繋がれた手の温もり(本節、全面改稿)
繋がれた手の温もり(再構成・最適化版)
ロースアン、大陸の東北部に位置するこの首都都市は、二人の若い客人を迎えていた。昨夜の大雪が、この大地に、一枚の分厚い銀の衣装をまとわせていた。街道の両脇の商人たちは、懸命に自分の店の前の雪を掃き、商売を呼び込もうとしているが、道の中央の積雪には見て見ぬふりをし、それが通行人の足跡で泥濘になるのを、なすがままにしていた。
「シミア様、見てください! 雪舞祭の飾りです! もう終わってしまいましたけど、きっと、とても綺麗だったでしょうね!」
あの狭い旅宿から一歩出ると、外の賑やかな雪景色を見て、シャルは、この上なく興奮していた。彼女は、あの、少し古びてはいるが、それでもなお清潔なメイド服を身にまとい、その手には二人のスーツケースを提げているが、その足取りは、意外なほどに軽やかだった。彼女は、期待に満ちた様子でシミアの手を引き、早口で、王都に対するあらゆる幻想を、まくし立てていた。
シミアは、黙って彼女に引かれていたが、その視線は、無意識のうちに、周囲の光景に引きつけられていた。
雪かきをしていた中年男性が、首にかけたタオルで汗を拭うと、店の中から飛び出してきた小さな女の子に、親しげに足を抱きつかれている。遠くないところでは、親子三人が、飴を売る屋台を囲み、子供の笑い声が、銀の鈴のように、心地よく響いていた。
これらの、平凡で、温かい光景が、一本また一本の針のように、彼女の記憶の奥深くを、突き刺した。彼女は、あの冬を思い出した。父と母が、彼女に別れを告げた時、その顔に浮かんでいた、まるで申し合わせたかのような、わざとらしい、気楽な笑みを。
一股の、氷のように冷たい寒気が、心の底から込み上げてくる。彼女は、無意識のうちに、これらの光景を振り払い、歩みを速め、逃れようと、試みた。
「シミア様ったら、もう!」
シャルは、しかし、一足先に、彼女の前に、立ちはだかった。彼女は頬を膨らませ、少し、わざと怒ったような、有無を言わせぬ口調で、言った。「せっかく王都に来たのに、もしずっと、ふさぎ込んでいたら、あまりにも、もったいないじゃありませんか!?」
「え……」シミアの思緒は、断ち切られ、茫然と、頷いた。「じゃあ、シャルは、何かしたいことがあるの?」
シャルは首を傾げ、ほとんど考えることもなく、答えを出した。「私、シミア様と一緒に、ここの、一つ一つのお店を、全部見て回りたいです!」
シミアが応えるのを待たず、シャルは、彼女の、あの、冷たくなり始めていた手を、掴むと、有無を言わさず、隣の、綺麗な木の風鈴が掛かった、装飾品店へと、向かった。
風鈴の、心地よい音が、シミアに、心の奥底に残る、あの陰鬱さを、考える暇を、与えなかった。
彼女には、もう、あの、不愉快な出来事を、思い出す時間はなかった。彼女の時間は、一つまた一つと、目新しい店舗に、満たされていった。彼女はシャルに引かれ、一つの、精巧な作りの銀の装飾品に触れ、一枚の、色彩鮮やかなタペストリーを評価し、一つの、これまで見たこともない香辛料の匂いを、嗅いだ。あの、過去に属する、冷たい光景が、目の前の、これらの、生き生きとした、手の届く色彩と、温度によって、少しずつ、脳海から、押し出されていった。
知らず知らずのうちに、シミアは気づいた。自分の、あの、固く結ばれていた口元が、とうに、シャルの、興奮に満ちた話の中で、微かに、上へと、吊り上がっていることに。
王都の風雪は、依然としてやまない。だが、固く繋がれたその手から伝わる温もりが、まるで、一つの、堅固な城壁を築き上げ、全ての寒さを、外へと、隔絶しているかのようだった。シャルの活力は、まるで伝染するかのように、シミアを、思い出の陰鬱さから、完全に解放し、彼女を、本当に、初めて王都へ来た少女のように、好奇心をもって、この都市を、観察させ始めた。
二人は、知らず知らずのうちに、一際賑やかな通りへと、歩みを進めていた。ここの店舗の多くは、精巧な手工品を売っており、木彫りの人形、陶土で焼かれた壺、きらきらと光るネックレス……さすがは王都、と言うべきか。ありとあらゆる商品が目にまばゆく、二人の少女の瞳に、好奇心の光を、灯していた。
「シミア様、ご覧ください!」シャルは、一軒の装飾品店に惹きつけられ、シミアの手を引いて、中へと入っていった。
一人の、中々に抜け目のなさそうな店主が、すぐに、二人を迎えた。彼が、二人の少女の、服装は質素だが、立ち居振る舞いには、良い教養が透けて見えるのを見た時、その顔の笑みは、より一層、熱心なものとなった。だが、彼の視線が、何気なく、シミアの、あの、白い雪景色の中で、一際目立つ、漆黒の長い髪を掃った時、その熱意は、顔色を変えることなく、三割ほど、収斂された。
「さっきのお店のネックレス、とても精巧でしたね」店から出た後、シミアの目に、得難い光が閃いた。「特に、あの、神射手リナを彫刻した水晶は、上古十一英雄の武勇と、女性としての美しさを、余すところなく表現していました!」
「シミア様は、流石、ご鑑識眼がおありですね」シャルも、それに合わせて頷いたが、随即、少し、胸を痛めたように、小声で付け加えた。「ですが、あのような装飾品を制作するには、良いアイデアだけでなく、良い素材も必要です。私たちには、あんなに綺麗な晶石を買う余裕は、恐怕、ございません」
シミアの視線は、しかし、遠くを望んでいた。まるで、ある、未来を見ているかのように。「シャル、試してみるのはどうかしら。明日、女王陛下の補助金をいただいた後、私たちも、新しい彫刻道具を一式買って、何か、大きな装飾品を作ってみるのは?」
その言葉を聞き、シャルの顔に、あの、ようやく燃え上がった興奮が、瞬時に、一層の陰りに覆われた。彼女は歩みを止め、心配そうにシミアを見つめ、その声には、一筋の、懇願の色が混じっていた。「シミア様、どうか、お気をつけて。貴族の世界は……とても、残酷です。旦那様が……旦那様が、以前、いつも、そう仰っていました」
シャルの言葉が、一本の鍵のように、シミアの、封じられた記憶を、開けた。彼女は、父親の、あの、いつも疲労に満ちた背中を思い出した。彼が、商売に失敗した後、母親に訓戒される時の、あの、沈黙した姿を。彼はいつも言っていた。「父さんが、頑張って、お前にもっと良い環境を作ってやる。だから、将来、お前が、政治や、貴族たちと、関わらなくて済むように」と。
「分かっているわ」シミアの口調は、平静だった。彼女は、逆に、シャルの手を、固く握りしめ、自らの温度を、伝えようと試みた。「でも、明日になれば、全て、良くなるわ。ただの『一階領主』とはいえ、毎年、二十枚の金貨の給金があるのだから」
「私たちは、本当に、その二十枚の金貨が必要なのでしょうか?」シャルの声には、一筋の、震えがあった。「旦那様と奥様から、貴族間の社交は、必ず履行しなければならない義務であり、それは、非常に重い出費だと、伺いました。私たちのような、自分の領地を持たない貴族は、体面を保つだけで、恐怕、その大半を使ってしまうでしょう。それでは……それでは、旦那様たちが、当初、置かれていた状況と、何か、違いがあるのでしょうか?」
そう、何か、違いがあるのだろうか? 故郷へ帰り、受動的に、地元の領主の集会に参加し、再び、あの、人情世故の渦の中へと、巻き込まれていく。それは、父親が望んだ生活ではない。ましてや、自分が望む生活では、断じてない。
シミアは、首を振った。まるで、その考えを、振り払うかのように。彼女は、目の前の、車が行き交う通りを見て、あの、生計のために、奔走する人々を見て、一つの、全く新しい考えが、まるで一粒の種のように、初めて、彼女の心の中に、そっと、落ちた。
――あるいは、全く、帰る必要など、ないのかもしれない。
「シャル」彼女は、振り返り、真剣に、自分の同伴者を見つめた。「私たち……王都に、残ってみるのはどうかしら? あなたが作ったパンを売るの。きっと、大人気になるわ」
その提案は、一本の光のように、瞬時に、シャルの、あの、心配に満ちていた瞳を、照らし出した。彼女は、呆然と、シミアを見つめ、まるで、自分の耳を、信じられないかのようだった。慣れ親しんだ故郷を離れることは、確かに、不安を伴う。だが、もし、シミア様と一緒に、自分の腕で、小さなお店を開けるのなら。
この、繁栄した都市に留まることは、帰って、未知の危険に直面するよりも、遥かに、魅力的だった。
「はい!」シャルは、力強く、頷いた。その顔に、ようやく、いつもの笑みが、戻ってきた。「シミア様、私たち、一緒に、頑張って生きていきましょう!」
「それじゃあ、シャル先生に、お料理の技を、しっかりと、ご指導願わなければなりませんね」
その言葉を聞き、シャルの顔が、一気に、曇り、慌てて、手を振った。「あの、シミア様……あなた様は、やはり、厨房には、お入りにならない方が……」
シャルの、あの、心から、困っている様子を見て、シミアは、ついに、堪えきれずに、笑い声を、上げた。
魔力がなくとも、どうだというのだ? 領地がなくとも、どうだというのだ? ただ、こうして、二人一緒に、明日のために悩み、他愛のない冗談を言い合えるだけで、すでに、この上なく、贅沢な幸福だった。
明日になれば、あの、一年遅れた給金を受け取れることを思うと、未来には、本当に、この都市で、シャルと一緒に、彼女たち自身の、小さな、安住の地を、持てるかもしれないと思うと、シミアの心の中に、初めて、「未来」という言葉に対して、一筋の、ささやかで、そして、真実の期待が、生まれた。