神殿にあった秘密
「おい、一瞬すぎるやろっ!俺にも、可愛い子ちゃんを愛でさせろ!」
スマートが、天を仰ぎながらツッこむ。
「いや、お師匠様の守備範囲広すぎでしょ。ダメです!近づけさせませんからね!」
「いや、もう猫だし…」
「うーん…プルーンさんが、美女になって元に戻ったということでしょうか。原因は、ダンジョンボスを食べたからなのか、あるいは…」
リノがぶつぶつ呟きながら分析する。突然、小走りでスマートに駆け寄ると、耳元で内緒話を始めた。
「お、お師匠さま、アレですかね?」
「アレだな、アレ。」
ひそひそスマートとリノがくっついて話す。その顔はなぜかニヤついている。
「王子さまのキスで…って伝説のパターンですかね?」
「いや、野獣が恋人のキスで…って物語じゃね?」
「確かアレは、男女逆ですが。はぁ…、ともあれ、レオさんも大変ですねぇ。」
「お前と違ってイケメンだから仕方ねぇわ。まぁ、顔面偏差値も頭脳も、天才スマート様の足元にも及ばねえが!」
「お師匠様性格と性癖はう◯こですが、他は認めます。」
「お前…なんか酷いな…」
スマートとリノの元に、プルーンを回収したレオが戻ってきた。
「プルーンは、人間だったんですか?」
「知らん!レオ君のが前から一緒におるやん。なんか知らんの?」
「いえ…僕もあの街で行き倒れてたプルーンを拾ったばかりでしたので…」
「俺と同じように、人間かもしれんし、猫が人間に化けたのかもしれへん。情報が少なすぎて、まだ分からんなあ。本人に聞くしかなぁ。」
「そうですね…ここはダンジョンですし、プルーンが覚えてないようなら、街に帰ってから話してみます。」
レオは、目覚めないプルーンを懐に入れ、一行はボス部屋の奥の階段を降り先へ進んだ。
レオと目覚めたプルーンは、この先で世界の秘密を知ることになる。
ダンジョン部屋の先は、神殿になっていた。
白くて重厚な均整のとれた造りだ。直線的な柱が何本も立っている。周囲は、何故か空があり、 風が吹いていた。
神殿の奥には、礼拝台があり、その前に立つと、ホログラムの様な髭を蓄えた老人が出てきた。
『我は、世界の理を記憶し管理している。魔法生成によるプログラムである。我の前に、語りを妨げる禁忌は存在しない。ここに辿り着いた何人にも質問回答形式で、我の力を開放するだろう。』
「魂とは何なのですか?」
レオが尋ねる。
『その者の存在する核となるもの。転生をしても、魂は引き継がれる。』
「魂を抜き取られることはあるのですか?」
『ある。魂は、肉体に入れることでその魂の持つ特性を新たに宿すことができる。魔力の高い魂は、力が強く利用されやすい。抜かれた者は、肉体のみ活動する傀儡の様な状態になる。』
「魂を抜くことができる者の条件はありますか?」
『魂に触れられるのは、神レベルの魔力を有するものになる。過去にも、多くの争いや有事に、神々に利用されてきた。』
スマートが聞く。
「神ってやつは何のためにいるんだ?」
『この世界にいる神様の存在意義について。この世界は死ぬと魂が迷いやすく、輪廻に行きづらい。地上の神とされる者は、信仰されることで、魂を集め送り出す、世界の装置である。』
『また、神は莫大な魔力を持っているが、自分のために力を振るう事はできない。生き物の信仰に起因する存在は、彼らのためにしか動けないのだ。』
ホログラム老人は告げた。
(レオの妹さんの魂は、どこかの神によって抜き取られたということね。)
問答が長くなり、子猫の本能かじっとしてられなくなったプルーンは、ホログラム老人のゆらゆら揺れる様子を見ていたら、突進してじゃれてしまった。
ホログラム老人からは、対猫に反応しないのか猫好きでないのか、無視されている。
そのうちレオに、抱きかかえられ止められてしまった。
その後は、スマートとリノはまだ聞きたいことがあるからとその場に残ることになり、レオとプルーンは先に帰ることになった。
「にゃー(スマート、リノさんまたね。)」
「お世話になりました。またどこかで。」
ホログラム老人が教えてくれた、ダンジョンの外に繋がる移転魔法陣の上から、別れを告げる。
「じゃ嬢ちゃん、レオ君またな!」
「お二人ともお元気で。」
魔法陣が発動し、ダンジョンの外に出ることができた。
「にゃー(あーやっと戻ってこれたね!10日ぶりだわっ)」
「あぁほんとに。プルーンもお疲れさま。」
「にゃ〜(私はレオ程戦ってないし大丈夫よ。ただ、柔らかくて暖かいベットで早く休みたいわ。)」
「そうだね、一旦街に戻って休もうか。街の賢者様への報告と、妹に関係する神を探さないとだ。」
「にゃ(ババ様からヒントもらえそうね。」
「ところでプルーン、ダンジョンボスを倒した後のこと、覚えてないの?」
「にゃーにゃ(んん?ボスから良い匂いがして、囓った気が…ん、何かあった?…そうか、スキル、何か覚えてるかも!)」
プルーンは、スキルリストを念じる。
【スキル】
猫魔法:猫の体を媒介として使用できる魔法。
ライトニング Lv 10、浄化 Lv 7、ブリザードLv10、マナクリスタル生成 Lv 5
ドレインにより得たスキル
突進Lv10 物理魔法耐性強化Lv5 攻撃力強化Lv7 防御力低下Lv7 浮遊Lv8
【固有スキル】
防虫効果 念話 サイボーグ化
【固有ステータス】
神様の加護、ドレイン
「にゃ?!(スキルのサイボーグ化って?!)」
得体の知れない固有スキルが加わっていた。
プルーンは、サイボーグ化を念じてみる。
「にゃー!(ちょっと新しいスキル試してみるわ。サイボーグ化発動!)」
すると、プルーンの右前足が光り、青紫色のハサミの形に変形していた。
「これは…ダンジョンボスの左腕に似てるね…」
レオが引き気味に呟く。
「にゃ…(うぇ…気持ち悪い…)」
サイボーグ化ということは、身体を武器に変えるということだろうか、とプルーンは思う。
試しにハサミ状の前足を動かしてみる。
ギュイィィンガガッ…バサバサバサ…バタァン!
前足が伸び、10m程離れた木を巨大化したハサミが切り倒す。
「にゃ(すごい威力…)」
「プルーン…」
レオはちょっと冷や汗をかいてそうだ。
スキルを解除すると、元のもふもふで肉球付きの前足に戻った。プルーンとレオは一先ず安心した。
そのままでは、動物愛護団体やモフモフ愛護団体などから苦情が来そうな見た目だったのではと、プルーンは思う。
「でも武器が増えて良かったんじゃないかな?プルーン、落ち込むことはないよ。」
そう言ってレオは、プルーンを撫でてくれた。
そして一人と一匹は、街までの帰路に着くのであった。




