第45話:不穏な気配を察知したイヴァンが警告に訪れる。アルヴィスの冷徹な「氷の顔」が千尋の前で揺らぐ。
常闇の森の夕暮れは、まるで燃え盛る硝子を溶かしたかのように、深い茜色と紫紺のグラデーションに染まりつつあった。
秋風は日ごとに冷涼さを増し、森の木々が擦れ合うサワサワという音には、遠くない冬の足音が混ざり始めている。
だが、南向きに張り出した山小屋の白木の縁側には、そんな寒さを寄せ付けない、穏やかで柔らかな熱気が満ちていた。
「ふあぁぁ……今日もよく働いたわねぇ」
千尋は手作りのフェルトシューズに包まれた足を縁側からぶらりと投げ出し、両手を天高く突き上げて大きな伸びをした。
素足の裏からじんわりと伝わってくるのは、香月木の床板が蓄えた、昼間の陽だまりの残り香。
居間の中央にある囲炉裏からは、パチパチと炭が爆ぜる乾いた小気味よい音が響き、吊るされた鉄瓶の注ぎ口から、シュンシュンと細く白い湯気が立ち上っている。
千尋の隣には、縁側の白木にペタンとお腹をつけて丸くなっている白銀の毛玉――ルゥ。
そして縁側の端には、三つ編みのおさげ髪を揺らしながら、家庭菜園で収穫したばかりのハーブの葉を丁寧に選別しているノエルの姿があった。
「千尋お姉様、このスペアミントの葉は、明日のお茶用に日陰干しにしておけばよろしいですか?」
「ええ、お願いね。ノエルちゃん、葉っぱの軸のところを少し残して束ねると、風通しが良くなってカビないのよ」
「はい! 風通しですね。……ふふ、お姉様に教えていただく家事は、どれも本当に理にかなっていて楽しいですわ」
ノエルの白い頬には、透き通るような桜色の赤みが差し、その碧眼は星を散りばめたようにキラキラと輝いている。
二週間前、鯨骨コルセットに肋骨を砕かれそうになりながら、息も絶え絶えに運び込まれてきたあの「陶器の人形」の面影は、もはやどこにもなかった。生成りの素朴なリネンワンピースを纏い、素足で大地の温もりを踏みしめる彼女は、どこからどう見ても、生命力に満ち溢れた愛らしい十七歳の少女そのものだった。
「千尋、夕暮れの薪割りはすべて終わったぞ。……乾燥棚への積み込みも完了した」
庭の敷石を上がってきたアルヴィスが、泥落としのスノコの上で手際よくブーツを脱ぎ、麻のスリッパへと履き替えた。
黒いリネンシャツの袖を肘まで捲り上げ、鍛え抜かれた前腕には薄く汗が光っている。
以前のような、近寄る者すべてを凍りつかせる「氷の死神」の険呑なオーラなど欠片もない。サファイアの双眸は穏やかに細められ、千尋の姿を捉えた瞬間、その端正な唇の端が、隠しきれない安らぎを帯びてわずかに緩んでいた。
「お疲れ様、アルヴィスさん。いつもありがとう。……はい、お茶入ったわよ」
千尋が竹筒の湯呑みを差し出すと、アルヴィスは嬉しそうにそれを受け取り、千尋のすぐ隣――ルゥを挟んだ縁側の白木へと、腰を下ろした。
竹筒から立ち上るのは、秋に収穫した野生の大麦を鉄鍋でじっくり深煎りし、干したカモミールとブレンドした特製の温かい麦茶。
一口含むと、麦の香ばしい大地の薫香と、青リンゴに似た柔らかな甘みが、疲れた喉を通り抜けて五臓六腑へとじんわり染み渡っていく。
「……美味いな。この茶を飲むと、体内の余分な熱がすっと引き、芯から呼吸が深くなる」
「でしょ? 夕方の麦茶は、一日の疲れをリセットする特効薬なんだから」
頭上では、秋の夕風に揺られたガラス鉱石の風鈴が、チリン……と澄んだ高い音を一粒零した。
納屋の方からは、ギルバートが「……なるほど、この波長パターンの収束性は……」とブツブツ呟きながら羊皮紙にペンを走らせる音が小さく聞こえてくる。
誰にも邪魔されない、完璧な安らぎの夕暮れ。
千尋が前世の過酷な社畜生活の果てに夢見て、この異世界で自らの手で整え、守り抜いてきた「至高のスローライフ」の時間が、ここには確かに流れていた。
――だが。
その穏やかな静寂を切り裂くように、森の境界の小道から、異常な物音が響いてきたのは、まさにその時だった。
ガサガサッ、バキバキッ!
「……っ!?」
ルゥが弾かれたように跳ね起き、銀白色の毛を逆立てて森の奥を睨みつけた。
風を孕んでやってきたのは、馬を限界まで走らせて乗り捨てたような、乱れた足音。
小枝を折り、落ち葉を蹴散らしながら、何者かがなりふり構わず山小屋へと向かって猛ダッシュしてくる気配。
「……敵か?」
アルヴィスの目つきが、一瞬で鋭利な刃物のように引き締まり、腰の剣へと手が伸びかけた。
しかし――木々の間から転がり出るようにして前庭の敷石へと飛び込んできたその人物の姿を見た瞬間、千尋は目を丸くした。
「はぁっ……はぁっ……げほっ、ケホッ……! ち、千尋さん……っ! アルヴィス閣下ぁぁっ……!!」
「えっ……イヴァンさん!?」
現れたのは、旅の行商人にして当代屈指の敏腕情報屋――イヴァン・クレマンだった。
だが、その姿は、千尋がよく知るあの飄々とした美青年の面影を完全に失っていた。
いつも小綺麗に整えられていた仕立ての良い旅装束は泥と木の枝に引き裂かれ、亜麻色の髪は汗で額にべったりと張り付いている。肩に提げていたはずの商人の革鞄すらどこかに放り出してきたのか、手ぶらのまま、胸元を押さえて膝に手をつき、肺が破れそうなほどの激しい呼吸を繰り返していた。
「だ、大丈夫!? イヴァンさん、そんなに息を切らせて……!」
千尋が慌てて立ち上がり、縁側から駆け下りようとする。
しかし、イヴァンは泥まみれの手を大きく振ってそれを制し、必死の形相で顔を上げた。
その琥珀色の瞳は、かつて見せたことのないほどの焦燥と、本物の恐怖に血走っていた。
「ま、まずいことになったよ……! 千尋さん、閣下……っ、今すぐ、逃げる準備を……いや、防備を固めてくれ……!!」
「イヴァン。息を整えろ」
アルヴィスが立ち上がり、縁側から敷石へと音もなく下り立った。その長身から放たれる威圧感に、イヴァンは唾を飲み込みながら、喉を詰まらせて告げた。
「王都の……最大派閥、『大公派』が動いたんだ……!!」
「……何だと?」
アルヴィスの眉が、ピクリと跳ねた。
「情報が……漏れたんだよ。閣下の魔力過密障害が完全に鎮静化したこと……そして、何ヶ月も衰弱して死にかけていたルミエール公国のノエル公女が、この山小屋で奇跡的な快復を遂げたという事実が、王都の監視網に筒抜けになったんだ!」
「っ……!」
縁側の上で、ノエルが息を呑み、怯えたように自らの肩を抱きしめた。
王都の大公派。
彼女を社交界の檻に閉じ込め、陰湿な毒と嘲笑で心身を擦り減らし、死の淵へと追いやった元凶たる、あの醜悪な権力者たちの名。
「あいつら、全員重度の不眠症と魔力過密で狂いかけてるんだ! 長年の権力闘争と贅沢病で脳を焼かれて、死の恐怖に怯えきってる! そんな連中の耳に、この森の奥深くに『どんな不治の精神疲労も一瞬で治す謎の聖女がいる』なんて噂が入ってみなよ……!」
イヴァンは唇を噛み締め、悔しげに拳を握りしめた。
「群がるに決まってる……! 王都の権力者どもは、千尋さんを『王都専属の治癒聖女』として強制徴募するつもりだ! 表向きは王室の名を騙った勅令紛いの招聘状……だが実態は、千尋さんを王都の地下深くに幽閉し、自分たちの頭痛と不眠を癒やすためだけの『生きた鎮静アーティファクト』として囲い込むための、完全な拉致部隊だ!!」
「……強制徴募だと……?」
アルヴィスの喉から、低く、地這うような声が漏れた。
「それだけじゃない!」
イヴァンはさらに言葉を重ねた。その声は、差し迫った危機の大きさに震えていた。
「使者として差し向けられたのは、大公派の腹黒官吏オズワルド! しかも奴は、正規の使節団の皮を被りながら、裏では『黒狗』と呼ばれる裏ギルドの残虐な傭兵どもを数十人も金で雇い、私兵部隊として引き連れてる! すでに街道を猛スピードで北上していて……明日か明後日には、この常闇の森の境界へ到達するはずだ!!」
ドサリ、と静寂が森を包み込んだ。
イヴァンのもたらした凶報は、この小さな山小屋の平穏を、根底から粉々に粉砕するに十分すぎるほどの衝撃を孕んでいた。
千尋を、連れ去る。
この世界で一番温かく、誰にも邪魔されない安眠の聖域から引きずり出し、王都の薄暗い地下室へと閉じ込める。
欲望の皮が突っ張った権力者たちのために、朝から晩まで精神を削られ、二度と太陽の匂いのするシーツにくるまることも、縁側で麦茶を飲むことも許されない、終わりのない奴隷のような日々へと突き落とす――。
「……ふざけないで」
千尋の口から、乾いた、けれど明確な怒りの声が漏れ出た。
「一生遊んで暮らせる大富豪の話を断ったばかりなのに……今度は強制徴募ですって? 人の家を勝手にサナトリウム扱いして、私の定時退勤と質の良い睡眠を奪おうだなんて……絶対に、許さないわよ」
元社畜OLの譲れない生活防衛本能が、静かに、けれど苛烈に沸騰し始める。
しかし――。
千尋が怒りを露わにした、まさにその瞬間だった。
ピキィィィィィィィン……ッ!!
「…………っ!?」
千尋は、息を呑んで視線を向けた。
空気が、凍りついていた。
比喩ではない。
アルヴィスが立っている周囲数メートルの地面――敷石の隙間、生垣の葉、そして縁側の白木のステップに至るまで、目に見えるほどの白い霜の結晶が、バキバキと音を立てて蜘蛛の巣のように走り抜けていたのだ。
夕暮れの温かかった空気が一瞬で氷点下へと叩き落とされ、呼気が真っ白な霧となって漂う。
「……アルヴィス、さん……?」
千尋が恐る恐る呼びかけた。
だが――振り返ったその男の顔を目にした瞬間、千尋の心臓が、ドクンと冷たく跳ね上がった。
「…………」
そこにいたのは、千尋の前で不器用に笑い、美味しそうにご飯を頬張り、褒められると耳を真っ赤にして俯いていた、あの「手のかかる大型犬のような騎士」ではなかった。
青い瞳。
かつて千尋がこの山小屋の玄関先で初めて出会ったあの夜よりも、遥かに冷たく、遥かに深く、一切の光を拒絶する「絶対零度のサファイア」。
彫刻のように整った顔立ちは微動だにせず、血肉の通った人間の温もりをすべて削ぎ落としたかのような、冷酷無比な「氷の仮面」が、完璧にその表情を覆い尽くしていた。
帝国全軍の頂点に立ち、数多の魔獣と敵軍の首を平然と刎ね飛ばしてきた、北方最強の戦鬼――『氷の槍』アルヴィス・フォン・ハルデンベルク。
その本来の、他者を寄せ付けぬ冷徹な軍総大将としての本性が、完全に目覚めていた。
「……千尋」
アルヴィスの唇から零れ落ちた声は、まるで万年氷壁が軋むような、感情の欠片もない冷淡な響きを帯びていた。
「指一本、触れさせはしない」
ぞくりと、イヴァンの背筋が凍りつき、情報屋は本能的な恐怖から思わず二歩、三歩と後ずさった。
アルヴィスの全身から立ち上る魔力の奔流は、大気中のアエテルを物理的に凍結させ、キリキリと空間がきしむような異様な重圧を周囲に撒き散らしている。
「オズワルドだろうと、王都の使者だろうと、裏ギルドの傭兵だろうと関係ない。……奴らがこの常闇の森の境界を一歩でも跨ぐ前に、我がハルデンベルク公爵家直属の北方第一精鋭騎士団を動員する」
アルヴィスは淡々と、まるで明日の天気を口にするかのような平然とした声音で、恐るべき虐殺の宣告を紡ぎ出した。
「森の入り口を取り囲み、退路を断ち、氷結魔法をもって一兵たりとも生かしては帰さん。王都へ送り返すのは、氷漬けにした使者の首棺だけで十分だ。大公派の連中が二度とこの森に目を向けぬよう、恐怖を骨の髄まで刻み込んでやる」
「か、閣下……!?」
イヴァンが引きつった声を上げる。
「そ、それはあまりにも過激すぎます! 王都の使者を皆殺しにすれば、大公派に格好の口実を与え、貴族院からハルデンベルク公爵家への反逆罪の追及が――」
「構わん」
アルヴィスは一瞥すら寄越さず、冷たく言い捨てた。
「我が領地が叛乱の汚名を着せられようと、王都と全面戦争になろうと、知ったことではない。……この場所を、千尋の安らぎを脅かす虫ケラどもは、我が手で一人残らず根絶やしにする。それだけだ」
圧倒的な、絶対的な拒絶。
世界すべてを敵に回してでも、暴力をもってすべてを叩き潰すという、氷の覇王の冷徹な決断。
その凄まじい殺気と冷気に、ノエルは恐怖で身を震わせ、ルゥもまた喉の奥で唸り声を殺しながら、警戒の目を光らせていた。
――だが。
「…………」
千尋だけは、違った。
千尋は、肌を刺すようなその猛烈な冷気に怯えることもなく、吹き荒れる殺気にたじろぐこともなく、ただ静かに、アルヴィスの姿を見つめ続けていた。
千尋の目は、アルヴィスの冷酷な表情など見ていなかった。
千尋の視線が注がれていたのは――彼の右手の「拳」だった。
だらりと下ろされた、アルヴィスの大きな右手。
剣の柄に掛けられたその指先が、白く鬱血するほど強く握りしめられ――そして、微かに、小刻みに、カタカタと「震えて」いたのだ。
(……あぁ……)
千尋の胸の奥が、ぎゅっと締め付けられた。
見抜いてしまったのだ。
この男が纏う、完璧な「氷の仮面」の裏側に隠された、悲痛なまでの真実を。
怒りではない。
冷酷さでも、傲慢さでもない。
アルヴィスを突き動かしているのは――引き裂かれるような「自責の念」と、底なしの「恐怖」だった。
(……この人、怯えているんだわ)
自分がこの山小屋に通い詰めたせいで。
自分がノエルをここに連れてきたせいで。
王都の権力闘争という薄汚い泥沼を、この清らかな森へ、千尋の愛する日常へと引きずり込んでしまった。
自分の存在そのものが、千尋の平穏を脅かし、破滅をもたらそうとしているのではないか。
また、奪われるのか。
かつて母親を魔力暴走で失い、戦場で多くの部下を失い、自らの心すら凍りつかせてきた男が、生まれて初めて見つけた「温かな帰る場所」を、自分の罪のせいで壊してしまうのではないか――。
その恐怖と後悔に押し潰されそうになる心を、必死に殺すために。
彼は再び、感情を捨てた「冷徹な公爵」という冷たい鎧を身に纏い、力任せに敵を皆殺しにすることでしか、千尋を守る方法を見出せないでいるのだ。
「……アルヴィスさん」
千尋は、ゆっくりと歩み出した。
霜が降り、凍てついた敷石を踏みしめ、一歩、また一歩と、絶対零度の冷気を放つ公爵の前へと近づいていく。
「近寄るな、千尋」
アルヴィスは視線を逸らしたまま、低く拒絶の声を絞り出した。
「私の魔力が荒れている。お前に冷気が触れれば――」
「冷たくなんかないわよ」
千尋は躊躇うことなく、その凍てつくようなアルヴィスの右手を――自らの両の手のひらで、ふわりと、優しく包み込んだ。
「…………っ!?」
アルヴィスの長身が、雷に打たれたようにビクッと跳ねた。
触れ合った瞬間、千尋の温かな体温が、アルヴィスの強張っていた皮膚へと流れ込んでいく。
千尋の固有スキル【住空間の調律】が、意識せずとも手のひらを通して発動していた。
刺々しく逆立っていたアルヴィスの氷魔力のトゲを、まるで柔らかな毛布で包み込むように、優しく、穏やかに凪がせていく。
足元の敷石に走っていた霜の結晶が、シュルシュルと音を立てて透明な露へと溶け崩れていく。
アルヴィスのサファイアの双眸が、激しく揺らいだ。
冷徹無比だった「氷の仮面」に、ピキリ、ピキリと、目に見えるような亀裂が走っていく。
「ち、千尋……なぜだ……。私は……私のせいで、王都の毒気がお前の元へ……お前のこの平穏な家を、壊そうとしているのだぞ……! 私が、巻き込んだのだ……!」
絞り出すような、掠れた悲鳴。
帝国最強の騎士の唇から零れ落ちたのは、傷ついた少年のように痛々しい、後悔の告白だった。
千尋の前で、男の冷徹な顔は完全に崩れ去り、その瞳には、今にも泣き出しそうなほどの激しい動揺と怯えが溢れ出していた。
千尋は、握りしめた彼の手を離さなかった。
むしろ、さらにぎゅっと力を込め、彼を見上げて、どこまでも穏やかに、けれど凛とした笑顔を浮かべてみせた。
「アルヴィスさん。巻き込まれただなんて、一度も思ったことないわよ」
「……千尋……?」
「あんたが薪を割ってくれて、井戸水を汲んでくれて、美味しいってご飯を食べてくれるから、私はここで幸せに暮らせてるの。……この家はね、私だけの家じゃないわ。あんたの家でもあるのよ」
千尋の真っ直ぐな言葉が、アルヴィスの胸の最深部を、温かな木漏れ日のように照らし出す。
「だからね、一人で全部背負い込んで、怖い顔をして皆殺しにしようなんて思わないで。……王都の馬鹿どもが土足で踏み込んできたら、その時はその時よ。私の大掃除スキルを舐めないでよね」
千尋の悪戯っぽいウインクに、アルヴィスは息を詰まらせた。
張り詰めていた殺気が、潮が引くように急速に霧散していく。
男の尖った耳の先が、カッと赤く染まり、彼は千尋の温もりから逃れることもできず、ただ立ち尽くすしかなかった。
チリン……。
軒先の風鈴が、夕闇の迫る森の中に、静かに鳴り響いた。
迫り来る王都の影と、裏ギルドの進軍。
嵐の前の静けさの中で、二人の手は固く結ばれ、山小屋の夜は、それぞれの想いを孕んだまま、静かに更けていこうとしていた。




