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戦国ちびっこ店長  作者: 東のマ王


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5話、じいと侍大将。

ーー遠藤家の居間。


作左衛門「……殿。近頃、遠藤家の方々の様子が明らかにおかしいと、この作左衛門、睨んでおります」


頼重「むっ、なにがおかしいのだ作左衛門。我が家はいたっていつも通り、平和そのものだが……」


権三「いえ、隠されても無駄でござる! まず頼武様の肩の凝りがすっかり治り、頼次様にいたっては妙に髪がツヤツヤと輝いておられる。さらに、全員のみなさまからなにやら嗅いだ事のない、えもいわれぬ芳しき匂いが漂っておるのです!」


頼武「ギクリ! そ、それは気のせいだ、権三、拙者はただ筋骨を鍛えただけで……」


作左衛門「お黙りなされ! 若様、財政が火の車である我が遠藤家において、皆様が毎日あのような緩んだ幸せそうな顔をされているなど、異常事態でございます! 権三、行くぞ! 皆様が毎夕、裏庭の物置の裏へと消えて行くのを突き止めてある!」


頼重「あっ、待て、作左衛門! 早まるな!」


ーー裏庭の物置の裏、ひっそりと佇む『湯そば庵』の前。


作左衛門「な、なんじゃ! この見慣れぬ建物は! このような小屋は無かったはずじゃ! もしや敵方の忍びの隠れ家、あるいは妖術の類の物か!?」


権三「作左衛門殿、拙者が突撃いたす! ……者ども神妙にいたせぇーー!!」


ーーガラガラガラッと、権三が刀を構えて踏み込むと、そこには笑い合う松千代とお初の姿があった。


松千代「あっ、ごんぞうだ、じいじも、いらっしゃい!」


お初「ひゃあ! 権三様! 作左衛門様も! 刀を抜いてどうされたのですか!?」


作左衛門「松千代様! お初! その怪しげな箱から離れなされ! これは織田の新型の爆弾か、はたまた人を呪う呪具の類の物か!?」


松千代「ちがうよー。お金をぽいっとすると、おいしいちゅるちゅる(お蕎麦)がでるのー」


権三「ちゅ、ちゅるちゅる……? むっ、よく見れば箱のボタンに『かけ蕎麦 六文』と文字が書かれて光っておるな。作左衛門殿これは罠でござるな、触れては……」


頼重「(慌てて追いかけて来た)……これこれ、二人とも落ち着け! 刀を納めよ。松千代、あの技を見せてやれ」


松千代「うん! じいじ、ろくもん持っている? ぽいってしてみて」


作左衛門「お、おねだりですか? 松千代様のおねだりには弱い私ですが……しかし、敵方のカラクリに銭は払えませぬな……いや、さすれば私がこの箱の正体を暴いてみせますぞ!」


懐から汚れた銭を取り出し投入口へ。


券売機「ガチャガラ……ゴト、チャリン」


作左衛門「ひぇええ! 銭を飲み込んだ!? やはり妖魔の類のモノか!?」


松千代「じいじ、みどりのボタンをポチッとするの!」


作左衛門「えぇい! 南無三!」


券売機「ウィーーン……カシャ(食券を吐き出す)」


ーー何もない調理場に打ち立ての蕎麦と、素晴らしい出汁の香りがするスープが現れる。


権三「なっ!? なんと神々しい香り! この鼻をくすぐるこの匂いを嗅いだだけで、拙者の腹が鳴りまくっておりますぞ!」


松千代「おはちゅ、どんぶり! ……よし、いくじょ! ふんっ! (湯切り網を握りしめる)」


作左衛門・権三「……(息を呑んで見詰める)」


松千代「ちゃっ! えっしょ、ちゃっ!」


作左衛門「ほ、ほう……。(あまりの愛らしさに、頑固な顔がふにゃける)」


権三「なんと小気味良い湯切り! 3歳のお子が、実に見事な手捌きをされておられる!?」


松千代「できた! じいじのかけそば、いっちょあがりー!」


作左衛門「これが妖術の麺……どれ、毒味を……ずずっ、ずずずっ……はぁあああああ!?」


権三「作左衛門殿、いかがなされた! お気を確かに!」


作左衛門「(どんぶりを抱えて大号泣しながら)う、美味い! 美味すぎるわぁあああ! 毎日銭が足りぬと胃を痛めていた私の体にこの琥珀色の出汁が優しく染み渡っていく……神童じゃ、松千代様は神の生まれ変われに相違ないわぁあああ!」


権三「な、なんたる取り乱しよう、拙者も我慢できん! 我が小遣い六文を、ガチャガラ……ポチッと! 松千代様! 拙者にもそのちゅるちゅるを!」


ーーじいと権三か蕎麦を貪り食う中、券売機の脇にある液晶画面に『1,500ポイント達成! 新機能解放可能!』と言う文字がひっそりと浮かび上がった。


作左衛門「この庵は、我らが銭を払えば松千代様が神の奇跡を起こして、我らにこのような馳走を与えくれる場所でありましたか……。殿! これからは遠藤家の銭を惜しみなくあの箱に注ぎ込みましょう!」


こうして、遠藤家はさらに一丸となって松千代のお蕎麦とお風呂に溺れていくのでした。

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