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抗魔大戦記綴  作者: 語部きゅうり
第1章 〜鎮西事態編〜
15/21

閑話 〜親友との出合い〜

 

 

2016年9月1日



 夏休みが終わり学生達が最も憂鬱になる2学期の始まりの日が訪れる。そんな中涼香は初めて着る制服に身を包み、初めて訪れる教室の前で立っていた。正確に言えば夏休み中、親と新たな担任となる先生と一度だけ訪れたのだが、この学校の生徒として教室のドアをくぐるのは初めてだ。


 転校初日、涼香は緊張と不安に包まれながら自分に声が掛かるるのを待つ。「それじゃ入ってくれ〜」新たに涼香の担任となるの男が中から自分を呼ぶ。


 ガラガラと音を立てドアを空け教室へと入っていく。中の生徒たちの視線が自分に集まるのを感じる。「転校生の斎藤涼香さんだ。みんな優しく接してやってくれ」担任が生徒たちに言う。んじゃ自己紹介してくれ、と涼香に伝える。それを聞き涼香は「はじめまして、斎藤涼香です。東京の方に居ましたが父の仕事の都合でこちらに引っ越してきました。これからよろしくお願いします。」声が震えていないか、噛んだりしないか、変なことを言っていないかそんな不安にかられながら当たり障りの無い自己紹介をする。


 んじゃ質問た〜いむ。と担任がいい、生徒から涼香へと質問が飛ぶ。好きな食べ物は、誕生日は、彼氏いるの、ちょっと男子そういうこと聞かない!などの言葉が飛び交う。一通り質問が終わると涼香は担任から後ろの空いている机に座るよう促された。


 席に着くと隣の席のやや茶髪気味でポニーテールの少女が身を乗り出して涼香に話しかける「はじめまして!あたし潮彩花、彩花って呼ぶことを許そう。」涼香「う、うん」と返事をする。「ちょっと、硬いよー!お隣さん同士仲良くやろ!」ツリ目気味のややギャルっぽい少女が優しそうに笑いかける。「こちらこそ、よろしく」気さくな少女に緊張を解きながら涼香はそう返した。


 その日の授業をすべて終え、涼香は帰宅するため教科書をカバンへしまう。隣から「ねえ!涼香今日暇?」と彩花が尋ねる。「あ、今日はちょっと...まだ引っ越しの片付けが終わってなくて、お母さんたちを手伝わないといけないんの」涼香は答える。「そかそか、まだ引っ越したばかりだし忙しいよね~」と彩花が言う。「ごめんなさい」涼香は謝る。「いやいや全然!てか敬語使わないでよ~。なんかこっちが

警護使えないバカみたいじゃん」と彩花は笑いながら返す。すると彩花の後方から「え、逆に違うの!?

」と1人の女子生徒が驚いた様子で彩花に尋ねる。「ま~い~か~。こらー!」と彩花は話しかけてきた女子生徒に飛び掛かる。「親友に対して失礼なことをいう悪い口はこの口かー!」と言いながらその女子生徒の頬を片手でつかみタコのような口に変形させる。女子生徒は「ひょっと~ひゃめへよ」顔を振り彩花の手から逃れる。「人を馬鹿にした罰だ」と彩花がふて腐りながら吐き捨てる。「ごめんって、冗談だよ~

半分は」と謝りながらまた悪口を付け足す。いわれた瞬間「おい」と彩花はにらみつける。「落ち着きなさい。転校生ひいちゃってるよ」と彩花をたしなめる。「誰のせいだし」そう言いながら「ごめんね涼香。このバカのせいで」と涼香へ謝る。「2人仲良いんだね」と涼香が尋ねる。「まあね〜。小学校も一緒だし腐れ縁ってやつ?あっ、私舞香!工藤舞香!よろ!」とその女子生徒は名乗る。「斎藤涼香です。こちらこそよろしくお願いします。」と涼香は返す。「で、どうだった?」と舞香は彩花に尋ねる。「今日は駄目みたい」彩花はと返す。舞香は「そっか~残念。いや、今日さ彩花と近くのクレープ屋行くんだけど涼香も誘ってみようよってなったんだ」と言う。彩花が「ついでに学校案内もしようかなって」と続く。「えー、めっちゃ行きたかった」と涼香は返す。「まあまだ引っ越して来たばかりだもんね〜。そうだ!週末とか暇?」「うん。今のところは予定はないかな」と涼香が返す。「舞香は?」「私も暇だよ!なんで?」と舞香は聞き返す。「3人でタピろうよ」「ありよりのあり!」「でしょ!」彩花と舞香は2人で盛り上がる。「涼香も行くっしょ?」と舞香が尋ねる。「タピるって?」と涼香の問いに「タピオカだよタピオカ!」と彩花が返す。「あっ、なるほど」涼香は納得する。最近女子高生をはじめ、若い人たちにタピオカブームが到来していた。涼香が住んでいた東京にはタピオカを売る店があちこちにできていた。だが涼香はまだタピオカなるものを飲んだことは無かった。興味はあったが、色々と事情が重なり行く機会に恵まれなかった。

「どう?涼香も一緒に行かない?」と彩花に聞かれ「行ってみたいな」と答える。「えーいいねいこいこ」舞香がはしゃぐ。「そしたらやっぱりイオン?」彩花が舞香に聞く。「そうだね。あそこならタピオカ以外にも色々あるし。ついでに町も案内したげるよ。」「ありがとう」「それじゃまた詳しくは明日話そうか。」彩花がそう言うと3人は話を切り上げ帰宅する。


 教室から3人で他愛もない話をしながら正面玄関まで到着する。彩花たちは帰りが徒歩だが涼香は自転車で通学しているためここで2人とは別れる。「じゃっ!また明日!」こちら彩花が振り返りながら手をふる。「うん。またね」涼香も手を振り返す。

 2人と別れ涼香は駐輪場へと向かう。(良かったな。隣の人が良い人で)そんなことを考えながら自分の自転車を見つけそれを押しながら校門へ向かう。校門には自分と同じように帰宅している生徒が多くいた。その中に校門を通過すると「あっ来た来た!」といいながら彩花達が駆け寄ってきた。「あれ、どうしたの?先に帰ってたんじゃ」と涼香は2人に尋ねる。「いや〜連絡先聞くの忘れてたから待ってたんだ」彩花が答える。「あ、そっか」涼香は納得する。「ラインやってる?」スマホを取り出しながら舞香が尋ねる。「うん、やってるよ」と答えながら涼香もスマホを取り出す。「じゃあ涼香QRコードだして、うちらが読み取るから」と彩花に言われ涼香は自分のスマホの画面ににQRコードを映し出す。彩花らが涼香のQRコードを読み取ると「オッケ出来た!友達登録したよ」と涼香に伝える。それを聞き涼香は自分のスマホを確認する知り合いかもに‘ayaka’‘MAI’とそれぞれの名前が追加されていた。それを確認すると2人を友達に追加する。「2人とも追加したよ」「ありがと〜」と言う彩花に対し「いや、むしろわざわざ待ってくれてこっちこそありがとう」と返す。「それじゃ今度こそまた明日ねー」「週末遊び行けるかちゃんとお母さんに聞いといてね」彩花らは涼香にそう言うと2人で歩いて行く。涼香は自転車にまたがると2人とは逆方向に向かってく。

 

 「ただいまー」家に着いた玄関に入るなり涼香は家に居るはず母親に声をかける。おかえりー、二階から母親の返事が帰ってきた。おそらく洗濯物でも干しているのだろう。涼香は手を洗い、リビングへと向かう。コップにオレンジジュースを注いでリビングの椅子に座り一息つく。「ふう、疲れたな」と呟く。転校初日、慣れない町、慣れない学校での生活そして以前の学校での嫌な思い出。ぴんとは張り詰めていた心の糸が緩む。幸い隣の席のクラスメイトが社交的なおかげで転校初日から孤立するという事態は免れた。それにクラス全体の雰囲気は暖かく皆が仲良い様子であった。今日1日の事を振り返っているとトントンと足音を母親が2階から降りてきた。「学校どうだった?」涼香に尋ねる。「悪くはないかな。友達もできたし」と返す。「そう、なら良かった」そう言う母の顔はどことなく憂いを帯びている。無理もない前の学校であのようなことがあったのだ。涼香本人よりも涼香のことを心配しているのだろう。「あ、お母さん。今週末なんだけどさその友達に遊びに行かないか誘われてるんだけど。行ってもいいかな?」と母に伺う。母はふっと笑い表情を崩すと「いいわよ、行ってらっしゃい」と承諾する。「土曜日と日曜日に行くの?」「まだ決まってない」「そう、決まったら早めに教えて頂戴。あと夜おそくならないようにしてね。ここは一応変な化け物が出てきた場所に近いんだから」

 10年ほど前ここ唐津市では異形と呼ばれる化け物が現れた。それ以降も何度か異形は姿を現していた。このような危険な地域に越してきたのには理由がある。涼香の「リシーバー」としての力である。涼香は4歳ごろに特殊な力に目覚めた。はじめはコントロールできず家のものを壊したり。あるいは友達との喧嘩で力を使ってしまうことがあった。幸い誰かを傷つけるという事態にはならなかった。だが両親はいつか本当に誰かを傷つけてしまうという事態を恐れ、当時特異者保護協会から対魔師団へと変わったばかりのNGOに助けを求めた。団体名の改名や当時の唐津市で活動した対魔師団へわが子を預けるのは恐ろしかったが、藁にも縋るおもいだった。そんな両親の考えは杞憂であり対魔師団の東京支部は優しく力の危険性やコントロールの仕方などを涼香に教えてくれた。そのおかげで涼香は小学生時代平穏に過ごすことができた。

 しかしそんな生活が崩れ去ったのは中学生に入って間もない頃であった。当時のクラスメイトに涼香と同じ幼稚園出身の子がいた。入学当初は同じ幼稚園という共通点もあり仲が良く、涼香が「リシーバー」であることも受け入れてくれた。だがある日の喧嘩をきっかけにその関係性が崩れさってしまった。喧嘩の原因は覚えていない。たしか些細なことだった気がする。その喧嘩の日以降彼女は涼香を敵視するようになった。そしてそれはクラスメイトへと波及していった。彼女が涼香が幼稚園時代「リシーバー」としての力で様々なものを壊してしまった事実を言いふらし、涼香は危険な存在だと主張したのだ。それ以降彼女を中心としてクラスメイトからのいじめがはじまったのであった。その様な事情から涼香たち一家は「リシーバー」が多くまた「リシーバー」への理解があるこの街へと越してきたのであった。

 だが一度ついたトラウマは消えない。「リシーバー」に理解がある町とはいえ必ずしも受け入れてもらえるとは限らない。もし涼香が「リシーバー」であることがわかったらもしかしたら彩花たちから拒絶されるかもしれない。そんな不安が胸をかき乱す。はあ、とため息をつきながら涼香は窓のほうへ目を向ける。


 涼香の複雑な心中とは裏腹に、真っ赤できれいな西日が窓から差し込んでいた。

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