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第七章 望月祭

 望月祭は、月の女神ディアーナを称える秋の祭典である。


 狩猟の季節が本格化する前に、その恵みへ感謝する。


 地方ではもっと素朴な祭りだが、王都では意味が変わる。


 王家主催の大規模な社交行事だった。


 国内の有力貴族。


 外国大使。


 商人。


 軍人。


 さまざまな者が集まる。


 ソフィアもロール伯爵として参加した。


 そこで彼女は、第一王女シャーロット・モリアと顔を合わせた。


 十八歳。


 ソフィアにとっては、一度だけ義姉だった女性である。


 シャーロットは二年間、デュポア王国へ留学していた。


 モリア王国とデュポア王国の友好を深めるための留学だったが、その間に一人の男性へ心を寄せた。


 デュポア王国第二王子ケント。


 しかし婚姻には至らなかった。


 王族同士の結婚は本人たちだけでは決められない。


 帰国したシャーロットも、それは理解していた。


 だが、感情まで簡単に整理できるわけではない。


 そこへ現れたのが、フラン王国大使の娘ジュリアだった。


 ジュリアはケント王子との婚約が決まっていた。


 それだけなら何も問題はない。


 問題は、ジュリアがシャーロットの過去を知っていたことである。


 そして、それを使った。


 最初は些細な会話だった。


 デュポア王国の話。


 留学時代の話。


 ケント王子の話。


 笑顔で交わされる、社交界ではよくある会話。


 だが、少しずつ言葉が鋭くなる。


 ケント王子はとても優しい。


 自分との婚約を喜んでいる。


 シャーロットが留学していた頃の話も聞いている。


 そこまでなら、まだ耐えられた。


 最後の一押しをジュリアがした。


 自分はシャーロットとは違い、きちんとケント王子に選ばれた。


 そう受け取れる言葉だった。


 シャーロットが切れた。


 声を荒らげた。


 会場が静まった。


 その瞬間、形勢が決まった。


 少なくとも、表面上は。


 ここはモリア王国である。


 ジュリアは客。


 フラン王国大使の娘。


 その客に対して、王女が公衆の面前で感情を露わにした。


 事情を知らない者から見れば、モリア王女の失態である。


 そして、外交の世界では事情を知っていても、表面上の形が重要だった。


 外務大臣アラン・ロッシ伯爵も、その場にいた。


 五十九歳。


 長年モリア王国の外交を担ってきた男である。


 彼ほどの人物でも、すぐには動けなかった。


 王女の失態を外務大臣が勝手に処理することはできない。


 シャーロットに謝罪させるのか。


 ジュリアを咎めるのか。


 フラン王国大使へ抗議するのか。


 本来なら国王の判断が必要だった。


 だが、その場で一人の若い男が動いた。


 マイケル・ロッシ。


 二十歳。


 アランの息子であり、自身も男爵位を持つ若い外交官だった。

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