9話、村のおじさんたち、来襲。
ーー夕暮れ時、遠藤領の畑の横。
作左衛門「これ、作兵衛に茂吉! 今日の畑仕事はそこまでにせよ。殿の仰せにより、これよりお主たちを我が遠藤家の特別な庵に招待いたす」
作兵衛「えっ? 特別な庵ですか? はぁーー、そんな事より。今日の夕飯もガチガチの麦飯と塩辛い味噌漬けの大根だけかと思うと、足が重くて……」
茂吉「そうでさぁ、最近、遠藤家の皆様はやけにお肌がツヤツヤで元気ハツラツでごぜぇますが、オラたちは毎日ヘトヘトで……」
権三「がははは、だから連れて行くのだ。黙ってついて来い!」
ーー裏庭の湯そば庵の中。
作兵衛「う、うわぁ。なんだべ、このピカピカな綺麗な部屋は! お、お邪魔しますだ……(恐る恐る部屋の中に入る)」
茂吉「作兵衛! アソコを見るだ! 3歳の松千代様が踏み台の上にちょこんと乗っておられるだ!」
松千代「作兵衛じいじ、茂吉おじたん、いらっしゃい! 今日はね。みんなのために美味しいちゅるちゅる(お蕎麦)を作るね!」
作兵衛「はぁ? 松千代様が料理を……? 殿様、コレはいったい……」
頼重「作兵衛、まずはその鉄の箱(券売機)に銭を入れるところを見ておれ。よし、頼武、頼次、全員分の金をポイっとするのだ!」
ーー頼重たちが全員分のたぬき蕎麦の食券を次々に購入する。
券売機「ガチャガチャ、ガラガラ……チャリン、チャリン……ゴト、ガコン」
作兵衛「ひゃあああ! 箱が銭を食って変な紙切れを吐き出しましたただ!?」
お初「驚くのはまだ早いですよ。はい、松千代様、食券です!」
松千代「はーい! たぬきそば、いくよー! ふんっ! (湯切り網をぎゅうっと握る)」
村人一同「……(なにが始まるのかと固唾を飲んで見つめる)」
松千代「ちゃっ! えっしょ、ちゃっ!」
作兵衛「(あまりの可愛さに目を細めて)おぉお……なんと可愛らしい。松千代様がお尻をふりふりなさって……」
茂吉「いや作兵衛、それだけじゃねぇだ! あの短い腕で見事にお湯を切っておられる! 3歳児とはとても思えねぇ妙技だべ!」
松千代「できた! たぬきそば、どうじょ!」
作兵衛「それでは、恐れ多くも……ずずっ、ずずずっ……!? な、な、な、なんだべ! この美味さはぁああああ!?」
茂吉「(一心不乱に蕎麦をすすりながら)ずずずっ! ずずずっーー! ……んんん、お、お出汁が五臓六腑に染み渡るだ。昼間の農作業でクタクタになった体に、このサクサク(天かす)の油と熱い汁が行き渡って、極楽にいるような気分でございますだ!」
作兵衛「あっ、汁まで全部飲んじまっただ……あぁあ、体中がぽかぽかして、手足の痛みまで消えて行くようだべ」
ーーその時、券売機の横の液晶画面に『4,500ポイント達成!』と表示が浮かび上がった。
松千代「あっ! ポイントが貯まって『きつねそば』と『つきみそば』が、新しく出せるようになったよー!」
頼次「おお! 松千代、それが次の神のメニューですか!」
松千代「うん! おっきくて甘じょっぱい油揚げがのった『きつねそば」と、お月様みたいな生卵がぽちゃんとのった『つきみそば』だよぉー!」
作兵衛「あ、油揚げに、生卵って、そんな贅沢な馳走まで、食べられるだか……!?」
茂吉「殿! オラ、明日から死ぬ気で畑を耕しますだ! 畑の収穫をあげて、毎日小遣いを貰って、絶対にその『きつねそば』とやらを食べに来ますだ!」
頼重「うむ。作兵衛、茂吉、奥にはいつでも入れる風呂もある。蕎麦を食って風呂の湯に浸かれば、明日からの仕事は3倍はかどるぞ!」
作兵衛・茂吉「(大号泣しながら)遠藤家についてきて、本当に良かったべーー!」
こうして、村の若い衆や老人たちも巻き込んで遠藤領は松千代のお蕎麦と風呂の力で、どこよりも結束力の強い、超健康でやる気満々の村へと進化し始めるのでした。




