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俺達のパーティーは何かがおかしい  作者: お茶大好きなお茶目さん
このパーティーはおかしい
4/22

無一文


建築のバイトをしていた時の事を思い出す。

汗水流して一晩中働き、給料は日当一万だったのをよく覚えている。


壊れた馬車から崩れた積み荷を車のトランクや後部座席に適当に積み終えた俺は、遠い目をして過去を思いだした。


「あの、ありがとうございます」


俺みたいなヤツに頭を下げるだなんて健気な子だ。最近の若い子は頭を下げる事なんてしないからな…。


「別にええよ。それより、アンタ乗れるかな?」


積み荷は、トランクだけじゃなく後部座席までも侵食してしまっている。

運転席と助手席は大丈夫だけど、少年が座れるか心配だ。


あと、お菓子。潰れてなかったら良いなぁ…。


「後は、リュウ乗っけて退散するだけやねんけど…」


緑小僧と戯れていたリュウの方へと視線を向けるとーーあれ?緑小僧がいない?


いや、居ったわ。リュウの足元に。

どうやら、戦いの勝利者はリュウのようだ。


分かってた。分かってたさ。

でもさ、足で踏む事なくね?可哀想やん。それに、上で人差し指立てて『俺が一番』的なポーズも取る必要もなくね?


それに、俺らに視線を向けてるリュウのドヤ顔。なんか見ててイラっと来る。


取り敢えず、携帯(スマホ)を取り出して写真をパシャリ。


ちなみに、作業員勇者は見る影もなく、頭に着けてるヘルメットとユニコーンだけが健在だ。

側から見たら、変な格好した頭のイカれたバカだ。


「ま、まぁ、アイツ乗っけたら行こか」


「はいっ!よろしくお願いします!」


奇妙な人を見るような目でリュウの事を見ながらだけど、頭を下げて頼んでくれる少年。本当に健気だ。


ノンビリと戻って来るリュウを横目に車内で少年と雑談しながら待っていると、ふと、サイドミラーに何か写ったような気がした。


気になって、サイドミラーに視線を向けているとーー。


「……ん?なんか…なんやろ…?んーー」


「あの、どうしたんですか?」


「いや、背後から何か来てるんやけど、なんやろアレ?」


そう言って、俺はサイドミラーを指差して少年に背後から来てる大きな茶色の塊を指し示す。


少年は顔を俺の前にやってから、ミラーの存在に首を傾げながらジッと見つめ、俺が言っていた物に気が付いた。


「……っ!?暴走牛!?」


「暴走族?」


「違います!|暴走牛ですよ!!と、兎に角、逃げて下さい!!」


一瞬、ここにも暴走族が居るのかと思ったが、違うようだ。取り敢えず、よく分からんが少年の反応からしてヤバそうだったから、アクセルを一気に踏み込みながらサイドブレーキを下ろす。


エンジンが唸りを上げるのを耳にしながら、リヤタイヤを滑らせてリュウの方へと進路を向ける。


走りながら窓を開けて暴走牛が来てる方角を指差しながら叫ぶ。


「リュウ!ちょいヤバめや!走れ!」


「あいよ!!」


リュウも茶色の物体の暴走牛に気が付いたようで、車の方へと駆けて来た。


やっぱり、逃げ足だけは速いな。


リュウの目の前でドリフト擬きで車を止めると、一切の迷いなく即座にリュウは助手席に乗り込んだ。


それを確認してから、こちらへと向かって来ている暴走牛へと視線を向けるとーーめっちゃ近くに居た。

大きさは、俺の車と同じぐらい。んで、頭に二本の角があって、それを俺の愛車に向けて爆走してきてる。


「アカーーンっ!!」


咄嗟にアクセル全力全開。渾身の回避を試みる。

当たれば、俺の大切な大切な新古車がぶっ壊れ、ついでにトラックに側面から跳ねられたような感じになってしまうこと間違いなしの攻撃だろう。


一秒でもこの場から退避したいのに、リヤタイヤが滑るのが恨めしい!


やっとの事で走り始めた俺の愛車!

このまま逃げ切れるかと思いきや、


ーーゴガンッ


「のぉーー!!!」


愛車の後部(リヤ)辺りから激突音がした…。

絶対、どっか当たった。絶対、潰れてる…。あぁ…俺の愛車が…。

総額200万近くの愛しき新古車が…。オイル交換したばかりで、走行も浅かったのに…。


サイドミラーで確認するも、どこに当たったかなど分かるはずもなく、兎に角、この場を離れる事を優先する。


しかし、暴走牛は付いて来る。

物凄い速さで付いて来る。


「ヤレるもんならヤッてみろや!デカブツ!!」


「アホか、煽んなや!」


ペチペチとリュウの足を叩いて注意するが、聴く耳なんて持ってくれしない。


まぁ、俺の愛車は動物なんかの速度に負けないけど。

なにせ、制限(リミッター)は解除済みで、色々と弄ってあるからだ。それに、最高速度200㎞/hまでなら出した事があるのだ。


絶対に負けへん!!

そんで、後で暴走牛にやられた傷を確認する!


そんな意気込みを込めてアクセルを踏み込み続ける。

少しづつ暴走牛との距離が空いて行くのをサイドミラーをチラチラと見ながら確認し、少し余裕が出来た事に安堵して少年に確認を取る。


「道はどっちなん?」


「は、はいっ!えっと!真っ直ぐです!!」


「あいよ」


少年が教えてくれた通り、俺はハンドルを握って車を高速で進ませる。


道が悪すぎてガタガタ揺れるから少し酔った…。



〜〜〜



あれから暫く車を走らせ、少年の指示通りに進む向きを変更していたら遠くに何か見えて来た。


画像とか動画でしか見た事がないけど、万里の長城を思い出すような壁だ。


「うおーー!!なんか、すげぇー!!」


大きくて立派で長い歴史を感じる建物だけど、リュウ程に感動は感じない。

俺的には「ふ〜ん」ってな感じで終わらせれる。


まぁ、リュウに肩をバシバシ叩かれんのは痛いけど…ホントに痛い…。


「あっ!見えて来た見ましたね!マータルですっ!」


後部座席からヒョッコリと顔を出した少年が声を上げた。

ちなみに、少年の名前はル…ル…ルックス?

なんか、それっぽい名前だったはず。


「マーガリン?」


「マータルですよ!教国タルタニカの中で一番物流が盛んな街です!」


教国タルタル?それに、マタ?

名前覚えんの苦手やから間違えてると思うけど、まぁ、物資の供給が多いって思ってれば良いか。


「このままコイツで行けるかな?」


「うーん…どうでしょう?」


俺の疑問に首を傾げたルックス。

リュウはと言えば…。


「行っけぇーー!!行っちまぇぇ!!このまま突撃じゃぁぁ!!」


窓から身体を乗り出して叫んでた。

無駄にハイテンション。バカの極みだ。

良い子は真似しちゃダメよ。


「こらこら。危ないから身体を出さないの」


「るっせぇ!フアァァァック!!」


「こらこら。そんな汚い言葉を使わないの」


「イェエェエエエエエ!!」


バンッバンッバンッ


「こらこら。車体を叩かないの」


「イヤァアァァァアアアア!!」


バンッバンッバンッ


ダメだこりゃ…。

一応、俺の顔近くに向けてくる臭い足を叩いて注意してるんだけど、聞く耳なんて持ってくれやしない。


「ルックス君。絶対真似したらアカンで?」


「えっ、あ、はい。それと、僕、ルッタです」


「あっ、ごめん。ルーターやっけ?」


「いえ、ルッタです…」


「えーーっと、ルッ「ルッタです」あ、ルッタ君ね」


うん。物覚え悪くてゴメンね。

けどさ、俺が覚えられへんのって名前だけやから。それ以外の事は覚えれんねんで。

だからさ、そんな睨んでるような、悲しんでるような瞳をしないで欲しい。


それは兎も角、一つ大切な事を聴くのを忘れてた。


「で、ルッタ君。このまま車で街に行くとしてさ、この車、停めとける場所とかあるかな?」


今の俺にとって一番大切な事だ。

他に大切な事と言えば、別宅にある中型と大型のバイクが一台づつと実家に原付一台とリュウのガレージに置いてる原付二台だ。


まぁ、手元にないからどうしようもないけど、気になるのは仕方ない。

大丈夫かな?


……って、今はバイクじゃなくて車や!


縋るような視線をルッタに向けていると、ルッタは少し考える素振りを見せてからハッと何かを思い返して、悲しそうに眉を下げて答えてくれた。


「僕の店なら…馬車も壊れちゃったし…」


要するに、馬車が壊れてしまって置いてきてしまったから、その場所が空いてるっと。そう言う訳ね。


ルッタ君の悲しむ顔を見てたら罪悪感が半端ねぇ…。俺が馬車を壊した訳じゃないけど、なんかゴメンなルッタ君。


「ま、まぁ、置く所もないし、金も住む所も何もないから、そこ借りるわ」


「……え?」


「ん?」


ルッタ君に『何言っちゃってんのコイツ』みたいな表情を浮かべられたんだけど…。

俺、何か変な事言ったかな?

心当たりが全く無いんやけど?


「お金、無いんですか?」


「あ、うん。これ使えんならええけど」


そう言って、おおよその予測はつくけど、財布から日本円を取り出してルッタ君に見せる。

ちなみに、取り出したのは千円札だ。


「これは?」


「お金」


「へ?」


「うん。そうなると思ってた」


はい。予測通りですね!

使えませんよね!当たり前ですよね!

反応が『なんじゃこれ?』的な感じだもんね!


ルッタ君の手からヒョイッと千円札を回収し、財布の中へ収納。


「まぁ、そんな訳で、俺らは無一文なわけさ」


笑いたきゃ笑え。

ハッハッハー。って、俺が笑ってどないすんねん!


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