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戦国ちびっこ店長  作者: 東のマ王


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32/64

32話、お昼寝の危機と、闇に潜む守護者。

ーー午後一時半、松千代が調理場の横で「すー、すー……zzZ」とお昼寝している、完全閉店中の『湯そば庵』。


いつもは賑やかなテラス席も今は静まり返り、お初が松千代に優しく毛布をかけていたその時ーー。


強欲な商人「(ガラス戸から中を覗き込みながら、小声で)へへへ……おい、ゴロツキども、静かにしろ。遠藤の領主どもは畑の見聞で出払っておる。3歳の小童が寝ておる今こそ、あの『銭を喰らう鉄の箱(券売機)』を盗み出す絶好の好機だべ!」


ゴロツキ「へっ、楽な仕事だ。あんな鉄の箱、俺たちと腕力なら一瞬で担ぎ出せるぜ! 邪魔な小娘(お初)は縛り上げてしまえ!」


お初「(不審な足音に気付いて窓を覗き込み、顔を真っ青にして)ひゃっ!? な、あなたたち誰ですか! 松千代様のお昼寝を邪魔しないでください!」


強欲な商人「がはは! うるさいわ小娘! その鉄の箱は今日から我が商会がいただく! これさえあれば、お蕎麦も冷たい酒も、儂が独り占めで大儲けできるのだ!」


ゴロツキ「(刀を抜いてお初に迫る)おい、大人しくしろ!」


松千代「う〜ん……むにゃむにゃ……だめだよぉ……おみせ、おやすみなのぉ……zzZ」


松千代は寝返りをうつだけで、まだぐっすり夢の中。お初が恐怖で身をすくませたーーその瞬間!

天井の梁(はり)の影から、一筋の黒い影が疾風のごとく舞い降りた。


ーードカッ! バキッ!


ゴロツキ「ぎゃあああ!? (一瞬で刀を叩き落とされ、床に転がる)」


隠密「(漆黒の装束に身を包み、クナイを構えて冷酷な眼光を放ちながら)……遠藤の物置の裏、そして神童・松千代様のお昼寝を時間を汚す不届き者め。この私が一歩と通さぬ」


強欲な商人「ひ、ひぇえええ!? 遠藤の貧乏領地に、なぜ武田の凄腕の忍び(おんみつ)がいるんだべぇええ!?」


隠密「(心の声:当たり前だ。わたしは松千代様のかけ蕎麦とハブラシ、そして直々にいただいた冷たい牛乳の恩を忘れてはおらん! 松千代様のご機嫌を損ねてお湯が出なくなったら、お館様(信玄公)の湯治にも障るのだ!)」


ゴロツキ「お、おのれ、コレでも喰らえ!」


隠密「ふん、小細工を。……(電光石火の体術でゴロツキの腕を捻り上げ、テラス席の杉の床板に叩きつける)ーーせいッ!」


ーーゴキッ! ドガッ!


強欲な商人「ひ、ひゃあああ! もう勘弁してくれだべぇええ!」


お初「す、すごいです、お顔が真っ黒な忍び様、一瞬でやっつけちゃちました!」


隠密「(息一つ乱さず、商人の襟首を掴みながら)おい、商人。お前たちの身柄は我が主人、武田信玄公が直々にお捌きになる。二度とこの極楽の庵に近づくな」


強欲な商人・ゴロツキ「(信玄の名前を聞いて、失禁しそうになりながら)は、はいぃいいーーーー!!」


松千代「……ふわぁ、うんとねぇ、お外がトントンって、にぎやかだょお……(おめめをゴシゴシ擦りながら、むにゃむにゃと起き上がる)」


隠密「(一瞬でクナイを隠し、満面のデレデレ笑顔になって平伏しながら)松千代様! おはようございまする! お外はなにもございませぬ、ただの風の悪戯(いたずら)にございます」


お初「はい、松千代様! 忍び様が悪い泥棒さんをポイしてくれたので、店もお風呂も無事ですよ」


松千代「うわぁ、おじさん、いつもありがとぉなのぉ! お昼寝して、すっきりしたから、今夜もみんなにいっぱい『ちゃっ!』するねぇ!」


隠密「(あまりの尊さに涙をポロポロ流し、拝みながら)おおお……松千代様の『ちゃっ!』がまた聞ける……私は今日まで生きていて本当によかった……ッ!」


松千代の知らない所で起きた初の防衛戦は、松千代のお蕎麦とお乳に胃袋を掴まれた隠密の圧倒的な活躍により、お昼寝の平和が完璧に守られたのでした。

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