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028-生徒会長の背骨

 僕の席は窓際の一番後ろで、一つ前の席には生徒会長の佐田莉緒……。

 だから、彼女の背骨には結構詳しい。


 まあ、それはちょっと言い過ぎかもしれないけど、僕の調べでは、彼女の背骨は他の女子よりもちょっとだけ短いはずだ……多分。

 でも、座高が短く、脚が長い……という単純な話ではない。

 思うに、背骨のつくり自体がちょっと違うんじゃないかな。

 例えば脊椎一つ一つの長さがちょっぴり短いとか、そもそも数が少ないとか……。


 そんな訳で、その辺を調べてみることにした。

 でも、男子の僕が「ちょっと背骨を触らせて」とはお願いできないよね?

 だから、彼女のエイリアスを創造してみたんだ。


 本当は人間のエイリアスはなるべく創造したくなかったんだ。

 だって、創造はできても消し方は分からないからね。

 だから、イグジストにする前提がなければ、なんだけれど……。


 でも、今回は特別。

 実はね、アイネスの調べによって、佐田莉緒の家系がかなり異常だという事が発覚したんだ。

 何でも政府や各省庁は勿論の事、有名企業や各種学校などなど、様々な組織と関係がある一族らしい。

 しかも、巧みに名前等が変えられていて、ちょっとやそっと調べた程度では彼等の繋がりは分からない状態になっていたそうだ。

 

 あやしいよね?

 プンプン臭うよね?


 だから、佐田莉緒のエイリアスを纏って、先ずはその背骨を……。

 まあ、そんな感じさ。


 そんなこんなで、セイクリッドネストにある創造主の間……つまりは、僕専用の部屋にやって来た。

 ここならば邪魔が入ったりしないからね。

 ドワーフ達のお陰で、スライム化した優凛ですら無断で入って来る事はできない……そんな堅牢な部屋なんだ。


「さてさて……美味しい紅茶も飲んだことだし……ステラ君?」


「はい、何でしょうか、ステファン様」


 エレガントに片膝を突き、軽く首を下げたステラ……。


 相変わらず見えそうで見えないのが何とも憎いっ!

 ああ、もう――――膝をもっと立ててしまいなさいっ!


 まあ、それはさて置き、創造主らしい威厳を見せつけ、ステラには素直に従ってもらわないとね。

 だって、僕にはやるべき事があるからね!


「くふふふ……暫く一人にさせてくれるかな? こっそり秘かに確認するべき事があってね」


「えーと……お時間はどれくらいでしょうか?」


「むふふ……三十分……いや、一時間ぐらいだね」


「畏まりました。では、その間、私はもやしの収穫でもお手伝いして――」

 

「いや、僕は身体検……じゃなくて、お風呂に入るだけだから、ステラはこの部屋でいつも通りにしてくれれば問題ないはずだ」


「承知いたしました」


「……あ、よっぽどの急用じゃない限りは僕の邪魔をしないようにね」


「はい」


 徐に立ち上がり、脱衣所へと向かう僕……。




△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




 ステファンが脱衣所に入ってから十分程が経過した。

 だか、ステラは心配そうな表情で目の前にある扉に耳を当て、未だに中の様子を窺っている。

 彼女にとっては通常の行為……プレミリーシアの専属メイドをしていた時からの癖のようなものだ。


 プレミリーシアは意外とドジなところがあった。

 風呂場で足を滑らしよく転ぶのだ。

 だから、ステラは湯船に入る音を確認するのが癖になってしまったのだ。


 まあ、そんなこんなで、扉に耳を当て、中の様子を窺っているステラ……。

 だが、何時まで経っても風呂場からはそれらしき音は聞こえては来ない。

 その代わりに、布が擦れるような音やモゾモゾとした氣配は途絶える事がない。

 しかも、時折微かに、まるで喜びはしゃぐ少女のような声が……。


 ステラの表情がどんどん不安げになってゆく……。


 だが、脱衣所の扉を開け中に入る事は許されてはいない。

 緊急時ならばともかく、主であるステファンにそう厳命されている。

 

 ステラは少し氣分転換することにした。

 今まで一度たりともステファン様は足を滑らせたことはない、などと心の中で彼女自身に言い聞かせながら、テーブルに向かって歩き出した。

 そして、ステファン専用の優美な器を手に取り……。


 すると、呼び鈴が鳴った。

 来客のようだ。


 この創造主の間を訪れる者は限られる。

 別に制限をされている訳ではないが、無暗に校長室や社長室の扉をノックしたりはしない……まあ、そんなような雰囲氣がこのセイクリッドネストにもあるのだ。


「は~い!」


 創造主の間はかなり手の込んだ造りをしている。

 当然、遮音性能もかなりのものだ。

 だから、ステラの返事は来客者には届かない。

 勿論、彼女もその事を十分に承知しているが……まあ、癖なのだろう。


 扉を開けたステラ……。

 すると、部屋の外にはドワーフが一人立っていた。

 ドワーフ五兄弟の内の一人だ。


 ステファンのイメージによってかなり初期の段階で創造され現界した彼等はそれなりに地位が高い。

 だから、度々この部屋を訪れる事があるのだ。


 だが、五兄弟の見た目にはあまり違いがない……。


「あら、ディーワンさん……ですか?」


「いいえ、あっしはディースリーでやんす」


「あ、失礼しました。それで何用でしょうか? ステファン様には『緊急の場合以外は誰も部屋に入れるな』と厳命されておりまして……」


「そうでやんすか……ですが、あっしの用事はこれだけでやんす」


 ステラが受け取ったのは丁度手のひらサイズの箱だ。


 彼女がセイクリッドネストに来てから二週間程が経過した。

 その間、なめこが入った箱を受け取った事は何度かあった。

 だが、今回はそれとは違うようだ。


「あれ? ちょっと重たいですね……なめことは違うのかしら?」


「んだ……ステファン様から直々に注文を頂き、あっしら兄弟が精魂込めて作った一品だ」


「まあ、そうなのですか……あら? 宛名が……私宛になっていますね」


「じゃあ、あっしはこれで」


「あ、ありがとうございました」


 数秒程ディースリーの背中を見送り、部屋の中へと戻ったステラ……。

 ソファーに腰を落とし、受け取ったばかりの箱を躊躇なく開けはじめた。

 その顔には満面の笑みが浮かんでいる。


 ステラには昔から衝動的なところがあった。

 その事でプレミリーシアから注意された事も一度や二度ではない。

 感情が高ぶるとその想いのままに行動してしまう、という癖があるのだ。


「まあ、何と可愛らしいティーカップでしょう!」


 ステラは勢いよく立ち上がった。

 そして、その勢いのまま脱衣所に行き、扉を開けた。

 

「――ステファン様! とってもとっても素敵なプレゼントを――――――んげっ!!」




△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




「うふふ……おっぱいは普通……みたいですわ」


 僕には普通がどの程度なのかは分からないけどね。

 でも、想定していた範囲のおっぱいみたいだね。

 

 生徒会長佐田莉緒のエイリアスを纏うと、鏡には制服姿の彼女が映った。

 まあ、それが一番見慣れていたからね。

 イメージがし易かったんだ。


 その後、僕はじっくりと時間を掛けた。

 ゆっくりとブレザーを脱ぎ、ゆっくりと白いシャツを脱ぎ……で、今は上半身がブラだけになったところ。

 まあ、僕のポリシーみたいなものさ。

 だって、メインディッシュに至るまでの過程が最も心躍るからね。

 

「ぐひひひ……さてさて、お次は……」


 鏡の中には、スカートのフックを外し、ファスナーを下げる生徒会長の姿が映っていた。


 いよいよこの瞬間が来た。

 只々鏡の中を凝視し……。


「きゃはっ!」


 バサッと呆氣なく床に落ちたスカート……。


 本当はマキアのスカートみたいにヒラヒラっと落下する方が好みなのだけれど……。

 でも、まあ、仕方ないよね。


「いや……待って下さい……ドワーフ達にヒラヒラ素材でスカートを…………むふふ……それもアリですわっ!」


 などと呟きながらも、再び鏡の中へと意識を向ける……。


 すらっと長い脚と程良くくびれた腰……。

 だが、パンツはダサい。

 大き過ぎるし、おしゃれ感はゼロだ。


「これは残念過ぎます……ちょっとテンションが下がってしまいましたわ」


 パンツをズリ下げ、隠れていたお臍を露出させる。

 すると……。


「あら?」


 お臍の下には黒一色で描かれた紋様があった。

 とってもとっても悪そうな感じのやつだ。


「……淫紋? ぐふふ……生徒会長は変態さんだったのでしょうか? まさかこんなところにタトゥーシールを貼っていたなんて…………あら?」


 ……剥がれない。


 おかしいよね?

 優凛が仕事で腕や太腿に貼っていたやつは擦ったら簡単に剥がれたけど……。

 これは全然だね。


「これは……本物?」


 言うまでもなく、生徒会長はマテリアルと融合済みのイグジストなんかじゃないよ。

 ただの人間のはずなのだけれど……。


 あ、そう言えば、背骨を確認するのが第二の……いや、第一の目的だったよね。


「うーん……やっぱり、生徒会長の身体には何らかの秘密が隠されているのかもしれませんわ」


 身体を半回転させた。

 そして、後方を振り向きながら、再び鏡の中へと……。


「……ん?」


 正直、背骨については良く分からない。

 何となく通常の人間とはどこか違うような氣がしなくもない……まあ、そんな程度だ。

 だが、後ろから見てもパンツがダサい。


 いや……そうじゃない。

 超ダサいのは間違いないが、パンツの中に何かが潜んでいるっ!?


「い、嫌な予感がしてきましたわ」


 鏡に向かって思いっ切りお尻を突き出す。

 そして、恐る恐るパンツを捲ってゆく……。


 すると――――――!


「――ステファン様! とってもとっても素敵なプレゼントを――――――んげっ!!」


 突然、脱衣所の扉が開いたかと思ったら、ステラとバッチリ目が合ってしまった。

 満面の笑みを浮かべたまま固まったステラ……。


 だが、鏡に映る僕の……いや、生徒会長のお尻を目にした途端、ステラの顔がみるみる歪んでゆく――――!


「あははは……は、は、初めまして……せ、生徒会長の佐田莉緒……で、ですわ」


 ――な、何言っちゃってるの僕っ!


 もしもステラに侵入者だと勘違いされちゃったら、僕終わりだよね?

 だって、彼女はイグジストだよ?

 しかも、マテリアルとも融合済みだよ?

 彼女が本氣出したら僕なんて瞬殺されちゃうよ?


「ステファン様……ですよね? 容姿が変わられても独特の氣配は感じています」


「あははは……そ、そ、それは何よりですわ」


「そのお姿……エイリアスは何処で手に入れたのでしょうか?」


「が、が、学校で……私が通う中学校の生徒会長から……で、ですけど?」


 ステラの表情が今までに見たこともない程に険しくなった。

 何時もとは明らかに様子が違う!


 超怖いよ~!

 やっぱり僕、殺られちゃうのかな?


「……ステファン様」


「は、はい……何でしょうか?」


「お尻を見せて下さい」


「……え?」


「ですから、私にお尻を見せて下さいっ!」


「――はい、只今っ!」


 慌てて身体を回転させ、ドーンと突き出していたお尻をそのままステラに向けた。


 ――超恥っずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!


 これどういう状況……?

 何やってるの僕?

 創造主の威厳なんて微塵もないよね?


「……非常に残念ですが、間違いなさそうです」


「……へ? な、何が……ですか?」


「ステファン様が通う中学校の生徒会長……安久野魔子は――――――悪魔ですっ!!」


「……え?」


「そのお尻から生えた黒い尻尾が確かな証拠ですっ!」



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