第七十七話 闇に浮かぶ敵
私たちの視線を受けながら、精霊さんは進んでいた。
淡い光りをまといながら、前へと飛んでいた。
敵へと
そして、敵は精霊さんに対しても攻撃を仕掛けてきた。
的の小さい精霊さんは右に左に、上に下に飛び回り、敵を翻弄するように近づいて行く。
精霊さんに向けて放たれたランスが天井の岩肌を削り、その破片が私たちの所まで降り注ぐ。
「キャッ!」
私の声に反応したのか、精霊さんが振り向きこちらを見る。
その瞬間を狙ってか精霊さんに迫るランスの切っ先………
精霊さんは気づいていない、こっちを向いたままだ。
ーー時間がゆっくりと進む。
その時間の中でランスは精霊さんを確実にとらえていた。
“キノコが串刺しになる”
ランスを背にしたキノコ精霊、その姿を見れば誰もがそう思うだろう。
だけど、変な現象に気づく。
精霊さんに触れた部分、そこから円の形で精霊さんの姿が歪んで見えるのだ。
まるで、波紋のように………
ーー時間が戻る。
戻ると同時に精霊さんの姿があった場所の空間が弾ける。
そして、細かな飛沫が周囲に弾け飛ぶ。
そう、これが私たちの仕掛け。
私たちは薄い水魔法で近くに分身を作っていた。
水と氷を薄く重ねた鏡によって。
その鏡によって近くに分身を作り、正面には歪な水鏡で姿を消す。
精霊さん曰く“光りのクッセツ”とか言うらしい。
私にはよく分からないが、精霊さんは不思議な魔法を知っているようだ。
ともかく………
それで敵に近づき、正体を知り脱出を試みる、あわよくば倒す。
それが私たちの立てた計画だった。
だから、精霊さんの働き次第だったのだ。
精霊さんが倒れたら私たちも倒れる。
それが私たち共通の覚悟だ。
自分の分身が弾けとんだのを、精霊さんは近くで見ていただろう。
だけど、精霊さんは振り返ると、怯むことなく再び敵めがけて飛んでいく。
その中で、いくつかの飛沫が弾け飛ぶが、精霊さんはかまわず進んで行く。
そしてついに、キノコ精霊の光りは敵をとらえた。
精霊さんの光りに当てられた敵が闇に浮かぶ。
それは鎧を着ていた。
いや、装着という言葉の方が正しいだろう。
敵は全身をプレートアーマーと言われる金属の鎧で覆っていた。
「何故! 騎士がここにいる!」
シェランさんの声が響く。
私の横にいるリュトも「なんで………」と小さくつぶやいた。
私にはわからない。
騎士は王様と国を守る存在なのは知っている。
だけど何でここにいるかが理解できない。
それに………
「気をつけるんじゃ! ただの騎士ではない!」
ダレフさんの叫び声とその言葉に身構える。
その騎士のランスを掴む腕は変な方向に曲がっていた。
だがその騎士は腕を鞭のようにしならせると、ランスを変わらず信じられない速度で投げつけてくる。
投げられたランスはあっという間に通り過ぎ、遥か後方で岩を砕く音と共に、金属音を奏でながら消えて行く。
その金属音もまた闇に消えるが、その中から聞き覚えのある暗い声が坑道に沿って、私たちにまとわりついてきた。
「叛逆者を捕らえるために決まっておろう……… コホッ!」




