世界一のバカ
かなり奇妙な場所だった……人間の世界とほとんど同じだったが、そこには神々が暮らしており、ある神が反旗を翻すまでは、彼らは調和して共存していた。
「俺は……生命の神、アルキス・デムスだ。お前がミクロフを引き留め続けることを許すわけにはいかない。お前の気まぐれは度を越しており、神々の唯一の掟である『人間の生活に干渉してはならない』さえも無視するに至っている」
「え? そんなこと、私が気にすると思う? ミクロフがそばにいてくれる限り、私は好きなようにやるわ」
「忌まわしい女よ、お前の力は永遠には続かない。それを覚えておきなさい……」
メガミは瞳をハートの形に変え、体から大量のハート型の胞子を放出し、その場を埋め尽くした。それらの胞子は、反旗を翻そうとしていた神々の行動を改めさせ、やがて彼らを女神の『愛』に溺れさせ、よだれを垂らすほどにさせた。
「そう……これからもずっと、このように私に服従し続けて……さもないと、あなたたちを『ブラックサイト』へ連れて行かなければならないわ。そこは、私の言うことを聞かない邪悪な神々を送り込まれる場所よ」
瞬く間に、女神の力の前では、その支配下にあった者たちは皆、ひざまずいた。
その時代に生まれた女神には、ただ一つの目的しかなかった。それは、人々に愛を感じさせることだった……。しかし、その愛は彼女自身の唯一の欲望となり、すべては自分のおかげであり、他の誰の功績でもないと思い込むようになった。ある人間がその傲慢さを打ち砕くまでは……。その人間は、調和して暮らしていた他の神々を前にして、彼女の力を濫用し、彼女を堕落へと導いた。
「えっ?ミクロフがもっと愛を求めて来たの…?なんて優しい男の子なんだろう」
「はい、女神様。報酬をいただければ、何でもします」
ミクロフは、貪欲に駆られ、女神の力の支配下に置かれたまま、そう叫んだ。
「さて……人間界をちょっと覗いてみたところ、転生させたいと思う人物が一人いるようだ。ごく普通の高校生で、内気で優しい少年……私にとっては完璧だ。私がこれほどまでに憎んでいるあのガキの末裔たちに復讐する時が来た」
「よし……彼の愛のために、彼を殺してやる。そして、あなたの愛も……」
《……見ているぞ……》
俺は何事もなかったかのようにヒカくんへ歩み寄ったが、彼はただ嫌悪の眼差しを向けて、私から離れていった。
「え?」
(ちくしょう、ヒカくん。あの申し出を受け入れたのは自分自身の責任だ。お金を分け合うことになるかもしれない。彼にそう伝えたほうがいいだろう)
「どうしたの、ヒカくん? 俺が金を独り占めすると思って、引いてるの?」
「そういうことじゃない。ただ、君があんな風に辱められるのを見るのが嫌だっただけだ」
彼は嫌悪感に満ちた表情でそう言った。
「報酬には、それ相応の代償があるものだよ、賞金は均等に分け合うと約束するよ」
「ああ……わかった。もしあの山田が約束を守らなかったら、お前のケツを思いっきり蹴り飛ばしてやる」
「彼は約束を守ると思うよ。あいつの目を見れば分かる。自分より上の相手を恐れている目だ」
「え?」
「何でもない」
(ゲームの中の「カカマダ」……そう……そう呼ぶことにしよう……彼は誇り高くナルシストな少年だったが、山田グループのリーダーである父親は、彼が何かをうまくやれないと、いつも厳しく叱りつけていた。それはモモの人生にも似ているが、彼女の場合は単に父親がきちんと教育しなかっただけだった)
国語の授業が始まろうとしていた。その授業について特に言うことはあまりない。ただ詩を書いて、それをみんなと共有し、意見を聞くだけ……それは、同じテーマでありながら、かなり陰鬱なストーリー展開だったあるゲームを思い出させた。
そして、いつものように、不知火は最小限の努力で全てを完璧にこなしている。そういう人間こそ、俺が最も嫌うタイプなのだ。
「さて、放課後の活動の時間だ。ヒカくん、どの部に入ってるの?」
「ボディビル部だよ。もちろん、この腹筋はタダで手に入れたわけじゃない」
「もう一目瞭然だよ、変態」
(この男が本気でやろうと思えば、誰もが嫌うようなNTR物語の悪役になり得ることは間違いない)
休み時間、ヒカくんと静かに食事をしようとしていたところ、カカマダが僕を隅へ連れて行くよう促した……というか、「強制した」と言ってもいいかもしれない。そこには、廊下を通りかかっていた彼の『ももたん』がいた。
(どうしてあの男は、あんな子供っぽい敬称をつけたんだろう? せめて「くん」くらいにしておけばよかったのに……)
「まあ、物語のためなら、この屈辱も喜んで受け入れるよ」
「そう言われると英雄的に聞こえるけど、金のためなら何でもする欲深いバカに過ぎない」
その言葉は胸に刺さった。
カカマダと合流した時、彼はこう説明した。角まで歩いていき、偶然彼女とぶつかり、彼女は即座に俺を殺そうとする。その後、カカマダが現れ、彼の女神とぶつかったことを理由に俺を辱め、ボコボコにしてくれる。
「見事な計画だ。その場で待ってろ、彼女はすぐに来るから」
「ああ、そうか、素晴らしい計画だ」
(なんてクソみたいな計画だ。そして何より最悪なのは、神崎にもボコボコにされるなんて、彼の頭には微塵も浮かんでいなかったことだ。まあ、これが『愛は盲目』ってやつなんだろうな)
彼女が近づいてきたとき、俺は言われた通りにした。そして、なぜかうまくいっているようだった。
「これ、本当にうまくいくのかな?」
(今考えてみると、あのビッチが俺の策略に気づいて、計画を台無しにするかもしれない。でも、あいつはバカだから、問題ないはずだ)
遠くからカカマダの視線を感じた。本当に、俺はこの二人のバカを結びつけるしかないキューピッドになってしまうんだ。
「バカ! これ以上自分を辱めたいなんて、一体どういうつもりだ?」
「うわっ! 神崎さん、申し訳ありません! 俺は、あなたに触れる権利すらないただの豚に過ぎません!」
俺はできるだけ大げさに叫んだ。
(くそっ、カカマダ、さっさと俺を辱めてくれよ!)
案の定、計画は予定通り進んだ。次は、あのバカなカカマダがやってきて、また俺を社会的に葬り去ろうとする番だった。
「おい、ガキ。まさか俺の愛しいももたんに触ったのか?」
彼は拳を握りしめ、俺を殴ろうとした。
(よし、ガキ、お前の演技は最高だった)
「ねえ、他人のことに首を突っ込むなって言われてなかったの?」
「俺はただ、お前のためにそのガキを連れに来ただろ。人を拷問することなら、俺は本当に得意なんだ」
カカマダは誇らしげにそう言い、もう今すぐ俺を殴りたがっているのが見て取れた。
彼らは何か別のことを話し始めたが、どうやら誰が俺を拷問するかを決めているようだった。
突然、世界が数秒間止まった。
最初は何が起きたのか理解できなかった。
「え? どうしたんだ?」
(あのエラーが言っていたバグの一つかな)
反応がないように見えたカカマダの顔を触り始めた。正直、こんな時なら誰だってそうするだろうと思った。
「はっ……」
(みんなを路上に放り出して、トラックに轢かせてやる)
正直、自分が何を言っているのか分からなかったが、心の中では本当にそうしたいと思っていた。
「へへ、これで誰にも気づかれずに胸を触れるぞ!」
聞き覚えのある声が、力強い足取りで神崎の背後から聞こえてきたかと思うと、ある手が神崎の胸を包み込み始めたのが見えた。
(くそっ! 俺も同じことを考えたかもしれないが、ここまで卑劣な真似はしない)
俺はすぐにその変態に飛びかかり、胸に頭突きを食らわせて気絶させた。
「おい、クソ変態、何がどうなってるのか分からないが……」
「えっ……? これにはとても説得力のある説明があるんだ、カイト」
誰なのかは明らかだった。これほど平然とそんなことをできる、性欲しか頭にない変態な変態は、俺が知っている限り一人しかいない。中村だ。
「ロリコン」
「俺はロリコンなんかじゃない! それに、知っておいてほしいが、あの子たちはもう成人しているんだ」
(お前にとっては成人だろう、このクソ変態め)
「どうでもいい。責任ある市民として、このセクハラを何事もなかったかのように見過ごすわけにはいかない」
どれくらい殴り続けたかは覚えていないが、少なくとも10分間は絶え間ない悲鳴が響いていたはずだ。
「よし、それについて言いたいことがあるなら言ってみろ。あの汚い口で話すだけの尊厳がまだ残っているならな」
「わ、わかった」
私が浴びせた凄まじい殴打のせいで、彼は話すのもやっとだった。
俺たちは床に座り込み、俺はそのクソ変態を憎悪の眼差しで見つめた。
「変に聞こえるかもしれないけど……」
「女神は君に特別な力を与えた。ステータス画面のようなもので、自分の特定のステータスを向上させられるし、レベルシステムもあって、行動次第で破格のスキルも使えるようになるんだ」
「えっと……それは本当だけど……でも……私がそんな力を持っているって、どうして知ってるの……?」
「それは、何らかの形で転生した者なら誰もが持っているものなんだ。俺も持っているから、驚く必要はないよ」
(こいつもチートシステムを持っているのは明らかだった)
「でも……君はステータス画面を使っていないみたいだけど……」
「必要ないよ。そんな力で生活を楽にしようとするのは、無能で、落ちこぼれで、変態で、自尊心のない、ありふれた異世界ものの主人公だけさ」
俺の言葉は文字通り中村のプライドを傷つけた。変態が苦痛に歪んだ奇妙なポーズをとっているのを見て、そう感じた。
「そんな風に割り込んでくるなら、もう話さない!」
「でも、話さなければ、セクハラと年齢詐称で公に告発するぞ」
「降参だ!!!!」
変態は許しを請うために土下座のポーズをとった。そんな姿を見るのは本当に楽しかった。
「でも……一つどうしても理解できないことがある。俺だって自由に動けるんだ」
「たぶん、君がステータス画面のユーザーだからじゃないかな。」
「もしそうなら……」
最後の言葉は、スタンド使いの話で『ジョジョ』へのオマージュを込めたかったようだった
……3分間、気まずい沈黙が続いた……
「時間を元に戻して!」
「わかった!でも、さっきの姿勢に戻って。俺はもう行くから……」
「もし、あなたが生徒指導にセクハラをしたことを認めないなら、確かな証拠を添えて、特にSNSで公に告発すると約束するわ」
スマホに保存していた、俺が神崎の胸に触れている瞬間の写真を見せたところ、あの変態はすごく驚いた。もちろん、通報した後はその写真を削除するつもりだ。俺はあいつほど変態じゃないから。
(このテクニックを、俺は『高速撮影』と呼んでいる)
「わかった……どうせやるつもりだったんだろ?」
「ああ、やるつもりだった」
すぐに俺は元の姿勢に戻った。何が起きたのかについてはまだ疑問が山ほどあったが、事実として、あの無能な中村は「与えられた力」に屈してしまったのだ。ある意味、それは悪いことだ。もしかしたら、他の女の子たちにも同じことをしているかもしれない。次に彼がその力を使った時は、迷わず殺してやる。
「よし! じゃあ今回は、二人でこいつを拷問してやろう 」
それは神崎の声だった
「いいわね!あのガキには、俺のももたんみたいな相手に手を出さないことを学ばせてやるわ」
そう言って、カカマダは拳を握りしめた。
どうやら二人はすでに合意に達したようで、続いて顔や腹への蹴りの連打が浴びせられた。だが、さっき中村を殴って多少はストレス発散できていたせいか、不思議と耐えられた。
(この痛みは、長い目で見れば報われるはずだ……待ってろよ、クソ女神め!)
そう心の中で叫びながら、私は彼らに殴られ続け、ついに激しい打撃の連続で意識を失った。その直前に、俺は最後に『カイト』のことを思った。
『…… カイト……』
ここから、話は少し真剣な展開になっていきます……




