょうか?」
「……はっ?」
…おぉう、真から聞いたことない声が漏れた。
でも、ここで引き下がるわけにもいかない。
真と私の将来のためにもっ!
「服のこととか、生活の仕方とか……女の子として知っていく必要があると思うんです。私なら気心も知れてますし、教えてあげられます」
その……いろいろと。
「確かに、同年代の子の方がいいだろうね……」
「瑠璃ちゃん、よろしくお願いするわ」
おふたりは、ぱあっと顔を明るくして私を見てくれる。
『よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
内心ガッツポーズっ!
「真?瑠璃ちゃんにいろいろと、女の子のことを教えてもらうのよ?…あ、でも、変な事しちゃいけませんからね?」
「ちょっ!?…するわけないじゃんっ!むしろ、瑠璃の方が……」
あ、ヤバ。
「真!…もう少し静かな喋り方の方がいいわよ?可愛いんだから、おとなしめのキャラがいいんじゃないかな?」
「…え?」
「そうね、丁寧な言葉使いの方がいいわね。…瑠璃ちゃん、お願いね?」
私は『はいっ!』といい返事で答える。
これで、真とずっと一緒にいられる。
夢にまで見た、シチュエーション。
幸せって、こんなところにあったのね。
…
まあでも?
結局のところ、病院やらなにやら、いろいろ終わってから…ということになったので。
真との甘い生活(性活?)はまだしばらくは先になりそう。




