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戦国ちびっこ店長  作者: 東のマ王


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34話、お館様の太っ腹と、スパイスの黒船!

ーーお留守番事件の日の夕方、夜の部のテラス席。


信玄「なにっ!? 松千代がお昼寝している間に、強欲な商人とゴロツキが庵を襲っただと!? おのれ……儂の癒しの場であり、南蛮地蔵尊(券売機)のある庵を汚すとは万死に値するわ!」


頼重「はっ! 幸い、影から見守っていた隠密の働きにより、松千代もお初も無事にございまする。不届きな商人は、権三たちが今キツくお説教(取り調べ)しております」


信玄「うむ、隠密よ、よくぞ松千代とお初を守った! 褒美として、今宵は儂の奢りじゃ! 遠藤家一同も、村の者たちも、今夜は全員儂の銭で好きなちゅるちゅる(お蕎麦)を腹いっぱい食うがよい! 頼武、頼次、この銭で地蔵尊から食券を買い占めて皆に配れ!」


ーー信玄公、懐からずっしりと重い大金の入った巾着袋を差し出す。


頼武「おおおっ! お館様の太っ腹! ありがたき幸せにございます! ーーよし、みんなの分をポチポチするぞ! ガチャガラガラガラッ! チャリンチャリンチャリン!」


頼次「兄上、押し間違わないでください! かけ蕎麦、たぬき、きつねに月見……凄い数の食券が吐き出されていきます!」


ーー遠藤家も、村のおじさん達も、みんながお館様の奢りで大喜びでお蕎麦を貪り食う。


松千代は短い手を一生懸命に動かし、お初と一緒に次々と温かいお蕎麦をテラス席へと運び続けた。

そして、みんなが最後の一杯を平らげ、どんぶりを片付けたその時ーー。


券売機の横の液晶画面が『90,000PT達成! 最高峰メニュー解放!』と、今までで1番激しくピカピカときらきら光り、1番下にポツンとあった、怪しげな黄土色のボタンがパッと灯った。


松千代「あっ! 画面の文字がかわったぁ! いちばん高い、すごーいの出せるようになったよぉ!」


信玄「(どんぶりを置いて身を乗り出し)なにっ!? ついにあの地蔵尊の最後のボタンが灯ったか! 松千代、それは一体どのような馳走じゃ!?」


松千代「『かれーなんばん』っていうのぉ! お肉とお葱(ねぎ)が入ってて、お汁がどろどろしてて、食べるとお口のなかが、からーくて、すっごく元気が出るんだよぉ!」


信玄「どろどろして辛い蕎麦だと……? よし、儂の奢りの残りの銭で、さっそくそのボタンをポチじゃ! ガチャガラ……カシャッ!」


ーーお札(食券)を受け取った松千代が、厨房の踏み台に登る。


光と共に調理場に出現したのは、戦国時代の日本には存在しない、数十種類のスパイスが調合された現代の『カレー粉』だった。

大鍋に出汁とカレー粉を投入した瞬間ーー庵の周り、そしてテラス席全体に、強烈で香ばしく、食欲を狂わせるスパイスの香りが、ブワアアアッと広がった。


権三「(香りを嗅いだ瞬間、鼻をヒクヒクさせてガタガタ震え出し)な、ななな、なんじゃこの匂いはーーー!? 醤油の匂いでも炭火の匂いでもない、鼻の奥が熱くなるような、得体の知れぬ香ばしさが押し寄せてくるぞ!」


作左衛門「おぉお……お腹がいっぱいの筈なのに、この匂いを嗅いだだけで、また胃袋が猛烈に鳴り出しましたぞ!」


松千代「できたぁ! おじさんの、かれーなんばんだよぉ! すっごく熱くて辛いから、ふーふー、してねぇ!」


ーー信玄公の前に出されたのは、とろみのついた、濃い茶色のスープに包まれた熱々のお蕎麦。


信玄公はゴクリと喉を鳴らし、お箸で麺を持ち上げて、ハフハフと口に運ぶ。


信玄「ずずずっ、ずずっ。……ッッ!!!!? (一瞬で顔が真っ赤になり、目から涙がブワッと溢れ出る)」


頼重「お、お館様!? 今度こそ毒ではっ!」


信玄「(額から玉のような汗をダラダラと流し、大号泣しながらどんぶりを抱えて)美味い……美味すぎるぞぉぉお!!! 辛い、辛いのに旨みが凄まじい! この『すぱいす』とやらの刺激が、儂の五臓六腑を熱く燃え上がらせ、身体の芯から汗と一緒に邪気(病)がすべて外へ追い出されていくようじゃ! これぞ、戦国を終わらせる『スパイスの黒船』じゃーーーっ!」


松千代「あはは、おじさん、お顔が真っ赤っかで、汗がいっぱい出ているよぉ! えらいえらいなのぉ!」


お館様の太っ腹な大盤振る舞いによって解放された『カレー南蛮』。

その異次元の美味しさと発汗・デトックス効果により、武田信玄公の病に侵されていた身体は、ついに全盛期以上の最強の肉体へと大復活を遂げるカウントダウンを始めるのでした。

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