18話、みんなで作る青空テラス。
ーー『湯そば庵』のテイクアウト小窓の前。
作左衛門「これは嬉しい悲鳴でござる。芋を売って銭を手に入れた村人たちが、毎日夕飯どきになると、競うように蕎麦や団子を買いに小窓へ押し寄せております!」
権三「ですが殿、小窓の前はただの草むらでござる。みんな出来たての熱々のどんぶりを両手で持って立ったまますすって、少々落ち着かないように見えますな」
頼重「うむ、せっかく銭を払って蕎麦を食うのじゃ、皆でのんびり座って語らいながら食わせてやりたいが……松千代、ここにお座敷かなにかをへんしん(小改造)で出せるか?」
松千代「うんとねぇ……パネルのポイント、いっぱい貯まっているから出せるよぉ。でもね、せっかくだからみんなで『つくえといす』をトントンして作ったほうが、お外のごはん楽しいと思うの」
頼武「なるほど! 風呂の時と同じだな。庵に似合うピカピカの机や椅子なら、俺たちの手でいくらでも作れるぞ!」
作兵衛「(小窓から顔を覗かせて)それならオラたち村の大工にお任せくだせぇ! 山から最高の杉の木を切り出して、蕎麦にぴったりな立派な床と机を作ってみせますだ!」
ーーそれから二日後、小窓の前の草むら。
頼武や権三、そして村の男たちが汗を流して木を削り、小窓の前に広々とした風情のある木製のウッドデッキ(テラス席)と、ガッシリした杉のテーブル、長椅子がいくつも完成した。
鈴「わぁぁい! お外にピカピカの縁側がいっばいできた! 鈴、ここに座ってお団子たべるー!」
お艶「外の風がとても心地よいですね。お初、さっそく皿とお箸を並べましょう」
お初「はい、お方様。これなら一度に三十人以上がお日様やお月様を見ながらお蕎麦を楽しめますね」
松千代「みんな、トントンありがとーなのぉ。まつちよもお椅子ゴシゴシ(お掃除)お手伝いしたよぉー」
頼重「がはは、松千代のおかげで、まるで城下の賑やかな市場のようになったわ。よし、これより遠藤領の『青空お食事処』の開店じゃ! 者共、風呂上がりの極楽へ、いざ参れーー!」
ーー夕暮れ時、男女別の大浴場から上がってサッパリした村人や家臣たちが、次々とガチャガラと食券を書い、完成したばかりのテラス席へとなだれ込む。
茂吉「ずずずっ! ずすっ! ……んんんーー! 風呂上がりの夜風に吹かれながらこの広い椅子に座って食う『たぬき蕎麦』は、店の中で食うより何倍も美味く感じるべ!」
作兵衛「本当に贅沢だべぇ。芋の銭があるから、今日は奮発して『きつね』にしただべ!」
頼重「(テラスの一番良い席にじいや権三と座り、冷え冷えのお酒をグイッと煽り)……ぷ、はぁあああああ!! 焼き鳥をタレで、もう一串くれ、松千代!」
権三「(ねぎまを美味しそうに頬張りながら)殿、見てくだされ。領民の男も女も子供たちもみんな、美味い蕎麦と団子を囲んで、こんなにニコニコと笑い合っておりますぞ」
作左衛門「(お猪口を傾けながら、しみじみと涙ぐんで)これほどの幸せ、甲府のお館様とて味わう事はできますまい……我、遠藤領は日ノ本一、極楽の里でございますな……」
松千代「うわぁーー、お父たん、お顔がまっかっかだょおー。やきとり、いっぱい食べてねぇー!」
風呂上がりの夕暮れ雲の下、自分たちの手で作ったテラス席で、領主も領民も関係なく全員が笑顔で酒を呑み交わし、蕎麦をすする。
松千代の小さな提案から始まった手作りのテラス席は、遠藤領の絆をどこよりも温かく、そして優しく包み込むのだった。




