第14話 〜終わらない後処理〜
勇二は原付で涼香の家へと向かっていた。事務所は今回の件の後処理に追われており勇二も少し前まではその手伝いをしていた。後処理の一環で所長が涼香へ安否確認を兼ね事態が終息したこと、今回の被害状況を伝えていた。その際に突然何かが落ちる音と共に涼香と会話ができなくなったらしい。所長の隼人は一瞬異形の残党に涼香が襲われたのかと思い焦った。だがすぐに涼香の親が電話を取り、涼香が過呼吸を起こしているということを教えてくれた。隼人が避難所の被害を話した際に会話が途切れたのでそこにに親しい人がいたのかも知れない。隼人や隊長の巧次らは手が離せず、勇二が涼香の様子を見に行くこととなった。涼香の家に着いた勇二は乗っていた原付を家の近くに止めインターホンを鳴らす。ガチャリと音がし涼香の父親らしき男性が出てくる。「えっと、対魔師団の人かな?」と少し訝しげな顔で聞いてくる。おそらく勇二が若すぎるためだろう。勇二は今年の秋に17になる。涼香とも2つしか変わらない。「はい、対魔師団の黒澤勇二と申します。風秋に言われ涼香さんの様子を見に来ました。」「そうか。わざわざすまないね」「いえ、涼香さんにはうちの事務所もお世話になっているので。容態のほうは?」と勇二は尋ねる。「さっきよりは落ち着いたようだ。過呼吸も収まった。だがいまだにずっと泣いているよ」「そうですか」「君らは何か理由を知っているかい?いま涼香は何を聞いてもずっと泣いているだけなんだ。私たちもどうしていいか・・・」涼香の父親は尋ねる。「事務所長の秋風からは避難所小学校が異形の襲撃を受けた話を際にこうなったと聞いています。もしかしたら涼香さんと親しい人がいたのかもしれません」「その小学校はなんというのかな」「市立の名古屋小と聞いています」「そうか、そのあたりには涼香の友人も多いらしい。詳しくは母親のほうも含めて聞きたい。もし時間があるようならあがって詳しく教えてくれないか」と勇二に頼む。「はい。町の状況も含め説明するよう秋風には言われております」と返した勇二にそうか分かった、と言い涼香の父親は勇二を家に入れる。
勇二はリビングに案内されテーブルに座るよう促された。涼香の父親が奥の部屋から母親を連れてくる。2人は勇二にの向いに座った。「まずは娘さんにご負担をかけ、お二人にもご心配をお掛けしたことを謝罪いたします」と勇二は2人に謝る。「いえ、こればかりは仕方のないことです。それに怪物が出たときもすぐに連絡してくださって感謝しています」と母親は答える。「それで娘が過呼吸を起こしてしまったのは名古屋小が怪物に襲われてしまったのが原因なんだね」と父親が勇二に確かめる。勇二は「はい」と頷く。涼香の母親はやっぱり、と呟く。「あそこには彩花のお友達が結構住んでるの。中でもかなり仲のいい子がいてたまにお泊りに行ったりもしてたのよ」と続ける。「もしかしたらその子が犠牲になったと思ってるのかもしれない。黒澤君その避難所ではどのくらいの人が犠牲になったのかい?」と父親が尋ねる。「詳しい数は分かりませんが。その場にいた騎士は半数近くの10人が一般人数十人規模で死傷者が出たようです。」「そうか。助かった人はいるのかい?」「ええ、その場から逃げのびて他の避難所へ行った人や近くにいた騎士に保護された人も大勢います」勇二が答える。「もしかしたらその涼香の友達も」「ええ、可能性は十分にあります。」父親が「母さんその子の名前は分かるかい?」と母親に尋ねる。「たしかあやちゃんって子が一番会話に出てたわ。一度うちに遊びに来たこともあるし。あとはまいかちゃんって子かしら」勇二が「氏名はわかりますか?できれば漢字も」と尋ねる。「ちょっと分からないわ。」と母親は答える。父親が「連絡網とか見ればわかるんじゃないか?」と言う。「私達の時代と違ったが今は連絡網とかないのよ」と答える。「下手に期待させるのも良くないし、本人聞くのも」と母親は言う。「そうですね」と勇二も同意する。「ただ無事である事が確認できれば涼香さんも立ち直れるとは思うのですが」と勇二は言う。「あ、そういえば」と急に何か思い付いた様子で立ち上がる。「4月の遠足のしおりがあった気がする。そこに班分けとかもあったから名前ならそれで分かるかも」といいリビングの引き出しからファイルを取り出してくる「捨ててなければここに入ってるんだけど」ファイリングされている書類をめくり目当ての物を探す。「あった!」[城加害実習のしおり]と書かれた一冊の小さな冊子を出す。その冊子の班分けのページを見る。「あやって子とまいかって子だよな」父親が聞く。「ええ」机に開かれた名簿を3人で探す。「あ、この子かも」母親が1人目を見つける[潮彩花]涼香と同じクラスだ。もう1人[まいか]と言う少女を探す。「確かこの子は今年からクラスが変わったって言ってたわ」次のページを見る。ない。次のページを見る。いた。しかも2人[山本麻衣香]そして[工藤舞香]だ。「2人いるわ」「そうか同じ名前の子もいるのか。念のためほかのクラスも確認しよう」父親がそう言うと3人は再び冊子に目を落とす。すべてのクラスを確認したが幸い[まいか]という少女は二人だけのようだ。だがこのうちどちらの少女が涼香と親友なのかわからない。だがこれ以上絞り込む手段は無い。「とりあえず事務所に戻ってこの3人の安否を確認したいと思います」「ありがとう。こちらでも涼香にそれとなく探ってみようと思う。忙しい中娘のことで手を煩わしてしまい申し訳ない」涼香の父親は勇二に頭を下げる。「いえ、我々も涼香さんをまきこんでしまっているので。それでは俺はこれで失礼します」そう言うと涼香の両親に見送られ家を後にする。原付に乗り込む前に秋風に涼香の容態と涼香の友人と思われる3人の安否確認を頼めるかのメールを送る。メールを送信すると勇二は原付にまたがり事務所へと向かう。夜は明けつつあるが勇二が眠りにつくことができるのはまだまだ先のようだ。




