33話、影の守護者への、ひみつのごほうび。
ーー泥棒たちを権三に引き渡したあとの、誰もいないお昼下がりの『湯そば庵』。
松千代「おじさん、お外のわるいひとポイしてくれて、ありがとぉなのぉ! まつちよから、ひみつの『ごほうび』だよぉ、ぽちっとなー!」
液晶パネル:【200PT消費:現代の栄養ドリンク『オロナ◯ンC』&『とろ〜りカスタードのシュークリーム』を取り寄せました】
ーーピピッ♪ と可愛い音がして、カウンターの上に茶色い小さなガラス瓶と薄茶色の丸いフワフワしたお菓子がぽわんと出現する。
隠密「(平伏しながら)ははっ! ありがたき幸せにございます! ……むっ、松千代様。この茶色い小瓶と、この少し茶色い丸い綿帽子のようなものは一体……?」
松千代「あのね、こっちの小瓶は『おろなみん』っていうのぉ! 元気がいっぱいでる、まほうのお水だよぉ。ここの金具を、ぽんっ! って引っ張るの!」
隠密「お、おろなみん……。では失礼して、この指輪のような金具を……えいっ!」
小瓶「プシュッ……ポンッ!」
隠密「ひゃあっ!? (小瓶が微かな煙を吹き、黄色いきらきらした泡が弾けるのを見て飛び退く)」
松千代「あはは、ビックリちた? 毒じゃないよぉ、ゴクゴクしてねぇ!」
隠密「はっ、では恐る恐る……ゴク、ゴク……。……っ!! ーー(一瞬で全身の細胞がバチバチと呼び覚まされる)」
お初「忍び様、おめめがまた凄く大きくなっていますよ!」
隠密「(小瓶を両手で震わせながら大号泣して)な、ななな、なんじゃこのシュワシュワとした刺激はーーーーっ! 甘くて酸っぱくて、喉を駆け抜けた瞬間に、一日の隠密任務の疲れが……いや、これまでの半生の疲れが全て吹き飛んで、身体の底から炎のような活力が湧き上がってくるようです!!」
松千代「えへへ、すごいでしょぉ! じゃあつぎは、その『しゅーくりーむ』を、あむっ、てしてねぇ!」
隠密「しゅ、しゅーくりーむ……。触ると驚くほどフカフカで柔らかい……。では、パクリ。……(もぐもぐ)……。……ッッ!?!?!? (言葉を失い、あまりの美味しさにその場で崩れて落ちる)」
お初「大変です松千代様! 忍び様が美味しさのあまり、床に頭を擦り付けて動かなくなっちゃいました!」
隠密「(床に涙をポロポロとこぼしながら)あ、甘い……! 噛んだ瞬間、薄くて香ばしい皮の中から、まるで天上の雲をすくい取ったかのような、濃厚でとろ〜りと黄金の練り物が溢れ出てきました……おろなみんのシュワシュワとした爽快感のあとに、このとろける甘み……っ。織田信長が何大名だろうと、影の忍びにこのような優しき馳走をくれる主君など、日ノ本中どこを探してもおりませぬーーーっ!」
松千代「あはは、おじさん、お口のまわりに、白いクリームがいっぱいついているよぉ!」
隠密「(手拭いで顔を拭い、キリッと真剣な眼光に戻って)松千代様……! この隠密、今日この瞬間から、武田家だけでなく、松千代様個人の『影の家臣』として、この命が果てるまでお昼寝の時間をお守りすることをお誓いいたします!」
松千代「うん! まつちよ、おじさんだーいすきだから、まいにちお守りちてねぇ! 夕方になったらおじさんの大好きな『かけ蕎麦』もいっぱい作ってあげるからねぇ!」
隠密「(再び涙腺が崩壊して)ははーっ! ありがたき幸せにございまするーーーっ!」
現代のジャンクでハイクオリティな栄養ドリンクと洋菓子のコンボに、完全に魂まで救われた隠密は、松千代の絶対的な忠臣として、ますます闇の中での護衛に命を燃やすのでした。




