4話、遠藤家、お風呂に浸かる。
ーー蕎麦を食べ終わり、お腹いっぱいになった遠藤家一同。
頼重「ぷはぁ……旨かった、汁まで全部残さずに飲んでしまったぞ。……むっ、そう言えば松千代、この小屋には『風呂』もあると言ってなかったか?」
松千代「うん! あっちの『ゆ』ののれんの奥だよ。いつでもあったかいお湯がわいているの!」
トイレもあるけどソレは後でいいかな。
お艶「いつでもお湯が? 薪もくべてないのに、そんな訳が……あら?」
ーーのれんをくぐり、一畳半の脱衣所を通り、その先の四畳半の風呂場へ。
頼武「うおっ!? なんだこの白い煙は!温かい……いや、少し暑いくらいの煙が満ちているぞ!」
頼次「兄上、それは煙ではなくて湯気です。見てください、木でできた大きな浴槽になみなみと透き通ったお湯が張られています」
鈴「わぁああ、きれい! お初ちゃんさっきここに入ったの? 鈴もはいりたーい!」
お初「はい、鈴様、お殿様もお方様も、ぜひお入りください。体の芯からじんわり温まって疲れが吹き飛びますよ!」
頼重「よし、ならば遠藤家一同、失礼して……うぉお! 冷たくない!? 畳ではないのに、足の裏が痛くないぞ!」
ココには現代の浴室用のタイルが下に敷き詰められているから冷たくないんだよねー。
松千代「お父たん、はいるまえにおててと体をキレイキレイするんだよ。そこに置いてある石鹸とお湯を使うの!」
お艶「まぁ、この白いボトルはなにかしら? この白い液体を手でお肌にこすると、おもしろいほど白い泡がたって、とても良い香りがしますね」
頼武「本当だ! この泡で洗うのは楽しいですな! うお、みるみる汚れが落ちていく……よし、体が綺麗になったところで……いざ、尋常に、入湯ーー!」
ーーザブーーーーン! っと、頼重、頼武、頼次が勢い良くお風呂に飛び込む。
頼重「おぉおお……! なんじゃこれは!? なんじゃこれはぁあああああ!!」
頼武「父上、声が漏れておりますぞ……しかし、うはぁああ……身体の節々の痛みが溶けて消えていくようです……」
頼次「(お湯に肩まで浸かって目を閉じながら)……極楽、これぞまさに極楽浄土。寒い冬でも濡らした布でガタガタ震えながら体を拭くしかなかった我が家で、これほどの極楽を味わえるとは、ここは息をするだけでも気持ちいい……」
お艶「まぁまぁ、あなたたち男衆だけでお湯を独占しないでくださいな。鈴、私たちもあちら側に浸かりましょう」
鈴「はーい! きゃはは! お湯がパチャパチャして楽しい! 松千代もおいでー!」
松千代「ぼくもはいるー! ぷかぷか〜(お初に支えられてお湯に浮かんでいます)」
お艶「ふふふ、松千代が笹舟みたいに浮いていますね。お初も一緒にお入り、いつも松千代のお世話をしてくれてご苦労さま」
お初「あ、ありがとうございます。お方様、失礼します。……はぁぁ、やっぱり最高です……」
頼重「うむ。美味い蕎麦を食い、このような贅沢な湯に浸かる。これが毎日続くのであれば、織田や徳川どこの大名だとしても羨ましくもないわ。なぁ、松千代?」
松千代「お父たん、まいにちはいっていいよ! でも、お金をぽいってしてくれないとおそばは食べれないの」
頼武「まかせろ松千代! 明日からは拙者が領地で見つけた小銭を全てあの鉄の箱にぶち込んでやるぞ!」
頼次「兄上、それではあの券売機が詰まります。計画的にポイっとせねば……。しかし私も小遣いを全て注ぎ込むことには賛成です」
お湯の中で遠藤家の面々は早くも明日券売機にお金をポイっと入れる決意を固めるのでした。




