三話 魔力失調症
戻ってきたイーズの背に村長が乗っていた。
いいなぁ。僕も乗りたい。
「なんか、これ持っていけって言われたんだがよ」
ストップウォッチのような小型のメモリがついたものを、村長が見せてくれた。
「さっきのより細かい魔力測定魔道具だ。まだ俺らはそっちに入れねぇから、代わりに測定してくれ」
使い方は村長に説明済みだとイーズが言ったので、さっそく空島から一歩外に出てみる。空島と僕らの山の境界は、土の色が違うのでわかりやすい。
カチリと村長が魔道具の上部ボタンを押した。すると針がピコンと動いて止まった。僕らも魔道具を覗き込んでいたけど、それきりメモリの針は動かない。
しばらく様子をみて黙っていたけど、飽きてきたよ。
「ねぇ、次なにするの?」
「なんもしねぇ。そろそろ一時間くらい経ったか。戻るか」
よくわかんない。
村長についてまた空島に戻る。
「お、動いた」
空島に入ったところで村長が声を上げた。僕も魔道具を再び覗き込む。メモリの針がさっきより一つ下がっていた。
「どうだった?」
僕と同じく待ちくたびれたのか、急かすようにイーズが村長に聞く。
「どうやら空島の外は、魔力の放出がないようやわ」
「本当か?」
「これわしの魔力値なんやろ?向こうで測ったときには動かんかったが、こっちに入ったら減ったわ」
「念のため他のやつも確認してくれ」
「なら青やな」
うん。正解。僕はじっとしてるの苦手だからね。
青が外に出て試している間に、僕は村長に魔力と『気』について報告した。というか、青が書いたメモ帳を渡した。
「へぇ、そうなんか。わしもその魔法の棒、使ってみたいのぅ」
「僕が教えてあげるよ!」
僕が着火の魔法を実演して見せると、村長もさっと魔法を使った。
「んー、『気』を使ってるのはわかるんだが、それに火がつくのがよくわからんわ」
「それはね、空島マジックなんだよ」
「太一、なにそれ?」
「おかえり、青。どうだった?」
「村長と同じだった」
村長が青から魔道具を受け取り、城に戻ると言うとイーズもついていくと言った。
「だから今日はお前らの相手はできねぇ。また明日な」
「わかった。じゃあまたね!」
僕と青は素直に村に戻ることにした。これから村のみんなに報告しなきゃいけないし。魔法を見せられないのが残念。
案の定、戻って報告をしたら、魔法を見せろと盛大に文句を言われた。空島じゃないと無理でーす。
明日はみんなついていくと騒いでた。大人数で行って大丈夫かな?
「外から見てれば問題ないだろう」
青の提案にみんな不満そうだ。魔法を見るだけなら、空島の外から見えるけど、魔法は使えない。
爺婆だって魔法が使いたいよね。村長の手腕が問われるね、この件は。たぶん明日は無理だろうけど。
僕は報告を終えると、家に帰った。玄関を開けると、直ぐにみかんが、シッポふりふりやってきた。
「ただいま、みかん!」
「フガッ」
「えっ?ああ、マーガレットの匂いか。そんな嫌そうな顔しないでよ。マーガレットはイイコだったよ」
「ニャー」
「そんなことよりご飯?あれ?ばあちゃんいないの?そういえば集会所でみんなと盛り上がっていたね」
僕はみかんのカリカリをお皿にいれてから、すでに作ってあった晩ごはんを、レンジで温める。今日鯖の味噌煮とほうれん草のごま和えに豚汁。僕、豚汁大好き。
レンチンの合間にテレビをつけてニュースを見る。昨日の地震についての情報を聞く。したの町でもけっこう揺れたけど、道路の陥没とか水道管破裂とかは起きなかったみたい。よかった。
ニュースで気象庁が、地震の原因を調査中って言ってた。今回の地震は海底プレートとか関係しないから、わかんないと思うよ。空島の落下が原因なんだから。
夕飯を全部を温め終わる頃には、ばあちゃんが帰ってきた。家族か全員揃ったのでいただきます。みかんも僕らにあわせて食べ始める。
「太一、今日の修行終わっとらんやろ?」
「うん。あとで青と組手するよ」
「ちいっとでもやっとくんだな。体動かさんと錆び付くかんね」
「はーい」
学校の登下校で登山してるんたけどな。あれは運動に入らないみたい。
「魔物いたら倒しといてな。肉うまいらしいから、解体までよろしくな」
「……はぁい」
夜の薄暗い中の解体って嬉しくないね。魔物に出会わないようにと、祈っとこう。
ご飯を食べ終えると、組手の後にやる鍛練の武具を持って、青の家に。なんか珍しくみかんもついてくるみたい。魔物の肉につられたのかな。
「あーおーくん!しゅぎょーしよっ!!」
青の家の広い庭から声をかけると、サッシがガッと空いてプンプンと怒った青が出てきた。
「太一、いつまでその呼びかけ使うの?小学生かっ!」
「いいじゃん!まだ中学生になって2ヶ月だし。そんなことより、はやくしろってみかんが言ってる」
「みかん連れてきたのかよ。今いく、ちょっと待ってろ」
青は早めに戻ってきた。背中には小太刀、上着の内側に複数のクナイ。
「魔物にあったら解体までしてから、人呼べって言われちゃった」
「ま?やりたくねぇ……」
「じゃあ、青も神社で拝んでからいく?」
「……いく」
二人で山の上にある神社に向かう。その途中で、ピタリとみかんが歩みを止めた。みかんの視線の先に、何かが潜んでいるのに僕は気付く。
「参拝が間に合わなかった。魔物かな?」
「僕、一応拝んできたんだけど……。みかんの食欲のほうが強かったみたい」
「ニャー!」
「さっさとやれってか?しっ!」
青が何か潜む藪の中に、クナイを連続で投げ込む。僕は小太刀を引き抜き、藪に突っ込んだ。
藪の中には角つきウサギが、クナイに刺され動けなくなっていた。
やっぱりウサギか。角以外普通のウサギよりちょっと大きいだけだ。僕は小太刀でウサギをさくっと仕留めた。
「ウサギでよかったね。熊とか鹿だったら、解体面倒だったよ」
念のために持ってきたナイフで手際よく血抜きをし、内臓を取り出す。まってましたと、みかんが内臓をハグハグと食べ始めた。
「みかん、さっき晩ごはん食べたばかりだよ。ふと「フギャ!」う、痛いよ」
シュババッと高速猫パンチが、僕の足に炸裂する。優しさなしのパンチだから、爪が当たって痛い。
「皮と角はどうする?」
「もちろん、とっておくよ。冒険者ギルドに買い取ってもらうんだ!」
「あるのか?冒険者ギルド。確認してないけどな。まぁいいか。とりま、さっさとお参りして修行やって帰ろう。また要らん魔物に遭遇したくない」
「ラジャー、ラジャー」
「了解は一回」
「はーい」
神社でお参りすんだら、いつの間にかみかんがいなくなっていた。用済みってことだね。ばあちゃんにウサギ肉を渡してから、境内で組手を行う。いつもは山の中でやるんだけど、魔物に会いたくないので。
素早さは僕のほうが上だけど、パワーでは青に負ける。僕が素早く死角から突っ込む。するとわざと隙を作っていた青が、防御からの肘払いで僕をなぎ払う。
吹っ飛ばされた僕は、空中でくるくると回転して勢いを殺し、すちゃっと着地。が、直ぐに後ろに飛んで、放たれたクナイから身をかわす。
「ずるいよ、青!組手だったじゃん!」
「組手は終わりだよ。もう一時間経ってるぞ」
「もう?じゃあ、武器ありありで!いざ勝負!」
「おう!」
組手とあわせて二時間動きまくり、やっと休憩がてらの瞑想タイム。『気』をゆっくり廻らしながら、己の気配を断っていく。
隠形術のひとつの呼吸法は、爺婆たちに到底及ばない。自然と一体となるべし。なるべし。
どのくらい経ったのか。隣にいるはずの青の気配が揺らいだ。
「太一、終わりだよ」
「うん。お疲れ、青」
「お疲れ」
さて明日も魔法だ。楽しみだな。おやすみなさい。
今日は学校から帰ると、わらわらと集まった爺婆たちに拉致られ空島へ。村長と吉爺は朝から向こうにいっているみたい。
いつもの牧場に近付くと、高さ五メートルほどの城壁が境界線に建っていた。
昨日はなかったのに。恐るべし魔法。
そしていつも出入りしているところに小さな門と呼び鈴があった。僕は鈴の舌を掴んでチリンチリンと呼び鈴を鳴らす。
「どなたですか?」
扉の向こうから知らない声が聞こえてきた。
「僕、蛍村の太一です」
そう答えると、門がさくっと開いた。
門を開けてくれた人は、皮鎧を着たガッシリとしたおじさんだった。腰に差しているのはたぶん両刃の長剣。
「よっ、よう。凄い大人数だな」
おじさんのとなりには見慣れたイーズがいた。イーズは僕の後ろにいる爺婆を見てギョッと驚いている。
爺婆あわせて、総勢二十六人。ばあちゃんなんて、みかんまで連れてきてるし。
「こんにちは。みんな彼がイーズだよ」
「「「「「こんちは!」」」」」
「こんちは。さすがに全員入れるかは聞かないとわからんな」
「やっぱりだめかぁ。お互いに一歩づつなら、問題ないと思うんだけどね」
「その一歩がずるずると伸びていくのが、わかってるからだろう」
「面倒くさいね」
「太一、ほら」
くいくいとばあちゃんが、僕のリュックを引っ張る。わかってるよ。
「えっと、イーズ。みんなに魔法を見せてあげたいんだけど、いい?」
「構わねぇが。先にコイツを紹介させてくれ。今日から門番になったスコットだ」
「スコットだ。よろしくな」
スコットさんの差し出した、ゴツゴツした分厚い手を握る。僕らは爺婆も含めて自己紹介したけど、たぶん覚えきれないよね。
僕と青が親善大使なので、僕らは少なくとも覚えてもらおう。
「門番はもう一人いるんだが、今はいないから今度挨拶させるぜ。
あとこれをやる。門の横に小さな穴があるだろう?その玉を持ったままあそこに手をいれて、玉を見せる。今日は初日だから声で門を開けたが、身元確認してから、開けるようにする。その玉が仮のおまえらの身分証がわりだ」
「呼び鈴ならしてから、あの穴にこれ持ったまま手を入れればいいんだね?」
「そうだ」
「わかった。次からそうするね。それで魔法いい?」
無言の爺婆の圧を受けて僕は再度ねだる。
棒、プリーズ!ギブミー、棒!
「おまえ魔法好きだな。ほいよ。本当は門はすぐに閉めるのが規則だが、今日だけはちょっとだけ開けといてやる」
「ありがとー!イーズ、大好き!」
僕は棒を受け取ると、意気揚々と着火の魔法をつかう。
「「「「おお!」」」」
門越しにそれを見た爺婆たちが騒ぐ。
使える魔法は二つしか知らないので、水を出す魔法は青に譲った。
「村長め、さっさとわしらを入れる交渉しろってんだ」
「んだ。今日は駄目でも、明日には入れるようにしてもらわんとな」
みんなが殺気だっているので、ちょっとだけ怖い。村長、頑張って!
「そろそろ門閉めていいか?」
イーズの一言にしょぼんとする爺婆たち。
「太一、ノートの質問ちゃんと聞くんだぞ」
「……頑張るよ」
無情にも門は閉められた。
少なくともひとつくらいはノートの質問聞いておかないと、僕たちも危ういかも。
「そんで今日はどうする?」
イーズにそう聞かれたので、さっそくノートをリュックから取り出す。
「えっと、冒険者ギルドってあるの?」
「冒険者?なんだそれ?ギルドは商業、薬師、ハンターの三つだな」
「ハンター!それって、倒した魔物の素材を買い取ってくれるところ?」
「ああ。いろんな素材採集の依頼を出しているからな」
冒険者ギルド改めてハンターギルドかぁ!あるんだ、やっぱり。
僕は興奮してピョンピョンと飛び跳ねる。
「僕、そこにいきたい!青、昨日はぎ取った素材持ってきてる?」
「太一、落ち着け。持ってきてるから」
だってハンターギルドだよ!子供の僕らが行ったら、荒くれ者に絡まれちゃうのかな?
「んー、まぁいいか。もともとハンターギルドは、領で管理してる訳じゃないしな」
「やったぁ!青、ハンターギルドだって!」
「だから落ち着けって……ん?もしもし?
山爺?山爺携帯持ってないから、捕まらない?さっきまで一緒にいたよ。連れてこいって?なるはや?わかったよ。じゃあね。
なんか村長が城に山爺を連れてこいって。太一、山爺連れてきて。俺はイーズと話があるから」
……ハンターギルドは?わかったよ、山爺が先ね。ばびっと連れてくるよ。
僕は門から出て、村に戻っている爺婆軍団に向かって走り出した。
しかし、空島で携帯つながるんだね。衛星使っているからかな。衛星で画像はとれないけど、電波は通じるって。空島って不思議。
これは後から聞いたのだけど……。
空島はもともと空に浮かんでいた島。空には空飛ぶ大型の魔物が、たくさんいるんだって。なので認識阻害の魔道具が、空島全体にかかっているんだって。
逆に空島を認識した、蛍村の人たちがおかしいと言われた。
そう男爵に言われたので、吉爺が念のため昨日腹心の部下を村に連れてきた。村の大樹があるところから、空島ははっきり見えるんだけど、その人には普通の山林しか見えなかった。
空島だけじゃなくて、蛍村マジック?
「いた、山爺!ご指名だよ!」
僕は爺婆の集団に追い付き、見事山爺をゲットした。山爺はうちの村の唯一のお医者さんで、気功の達人でもある。
山爺とシュタタと早駆けして、門に到着。さっき貰ったばかりの玉を見せて、山爺も特別ご招待なので、一緒に空島にイン。
そのまま牧場で待っていたイーズの背中に山爺を乗せ、僕らは併走し、城に向かった。
城の手前には街があって、それなりに人通りがある中を僕らは駆け抜けた。
ああ、ゆっくり街を見たかったな。ハンターギルドはどこですか?
イーズがめっちゃ焦って駆けているから、言い出せなかったけど。今度ゆっくり見せてもらおう。
街の前には村長と吉爺、それ男爵さんが待っていた。
「すまんな、山爺。ちょっと病人を診てもらえんか?」
「いいぞ」
「男爵、案内頼む」
「こっちだ」
男爵さんに連れられて、ぞろぞろと城内を歩いていく。お城自体は夢の国の煌びやかなお城とは違い、実用的な石造りのお城だ。
まだおやつの時間くらいなので、明かりをつけていないようで、日の光だけだとちょっと薄暗い。僕らは暗闇の中でも普通に見えるので問題ないけどね。
小さめでもお城なのでそれなりに歩いた。廊下でメイドさんっぽい人や、男爵夫人っぽい人とかとすれ違うたび、僕らの行列は伸びていく。
なんでみんな並んでついてくるの?
そう聞こうとして後ろを振り返ったんだけど、青に黙ってろと言われたので、しぶしぶ前に向きなおった。
「ここだ。ラスティ、入っていいか?」
男爵さんにがドアをノックして、そうたずねると「はい」とか細い声が返ってきた。
今までに通ってきたどこよりも、この部屋は日が入っていてとても明るい。窓際に置かれた大きめのベッドに、男爵さんと同じ水色の髪の少年が寝ていた。
少年は僕らと同じくらいの歳に見える。だけど、げっそりと痩せ細っていて、なんかつらそうだよ。
「ラスティは私の息子で、魔力失調症だ。症状が出始めたのは、七歳くらいからだ。
その歳に魔法を習い始めたが、今まで魔力不足になったことはない」
男爵さんは少年の頭を撫でながら、山爺に説明した。
「ちょっと診ていいか?」
「お願いする」
山爺は掛け布団をはがし、腹部に手を当て瞑目する。
外気功で山爺の『気』をラスティくんに流しているみたい。少しだけラスティくんの顔色がよくなった。その変化にみんな気がついたみたいで、期待に満ちた顔で山爺を見つめている。
「ふむ。話に聞いていたが、青の推測通りだな。『気』が滞っている。
どうやら左腹部の『気』の道が細くなっていて、うまく体中に『気』がめぐらないようだ」
「治せるか?」
「ここでは無理だな」
山爺の断言に、男爵さん達の表情が暗くなる。
「……やっぱり駄目なのですね」
ラスティくんは目を閉じて、か細く呟いた。何もかも諦めたような呟きだった。
「そんなの駄目だよ!諦めちゃ駄目だ!山爺なんとかならないの?薬草とかは?」
「おいおい、太一。ここでは無理だが、村ならなんとかなるだろうよ」
「……っ!!山爺、言い方!なんだよ、そのひどい言い方!」
「青まで怒らんでもいいじゃないか」
怒るに決まってるよ!全員めちゃめちゃキレてもおかしくないくらいだ!ラスティくんなんて絶望してたよ!
例外は村長と吉爺くらいだ。二人とも、最初からそうではないかと思っていたんだって。
「細くなった道へ、カテーテルのバルーンのように『気』を少しずついれて膨らませて広げる。外部から毎日少しずつ『気』を入れる必要があるな。
この空島は勝手に『気』が抜けるらしいから、ここではそんな繊細な治療は無理だ」
説明し終えた山爺に村長がすげなく「最初からそう言え」と叱る。
「はい!僕もそう思います!」
山爺は普段あんまりしゃべらないから、いけないんだ。僕が毎日話しにいったほうがいいのかな。
「カテーテルやバルーンはなんなのかわからんが……治せるのか?」
また期待を裏切られたら…と、半信半疑な男爵さんが山爺に聞く。
「たぶん。初めてのケースだからな。少なくとも今よりはずっとましになるはずだ。どうする?」
そう山爺に聞かれても男爵さんとラスティはすぐに答えない。
「可能性があるのならやるべきです」
代わりに答えたのは綺麗な金髪の男爵夫人っぽい女の人だ。
「初めまして。私はラスティの母のミーシャと申します」
ミーシャさんは僕らに向かって、綺麗なお辞儀でして挨拶してくれたの。僕もペコリと頭を下げて、自己紹介した。
「いままでよくなるとおっしゃってくださったお医者様はいませんでした。ぜひ治療をお願いします」
毅然とそう言い切ったミーシャさん。
「任された。それでいいのかな?」
山爺が男爵さんとラスティくんに再度尋ねた。
「……お願いします」
「ラスティを頼みます」
二人とも同意してくれた。よかった。
それから村長と男爵さんの話し合いが始まった。今まで空島から日本に越境禁止だったからね。ラスティは特例とすることになった。
面倒だね。出入りみんなオーケーにすればいいのに。だいたいラスティくんをあまり知らない僕らに預けるんだよ。それなのに規制するの?
むくれながら僕がそう聞くと、村長が少し困ったように笑った。
「いずれはそうするつもりだ。段階を踏んでいくんだよ」
とりあえず村で療養するので、付き添い人は一人まで。スマホが使えるので、家族とは映像でやり取りすることになった。毎日お見舞いに大勢で来なければ来てもよいというレベルまで条件を引き下げた。僕のごね勝ちだ!
せっかく近くに家族がいるんだもの。会いたいときに会えないとね。
今日から早速ラスティくんは村で療養する。その準備でメイドさんたちがバタバタしてる。
そんな慌ただしい中、ひっそりと爺三人でこそこそ何かを話し合っている。
「ある意味今回の件で親密度が上がり、脅威度は減ったね」
吉爺が満足そうに頷く。
「すんなり息子を預ける……よくその気になったな。いい度胸だ」
「わしの人徳だろう。それより、報酬として牧場までの入場権と魔法棒を全員分獲得したことを、みなに教えてやらんとな。本当は冒険者ギルドまでがよかったのだが……成功報酬にすればよいか」
「あ、冒険者ギルドはないって」
「なんだと?!」
がっくりと肩を落とす山爺。
「ハンターギルドならあるって」
「太一!」
ふふん。さっきのお返しだよ。
今日はラスティくんと一緒に、全員村に戻ることになってる。だからハンターギルドは明日だね。楽しみだ。




