第三話 女の子同士なんだから、おっぱい触りながらイチャつくくらい当然よね?(違う)
前回のあらすじ『真が不安そうにしてるのがあまりに煽情的で、もう誘ってるとしか思えなかったからキスしたかったし、ノーブラで身体を寄せてきて、絶対誘ってるって確信したのに違ってて落ち込んでる』
はあ…
先程までのテンションの反動がすごい。
真が女の子になって、その混乱に乗じて『好き』って伝えたからって、気持ちが通じたわけじゃない。
そんな基本的な事さえ見落とすくらい、私は焦っていたのだろうか。
そう、今の一番の問題は…
『真が女の子になってしまったこと』だけど、これは私や真じゃどうにもできない。
だってお医者さんじゃないんだし。
何故、女の子になったのか。
原因が何なのか。
どうしたら戻れるのか。
そもそも戻れるの…?
どれもこれも、わからないことばかり。
だからまずはひとつずつ、出来ることをしていこう。
「ねえ、真…」
「……」
返事が無い。
「真ってば…」
「……」
やっぱり返事が無い。
…引かれちゃったかな。
勘違いとは言え、無理にせまったように思われちゃったかな?
あぁ~……。
失敗しちゃったか~…。
「……ねぇ、瑠璃…」
少し落ち込んでいたら、真が口を開く。
目をあげて顔を見れば、赤い顔でもじもじと身をよじっている。
あ、もしかして恥ずかしかっただけ?
素直になれなくて拒んじゃったけど、実は自分もその気だったってことかしら?
もう、素直じゃないんだからっ!
でも、そんなところも好きっ!
「どうしたの?…もしかして、我慢できない…とか?」
そんな問いに、真っ赤な顔のままだまって頷く。
その仕草すら可愛いなんて、真ってずるいなぁ…。
でも、嬉しい。
真も同じ気持ちだったなんて…。
真に求められる日が来るなんて…。
どれだけ待ち望んだか。もしかしたら、そんな日は来ないんじゃないかと思ったことも、一度や二度の話じゃない。
こんなに嬉しいなんて、あとは結婚するときくらいじゃないかしら。
真と結婚かー…。
あー……涎が…。
「あ…あのさ…」
「うん、大丈夫。私も初めてだから、一緒に…」
「…?」
「ん?」
「あの…お手洗い借りたいんだけど……」
………うん、知ってた。
もう、表情にも出ないわよ。
「あ、うん。…どうぞ、使って」
「ありがとう…」
「…?」
「…あの、付いて来て欲しいんだけど…」
え?
真って、そういう趣味があるの?
見られるのが好きって性癖があるのは知ってるけど………。そっか、真の趣味なら、私は受け入れるのみよっ!
「だって、ほら…。今は元の姿とは違うんだし…。おじさんやおばさんに、怪しまれても困るでしょ?」
…うん、わかってた。
わかってたってばっ!!
「…そうね…確かに見知らぬ子が、こんな朝早くから家の中にいたら驚くわよね」
ベッドから腰を上げ、真の手を取りながらお手洗いへと向かう。
こっそり・・・と、妹の琥珀を起こさないように、足音を忍ばせて。
「ちょっとだけ待っててね……」
赤い顔をしながら、お手洗いの中に消える真。
…え?
私、外で待ってるだけなの?
男と女で感覚とか違うと思うんだけど、それは教えてあげなくて平気なのかな?
…ま、いっか。
…
…
意外と時間掛かってるなって思っていれば、静かにドアが開いて真が顔を出す。
変わらず赤い顔。
どこか上の空のような表情を見れば、その心の内がなんとなくわかる。
…女の子になったって言っても、中身はまだ『思春期の男の子』だもんね。
仕方ないよね。
私だって、男の子になったら戸惑うだろうし、それに興味深々でナニかすると思う。自分の身体なら、誰に憚ることもないだろうしね。
ここはなにも触れずに、知らない顔しておくのが真のためなんだろうなぁ。
「ごめんね……お待たせ…」
「え?…あ、うん」
「………」
「?」
……うん、黙っておこう。
お手洗いを出てからも、真の顔は真っ赤なまま。
…自分の身体です。好きに触って良いんじゃない?
それはともかくとして、部屋でベッドに腰を下ろしてふたりきりなんて、ナニか始まる前にしか思えないのよね。
でも、その前にするべきことがある。
それは、真のお着換えっ!
今着ているシャツもズボンも、サイズがあってないのはさっき確認している。
ブラも着けてないし、パンツだって多分…というか、間違いなく男物。
むしろ、女性用着けてたら、いろいろ疑うことになると思う。
主に、性癖と交友関係。
まあ、性癖はこれからいろいろと聞いていけばいいとして…。
交友関係かぁ。
女の子関係は今後問題ないとしても、男の方が問題かなぁ…。
こんなに可愛くなったら、『元が男でも』とか言い出す人が出るかもしれない。
それに…。
幼馴染の祐也。
あいつが真に手を出そうとするかも……。
…やはりここは先手を打って…
「瑠璃」
「え?…あぁ、どうしたの?」
「それはこっちのセリフ。さっきからどうしたの?全然、心ここにあらずな状態だけど」
…真がそれを言う?
女の子になってパニック起こしてたくせに。
でも、そんなツッコミが出来るってことは、少しは落ち着いたのかな?
「…ちょっとね。これからのこととか、考えてて」
その言葉にはっとして、少し目を伏せる真。
握った拳が震えている。
そうだ。女の子になって、親にも信じて貰えなかった今の真にとって、これからのことなんて重大過ぎて直視したくないことに違いない。
どれほどに不安なのか、私には想像も出来ない。
だからこそ……。
「まずは服着替えようか」
「…え?」
とにかく、外に出られるようにしなければ。
生活云々もあるけれど、病院なりなんなりに行くにも、服は着るでしょう?
今の恰好のまま出掛けるなんて、それは…
少なくとも私は危ない。
私なら『誘ってる』と思うし、絶対に声を掛けるし、なんだったらそれ以上ナニかしたいと思うんじゃないかな?
私でも思うくらいなんだから、他の人だったら、それ以上かもしれない。
そんな飢えた狼の群れに、お肉を放り込むような真似は、危なすぎると思うの。
私の心からの話に、納得してくれたようで、少し躊躇いながらも服を脱ぎ始める真。
僅かでも見逃すまいと、目を皿のようにする私。
「…ちょっとっ!見過ぎだよ、瑠璃」
「そんなことないわよ。録画してないだけ良心的でしょ?」
「当たり前だよっ!」
理不尽なツッコミにも私は負けない。
だって、今、真を助けられるのは、私だけなんだからっ!
「…やっぱり恥ずかしいんだけど……」
どうにも覚悟が決まらない真に、私も流石に少しだけため息が出る。
服を脱がずに、どうやって着替えるの?
「でも……」
「ほら、早く脱いでっ!ブラも下着も、新しいものだから気にしないでって」
まだしばらくモジモジとしていたけれど、ようやく決心がついたのか、目を瞑り、真っ赤な顔を耳まで真っ赤にしてシャツを脱ぐ。
「…~~~~っ!?!?」
何というか、もう言葉にならない。
私がかつて思い描いた妄想でも、ここまでの感動はなかった。
心臓は高鳴り、息ができないほどに胸が締め付けられる。
真っ赤に上気した顔は、まさに火が出るほど。
頭に昇った血のおかげで、眩暈や耳鳴りがしだした。
これは、鼻血を噴き出してもおかしくないわ……。
身体のあちこちから、いろんなものが噴き出しそうになるのが良くわかる。
ああ、もうどうにかなってしまいそう…。
その形の良いふくらみは私よりも大きく、肌の滑らかさは汗ですら珠となって転がるほど。
そしてその先端は…
ぱしっ。
素早く両手で隠されてしまった。
ああ、そんな理不尽な…。
そこを見たい、触れたい、顔を埋めたい。
それだけの事が許されないなんて…。
ま、それは後々のお楽しみにしましょうか。
新しいブラを渡し、着け方を教える。
そして、
「でね、最後に…こうやって、カップの内側に手を入れて、ちょっと寄せるの」
素早く後ろに回り込んで、背後からブラの内側に手を入れ、脇のお肉を寄せあげる。
……水?
そう、この感触は、まるで水の入った大きな風船のよう。
脂肪のかたまりなんて言う人もいるけれど、確かに少しひんやりとしている。
熱を帯びた掌が、まるで吸い付くようで気持ちがいい。
もう、いくらでも触っていられるわっ!
じゃあ、反対側も………。
「ちょっとっ!!瑠璃ってば、触り過ぎだよっ!」
「えへへっ気持ちいい~っ…真の胸って触り心地最高っ!ああ、匂いも……」
「…って、もうっ!いい加減にっ……」
私が真の胸を揉みながら抱き着いていると、
「ふわぁ…ぁ…。お姉ちゃん、朝から何騒いで………」
がちゃり。
隣の部屋で寝ているはずの妹、琥珀が起き出して部屋のドアを開けた。
そして目の前の光景を見て、完全に固まる。
私も
真も
言葉が無い。
沈黙。
出るのは、何か変な汗と、喉を通り過ぎかねない心臓の拍動だけ。
どれくらいの間、3人が沈黙していたのか、わからない。
一瞬だったのか、それとも気が遠くなるほどの時間だったのか。
それでも、終わりの時はやってくる。
「おかあさーーんっ!!お姉ちゃんが知らない女の子連れ込んで、エッチなことしてるーっ!!!」
「わっ!ちょっ!!…琥珀ーっ!?!?」
ご近所に届きそうな程の大声で、泣きながら走り去る琥珀の背を見ながら、この後の己に掛かる仕置きに、私は顔を青ざめさせた。




