第13話 〜凶報〜
今回はだいぶ短めです。
朝4時、冬の朝は日が登るのも遅く、まだまだ外は暗闇に包まれている。いつでも避難できるよう、涼香はリビングで家族とともにいた。両親は机に突っ伏して仮眠を取っている。涼香は不安と心配で一睡も出来ずにいた。彩花とは先程の連絡が最後で、それ以降連絡を取れていなかった。何度か電話をかけたり、メッセージを送ったが既読はつかない。電話を切る直前充電がなくなると言っていたため今は電話を使えないのであろう。
心配なのは彩花だけではない。涼香が手伝いをしていた事務所の人達も心配だ。異形が発生した当初、事務所長から避難準備をして待機しているようにといった旨のメールが来て以降音沙汰がない。自分の知り合いが危険な場所にいる。なのに自分は何も出来ない無力感や焦りにさいなまれる。はあ、とため息が漏れる。だが心配する人たちと涼香を繋げる目の前の小さなデバイスは何も動きを示さない。
涼香は椅子から立ち上がりキッチンへと向う、気分を落ち着かせるため。温かい飲み物を作る。冷蔵庫から牛乳を取り出し、鍋に注ぐ。牛乳の入った鍋をガスコンロに置き、砂糖を少し入れコンロに火をつける。暫く鍋の中身をぼーっと見つめながら待つ。(彩花寒いだろうな。きっとスタバのホットチャイラテが飲みたい〜なんて言ってるかも知れない)そんな想像をしていると涼香の電話が鳴る。電話の画面を見ると‘秋風 隼人’の文字が映し出されている。電話に出ると。『もしもし涼香ちゃんか?』話しかける隼人の声はなんとなく暗い気がする。『はい。皆さん大丈夫でしたか?』と涼香は尋ねる。『いや、落ち着いて聞いて欲しい。ひとまず事態は収束した。』と言う言葉に涼香は少し安心した。だが涼香の問いに隼人は先にいや、という言葉を発している。心臓の音がトクトクと早まる。『遠藤と良人が負傷した。特に遠藤の方が重症だ』その言葉を聞き涼香は悲しみに包まれる。良人は昨日の昼このあたり一帯を案内しその際色々な話をした。冗談を言うのが好きで、良く勇二に突っ込まれていた。遠藤とはもう少し関係性が深く、事務所の手伝いをしている時に色々と会話をしたり、休みの日には皆でバーベキューなんかもしたことがある。身近な人の凶報に涼香の気分は沈む。『だが幸い命には別状はない。既に2人とも病院に運ばれている』それを聞き、ほんの少しだけ心が軽くなった気がする。『たくさん人が傷付いちゃったんですね』そう涼香は尋ねる。『ああ、俺のとこはまだマシな方だ。鎮西の北の方はもっと状況が悪い。避難所の学校が襲われてそこを守ってる騎士隊も民間人もはかなりの損害を出したらしい。しかもーーーー』それ以降の言葉は涼香には耳に入らなかった。(小学校が・・・彩花!!)隼人の言葉を遮り涼香は尋ねる『その学校ってどこですか!?』急に強い口調で聞かれた隼人は驚きつつも答える。どうか彩花のいるとこじゃありませんように、そう祈りながら隼人の言葉を聞く『市立の名古屋小だ』その言葉を耳にし涼香は膝から崩れ落ちる。手にしていたスマホが床に転がる。。その小学校こそが彩花が避難した小学校である。(うそっ!うそだ、そんなのうそ!彩花が死んじゃうわけないきっと逃げられたはず)涼香の頭には親友が死んでしまったという想像ときっと逃げ延びたという希望がグチャグチャになりかけまわる。
後ろでジュッと言う音がする。ガスコンロで火にかけられた牛乳が吹きこぼれていた。




