第16話 〜少女の行方〜
事務所にて書類の整理をしていた勇二は隊長の巧次からメールを受け取る。
[勇二、お疲れさん。先程会議で今回の事態における犠牲者の名簿の資料が配布された。事務所のパソコンにファイルを送っておいた。それを見て例の件調べておいてくれ]との事だった。勇二は先程まで取り掛かっていた作業に1度きりをつけ、事務所のパソコンを開く。巧次が送ったメールに添付されているファイルを開く。「えーと、たしか涼香ちゃんの友達は、、、潮彩花、山本麻衣香、工藤舞香、の3人だったな」メモを見ながらパソコンで名簿から3名の名前を検索する。
山本麻衣香と検索タグに打ち込む。[テキストが見つかりませ]と言うメッセージが画面に現れる。ふぅと息がこぼれる。まだすべての情報が集まっているわけではないが幸いこの子が被害を受けたと言う情報は内容だ。果報がないのは良い便りとは良く言ったものだ。続いて工藤舞香と打ち込む[テキストが見つかりません]この子の情報もないようだ。
次はこの子か。潮彩花メモ帳には1番最初に書いてある。涼香の家に行ったときも涼香の母親の口から真っ先に出てきた子だ。なんとなく嫌な予感がし調べるのを後回しにしていた。潮彩花と検索タグに打ち込む[潮彩花・・・15歳 女性 行方不明 避難所として開設されていた唐津市立名古屋小学校へ母親、弟と共に避難。避難所への異形襲撃時に家族2名とともに行方不明。なお父親の潮元気については避難所より500メートル離れた地点にて遺体を発見。]
はあ、とため息をつき勇二は頭を押さえる。異形に襲われ行方不明。おそらくもう彼女の命はもうこの世に存在はしないだろう。生存を確認して涼香を立ち直らせるという目論見は崩れ去った。そしてこの訃報を彼女に改めて伝えなくてはならないだろう。今でさえあそこまで憔悴している彼女がこの事実を受け止めることは出来るのだろうか。
どうすればいいか分からない。騎士団で働いてるとは言え勇二は所詮17歳に過ぎない。世間での同い年の人のほとんどは高校生だろう。そんな少年が扱うにはあまりにも人の命は重すぎる。だがずっと勇二の中で情報を留めてもしょうがない。遅かれ早かれ涼香の耳に届くのだ。勇二は忙しそうにしている事務所長の隼人に声をかける。「涼香ちゃんの友人の件、分かりました」話しかけられた隼人はすっかりやつれている。ここ数日ほとんど寝ずに後処理に追われていたのだ。くまだらけの顔で「おお、どうだった」と勇二に聞く。「2人のクラスメイトについては犠牲者の名簿には乗ってませんでした。ただ1名例の小学校で行方が分からなくなっているようでした」「そうか...その行方不明の子が涼香ちゃんの親友で無ければいいのだが。いや誰であっても良くないのだろうが。すまないが勇二の方でご両親に伝えておいてくれ。本当は俺が対応したほうがいいのだがどうしてもな」と言い目の前の書類の山を顎で示す。「了解です」そうながらに勇二は涼香の両親に電話をかけようとスマホを取り出す。(あ、しまった)涼香の両親の連絡先を交換するのを忘れていた。「隼人さん涼香ちゃんのご両親の電話番号知ってますか?」隼人に尋ねる。「あーたしか涼香ちゃんがこの事務所に所属する時の書類に電話番号とか書き手あったと思う。ちょっと待ってろ」そう言い鍵のかかった棚からファイルを取り出す。「このファイルに書いてあるから探してくれ」と事務所のメンバーの名簿を渡される。「えーと、あった」斎藤涼香の欄に書いてある電話番号に連絡をする。
プルルル、プルルルと数回の呼び出し音の後勇二にとって予期しない相手が電話に出る[もしもし斎藤です]涼香本人であった。[あっ、えともしもし涼香ちゃんかい?お父さんかお母さんはいるかな?]焦りを隠し涼香に尋ねる。[今2人とも出掛けてます][あ、そうか。もし帰ってきたら教えてほしいんだけど]そう言うと[彩花のことですよね]と涼香が尋ねてくる。[この前勇二さんが訪ねてきたときお母さんたちと話してたとき聞いちゃいました。仰る通り私がショックを受けたのは親友の彩花が死んじゃったかもしれないと思ったからです。でも今はもう大丈夫です。どんな現実も受け入れます。たから教えてください。彩花、潮彩花がどうなったのか!]涼香は必死に勇二に尋ねる。勇二は迷った。ここで自分が真実を言っていいのか。涼香の両親伝いに話した方がいいのでは、あるいはすぐ近くにいる隼人から話してもらう方がいいのではないか。そんな考えが思い浮かぶ。だがその一方で今この場で涼香に向かい合い自分から伝えるべぎではないかとも思う。そんな考えを電話口の涼香の声から感じる。何かを覚悟を決めたような、そしてその覚悟から逃げてはいけないようなそんな気さえしてくる。「君の親友は潮彩花さんだね」「はい」「その子は避難所となっていた名古屋小学校を最後に行方が分からなくなっている」勇二は告げる「そう、ですか」涼香は答える「やっぱり彩花は...勇二さん教えてくださってありがとうございます。それと色々とご迷惑おかけしました」涼香は取り乱す様子もなく気丈に振る舞っていた。勇二はかける言葉が見つからない。変な励ましをしたところでなんの意味もない。
「両親にも心配かけちゃった。帰ってきたら相談してある程度落ち着いたらそちらのお手伝いに行きますね」「いや、無理しなくても」という勇二の言葉を遮り「いえ、むしろ何かをしてたいんです。1人でいると嫌なことばかり考えてしまうので...心配してくださってありがとうございます。でも私は大丈夫です!」と明るく振る舞う。「そっか」「なので隼人さんにもよろしくお伝えください。なるべく早くそちらに向かうと」「分かった。けどくれぐれも無理はしないで」「はい、大丈夫です。それではまた」そう言うと涼香は電話を切った。
親友の死で傷付いた少女に気の効いたことも何も言えず、むしろ彼女に気を使わせてしまった。(こういう時どうすればいいんだろうな)無力感を感じながらまた書類の整理に取り掛かる。まるで勇二の混乱した頭を表すかのように机の上はファイルなどで乱れていた。




