11話、きつねと月見。
ーー夕暮れ時、お蕎麦屋さんのカウンター席。
お艶「まぁ、松千代。券売機に緑色と赤色のボタンが増えたのね」
鈴「鈴はねぇ、みどりのポチしたよ! 『きつね』って書いてあったの!」
頼次「私は赤のポチです。『つきみ』と書かれていました。松千代コレはどんなちゅるちゅる(蕎麦)なの?」
松千代「うんとねぇ、みどりのやつはね、おっきくて、あまーいおあげさんが、どん! ってのっているのぉ! あかいのはねぇ、どんぶりの中にきらきらのお月様がぽちゃん、って入っているんだよぉ!」
頼武「きらきらのお月様だと!? 早く見たいぞ、松千代!」
松千代「はーい。おはちゅ、どんぶり並べてぇ! ……ふんっ! (湯切り網をぎゅっと握りしめる)」
遠藤家一同「……(きらきらした目で見つめる)」
松千代「ちゃっ! えっしょっ、ちゃっ!」
お艶「ふふふ、今日のふりふり湯切りもとっても可愛らしいわね」
松千代「できたぁ! こっちがお母たんと鈴ねぇねの、きつねそばだよぉお! はい、どうじょ!」
鈴「わぁーー! お汁の上に鈴のおててより大きなお揚げさんが乗ってる! いただきます……もぐもぐ。……んあーっ! お汁がじゅわーーっとお口の中に広がて、あまくて美味しーーーい!」
お艶「まぁ……本当ですわ。このお揚げ、とってもふっくら煮てあって噛むたびに甘じょっぱいお味が溢れ出してきます。これは女子が好む絶対に大好きな味ですわね」
松千代「えへへ、よかったぁ。つぎは、よりつぐにぃにの、つきみそばだよぉ!」
ーー松千代、熱々のお汁の上につやつやの生卵をぽちゃんと落として差し出す。
頼次「これが『つきみ』……! 本当だ、黒っぽい汁の中で、黄色い卵がまるで夜空に浮かぶ満月のようだ。では……ずずずっ。……むっ!? 卵を絡めてすすると、お汁がとってもまろやかになって、滋養が体に満ちていく感じがします!」
頼重「なに!? 儂のかけ蕎麦も美味いがそっちも美味そうじゃな! ……お艶、そのお揚げを一口くれぬか?」
お艶「あら殿、これは私のきつね蕎麦ですよ。欲しければ自分でポチッとしてくださいな」
頼重「お、おぅ……。よし、儂も次はあの緑のボタンをポチするぞ!」
頼武「はっ! 拙者も次はつきみ蕎麦を食すために、明日の畑仕事をいつもの倍の速度で終わらせてみせます!」
松千代「ふふふ、みんなお汁まで、ごっくんしてねぇ」
新しいトッピングの美味しさに遠藤家が大盛り上がりする中、券売機の中のポイントはさらに順調に貯まっていくのでした。




