026-プルルン星人一網打尽作戦3
アイネスが撃ち放った非情で強烈な一撃により、エルフェスタ王国領内に巣食っていたプルルン星人の拠点は一掃された。
それにより、惑星イアに存在していた彼等の拠点は全て無くなった事になる。
だが、【プルルン星人一網打尽作戦】が完全に終了……という訳ではないようだ。
今後も奴等の残党を見つけ次第、惑星イアの総力を挙げて倒すつもりらしい。
そう遠くない未来にプルルン星人は完全に消滅する事だろう。
因みに、プルルン星人と地球のレプテリアンは同一の種族だったらしい。
優凛のアナライズによれば、奴等の肌がちょっと青かったり、トランスフォームしてもハゲだったりしていたのは、主に大氣の違いによるものだったそうだ。
僕等にしてみれば、ちょっと酸素濃度が濃いかも? 程度の差異でしかないけれど……。
何かね、酸素濃度以外にも含まれている成分がちょっと違うらしいんだ。
まあ、そんなこんなで、その後は惑星イアに来た目的を……各国の観光に海水浴やバーベキューなどなど第二の夏休みを思う存分満喫できた訳だけれど……。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまった。
氣が付いた時には既に六十日ちょい……約二ヶ月が経過していたんだ。
単位を時間に直せば約千五百時間……地球では凡そ一時間半が経過した計算になる。
惑星イアに来たのは、超人氣グラビアアイドル優凛のぎっしり詰まったスケジュールの合間だったからね。
ぼちぼち地球に帰らないと不味いんだ。
でも、こっちの一日や二日なんて誤差でしかないからね。
そんなに急ぐ必要はないのだけれど……。
まあ、それはさて置き、今日は地球から来た五人でゾエ……その元々はプルルン京があった場所にやって来た。
一ヶ月程前に、僕達がこの場に来た時は城の無い城址のようだった。
串団子タワーや塀や通路などを構成していた全ての魔法金属や魔力石は綺麗に撤去され、その殆んどがエルフェスタ王国の王都に運ばれていた。
辛うじてお堀の水とそこに生息するスライムだけは残っていたけど、一言で表現すれば殺風景……まあ、そんな感じだった。
でも、今現在、僕達の視界には全く別の光景が映っている。
長い期間、王立研究所に籠っていた優凛の成果が目に見える形で現れている。
「優凛、これは凄いよっ!」
「えっへん!」
「あたしもステファンに同意するわ。偉大なる成果ね……優凛、貴女は胸を張っていいわ!」
「あははは……アイネスの褒められちゃった。でもね、私はプレミリーシア王女にお願いされたモノをひたすら食べてアナライズしただけなんだよね」
「ですが、優凛、これは本当に素晴らしい……セイクリッドネストにも革命的な進化をもたらす、そう断言できますわ! ルキアもそう思うでしょ?」
「うんうん、マキア姉の言う通りだよ、凄い凄い! ボク、優凛姉を尊敬しちゃう!」
プレミリーシア第一王女はエルフェスタ王立最先端技術研究所の所長でもある。
そんな彼女が熱心に研究し、見事生み出したのが生命石……優凛は主にその手伝いをしていたようだ。
生命石というのは文字通りに生きている石だ。
それぞれが違った大きさや形に増殖やら分裂やらをし、成長するのだ。
そして、その遺伝子に刻まれた設計図通りに成長すると、完全に固まり、極々普通の石となる性質を持っている。
言うまでもなく、その設計図は人が自由に書き換える事が可能なようだ。
今、目の前に存在するのは石を積んで造られた城壁であり、綺麗に敷石が並べられた広い通路……。
そう表現する他ないような完璧な出来栄えだ。
正に北海道の五稜郭そのもの……。
そもそも日本にあるお城はこうして造られたのでは、と感じてしまう程にね。
あれ?
もしかして、本当にそうだったりしちゃう?
だってさ、当時の人達には絶対に運べなそうな巨石とかが積まれてたの……あったよね?
何はともあれ、カッコイイ喋りで大型ヴァケーションの最後を締めくくりたいよね。
何と言っても、僕は創造主なのだし……。
「くふふふ……優凛よ、我が惑星イアに於いて、貴様の功績は未来永劫語り継がれる事だろう!」
「はいはい……でもね、ステファン……女の子を”貴様”とか呼んじゃ駄目だからね?」
穏和な優凛がほっぺを膨らませている。
ちょっとカチンときちゃった感じ?
”貴様”よりも”君”の方がベターだったかもね。
「……お、憶えておこう」
「あははは……見てみて、マキア姉、ステファン様がタジタジだよ!」
「うふふ……そうですわね」
――黙れ、エルフ姉妹っ!
でもね、この程度でめげたりはしないよ。
やっぱり僕がカッコよく締めないとねっ!
「くふふふ……まあ、それはさて置き…………アイネス」
「何かしら?」
「そろそろ地球に帰らないか?」
「ええ、そういう予定よね。でも、どうしてあたしに聞くのかしら?」
「くふふふ……転移魔法を使えるのはアイネスとワイルドミーだけなのだが……もし仮に僕がこの場でワイルドミーを纏えば――」
「はいはい……言いたい事は分かったわ。あたしが転移魔法を発動してブカリキ山まで飛べばいいのよね? はじめからそう言えばいいじゃない!」
琥珀色の猫目がバッチリこちらを睨んでいる……。
今、ワイルドミ―を纏ったら確実にぶっ飛ばされちゃうだろうね。
「くふふふ……よ、よ、よろしく……ね?」
「はあ? 何で疑問形なのよ?」
――こ、怖いよ~、かーちゃんっ!
こういう時って何故か笑顔になっちゃうよね。
ちょっと引き攣った感じのやつね。
「あははは……ステファン様、ちょっと可愛いかも!」
「うふふ……そうですわね」
「あははは……ステファンったら超カッコ悪っ!」
――全然締まりませんでしたー!
~地球・セイクリッドネスト
氣分的には凄い長旅だったんだけれど……。
でも、地球では一時間半位しか経過していないんだよね。
だから、まだ午前中……仕事に出かける優凛を見送ったばかりさ。
そんなこんなで、僕専用の部屋の前までやって来た。
すると、入り口の扉には”創造主の間”って書かれたプレートがぶら下がっていた。
買ったらすっごく高そうな感じのヤツがね。
きっとドワーフが精魂込めて作ってくれたのだろうね。
マキア辺りが注文してくれたのかな?
彼女は支配人として頑張ってくれているからね。
日に日にセイクリッドネストが洗練されてゆくよ。
「くふふふ……良いタイミングで氣分を盛り上げてくれるじゃないか!」
実はね、扉の反対側ではスタンバっているはずなんだ。
僕の創造主ごっこに新たに加わってくれる物好きがね。
やっぱり最初って肝心だよね。
徐に扉を開ける……。
あ、キリッとした表情でね。
「お帰りなさいませ、御主人様」
洗練された仕草で軽くお辞儀をした新人ミニスカメイド……。
口調も声質も心地好い。
そんな彼女の肩や頭の上には小さな生命体が数匹集っていた。
アニギーニュアプパの森でゲットしていた妖精や特殊能力を持った動物のマテリアルだね。
この部屋で長い事過ごす事になるであろう彼女にはペットが必要かと思ってね。
「うむ……僕の留守中変わった事はなかったかな?」
「はい」
「むふふ……そうか」
「約二ヵ月にも及ぶ長旅……お疲れさまでした」
いやー、分かってるね!
アイネスだったら、きっと「はあ? たったの一時間半よ?」とか返して来る場面だよね。
さっきマキアから貰ったばかりの小箱を新人ミニスカメイドに手渡す。
多分その中には、なめこが一株入っていると思うんだ。
僕の大好物だと知った者共が馬鹿みたいに栽培しちゃったみたいでね。
まあ、嫌な氣分ではないけどね。
さすがに毎日なめこ汁はキツイよね。
家族も毎日なめこを持ち帰って来る僕に呆れ氣味だし……。
などと思いつつ、ふっかふかのソファーに腰を下ろした。
そして、足を組む。
「……失礼します」
流麗且つ上品に片膝を突いた新人ミニスカメイド……。
そのまま慣れた手つきでテーブルに置かれていた紅茶ポッドにお湯を注ぐ。
いいねいいね……崇められてる感があるね。
二分程が経過し、所用を済ませ、こちらに戻って来た新人ミニスカメイド……。
直ぐ目の前で片膝を突き、こちらに正面を向け、優美な器に紅茶を注ぐ。
絶妙な膝角度。
見えそうで見えないのが何とも憎いっ!
「ふむ……茶葉は何かな?」
「はい、ンロイセ……あ、失礼致しました」
紅茶は惑星イアにもあったからね。
しかも、地名とか銘柄は逆さ言葉だけれど、味は地球のものと同じらしいんだ。
紅茶通のマキアによればね。
まあ、それはさて置き……。
新人ミニスカメイドの初失態をにこやかに許す僕……。
ここはそういう場面だよね。
「むふふ……そう氣にするな。惑星イアから来たばかりなのだし……」
「はい、ありがとうございます…………茶葉の銘柄はセイロンティー、ヌワラエリヤです」
「ほーう……」
――ヌ、ヌワラ……何ですって?
クールな表情を保ちつつ、心の中でそんなツッコミを入れた。
創造主に知らない事があっては不味い……よね?
「……少し色が薄い……よね?」
「はい……ヌワラエリヤならではの水色にございます」
「ふむふむ……ヌワラホニャララならではのね……」
「くすっ……」
実はね、新人ミニスカメイドの正体はステラなんだ。
プレミリーシア王女付きのメイドをしていたあのステラだよ。
本人のたっての希望でね。
因みに、既にイグジスト化させてあるし、マテリアルとの融合も済んでいる。
それも本人の希望でね。
例え戦闘時であっても、僕の足手纏いにはなりたくないんだってさ。
因みの因みに、ステラの容姿は出会った頃の状態……つまり、十代前半だね。
それについては僕の希望。
だってさ、彼女の成長過程を見ることもなく、いきなり三百を超えてしまっていたからね。
あ、ちゃんと本人の同意は得ているよ。
でもね、エイリアスの創造時に意図して変えたのは容姿だけ。
中身……と言うか、魂に刻まれた彼女の記憶や思い出を変えるなんて事を、僕にはとてもできないからね。
「さてと……今日からよろしくね、ステラ」
「はい! こちらこそ末永くよろしくお願い致します、ステファン様」
「うん、勿論だよ!」
――君にも僕の創造主ごっこに一生付き合ってもらうよ、ミニスカメイド役でねっ!
などと、心の中で密かに隷属化の呪文を唱えていると、ノックもせずにアイネスが部屋の中に飛び込んで来た。
かなり急ぎの用事っぽいけど……。
呼び鈴鳴らして、ステラに仕事をさせて欲しかったよね。
「――ステファン、大変よ! ハゲ共が一匹残らず綺麗サッパリ消えていたわ!」
「……え?」
新種のカツラでも発明された……?
それとも毛生え薬かな?
だとしたら、確かにビックニュースかもしれないね。
一部の人達にしてみれば……。
でも、僕はフサフサの中学生なんだよね。
「暢氣に『……え?』とか言っている場合じゃないわ! あのね、ステファン、可能な限り調べてみたのだけれど――」
アイネスが出掛けたのは優凛とほぼ同時だったはずだ。
まだ完全には解明されていない総合レプレプ研究所の件を調査する為にね。
それと、復活した芸能事務所キョニュ~ンと数年前まで政界のドンと呼ばれていたらしい元代議士との関係などなど調べるべき事が沢山あったみたいだし……。
だけれど、アイネスは十分と経たずにセイクリッドネストに戻って来た。
その理由は、調べるべき事が消滅していたから、だそうだ。
何でも、彼女が怪しいと感じリストアップしていた人物や企業の多くがこの世界から消滅していたらしいんだ。
と言うより、始めからこの世界に存在していなかった事になっていたみたいだね。
新種の毛生え薬がどうとか言っている場合じゃなさそうだよ。
「ほーう……つまりは、アイネスがリストアップしていたレプテリアンと思われる人物や奴等が関連するであろう組織が地球上から一掃されていた、と……そう言いたいのだな?」
「ええ、とても信じ難いのだけれど……でも、そうとしか考えられないわ」
「くふふふ……アイネスですら想定し得なかった展開……か」
すると、今度は半スライム状態の優凛が部屋の中に飛び込んで来た。
直ぐに完全な人型となり、青から元々の色艶へと……。
かなり慌てた様子だ。
二人のイグジストがほぼ同時に同様のアクションとなると……。
これは同じネタを掴んで戻って来たっぽいよね。
「――た、大変なの、ステファン!」
「くふふふ……たった今、優凛の脳内情報を全てダウンロードした。だから、これから君が口にする事は既に――」
「――はあ?」
あ、この感じは冗談とかが通じない時の反応だ。
普通に会話しておこっと。
「お、おほんっ……えーと、何があったのかな?」
「あのね、キョニュ~ンがビニュ~ンで巨乳ブームが夢物語だったの!」
「…………ん?」
分かったような分からなかったような……?
でも、何時にもない必死な表情からは、優凛にとっての一大事であろう事はひしひしと伝わって来た。
きっと多分びっしりと埋まっていたスケジュールが綺麗サッパリ消えちゃったのかもね。
少なくとも本日のグラビア撮影がぶっ飛んでしまったであろう事は間違いないだろうし……。
そうでもなければセイクリッドネストには戻って来なかったよね。
兎にも角にも、僕達が惑星イアに行っていた間に、地球で何かが起きていたのは間違いなさそうだね。




