第七十六話 接触
「いくよ………」
シェランさんの呟くような声を合図に、私たちは動いた。
精霊さんの先導のもと、私たちは列になって進む。
先頭は精霊さん、その次にシェランさん、ダレフさん最後尾は私とリュトが並んで歩いている。
夜目が効き、気配に敏感なドワーフのダレフさんを先頭にしなかったのは、シェランさんがかたくなな態度で譲らなかったからだ。
私にもリュトにも、その理由がわからない。
だけど、ダレフさんも最後に渋々といった感じで了承していた。
先頭の精霊さんのボンヤリとした光りを頼りに、なるべく音をたてずに進んでいく。
私の前を行くダレフさんは、多少鎧が擦れる音はするものの、足音がほとんどしない、いや聞こえない。
私はシーフと言われる人たちの隠密スキルってこんな感じかなぁ、など思いながらダレフさんの足元を見ながら進んでいた。
そう思った矢先に、へ先のおれ曲がったランスが転がっている。
足元に石や礫が目立ってきた。
鉱物を含むそれは、暗い坑道の中でも鈍く光沢を放つ。
もうちょっと先なはずのに………
私たちが最初に襲われたところは、まだ先の方だった。
こんなところまでランスが届くなんて、やっぱり信じられない。
緊張と恐怖が同時に忍びよってくる。
先頭を行くシェランさんが振り向き、軽く頷き目線で私に合図を送る。(ついでに精霊さんも)
もう近い、いつランスが襲ってきてもおかしくはないと言っている。
そして心の内より、声が聞こえた。
“覚悟を決めろ”、と
私はシェランさんと私自身に頷きで返した。
そしてまた数歩、歩みを進める。
そのとき………
前を進むシェランさんの非常に近い位置で、
空間が破裂した。
一瞬、丸く、白いものが現れた。
そう思った瞬間、膨らました紙袋を叩いて破いたような音を何倍にもしたような音がしたかと思えば、そこから水の礫となって、襲いかかってきた。
「敵襲!」
シェランさんの声が響く。
そして、シェランさんはその場で中腰になり前を見据えた。
身を隠す場所などない。
そしてシェランさんは光苔の塊をネックレスのようにしてぶら下げている。
“私はここにいる”と言わんばかりに。
そして、またシェランさんの近く、そして少し高い位置に、真ん中が空いた白いモヤのようなものが現れると、先程と同じような音が響き、同時に水飛沫が襲ってきた。
「シェランさん!」
「大丈夫だ! 動くな! 仕掛けがバレちまう!」
飛んできたランスと思われるものが、坑道の壁か天井かにぶつかり、岩を砕く音が後方から響く。
シェランさんは変わらず中腰のまま前を見据えている。
だけど心なしか、シェランさんの手が震えているように見える。
震える手を震える手で抑え、前を見据えていた。
その姿を見て、私は自分の不安を捨てる。
覚悟は決まっていると恐怖を捨てる。
そして、私はシェランさんと同じようにランスが飛んできた方向に目を向けた。
ちょっと急に用事がいくつか出てきたので、投稿が遅れるかもしれません。




