その9
7月13日
村を出る前に、お茶に誘われた。せっかくなので親交を深めようと思ったが、彼らの興味を引いているのは私の後ろを歩くルチアらしい。
他にも卵から孵した不死鳥がいることを伝えると、彼らは目を輝かせた。
「卵を孵化させたんですか! 同じですね」
と言うので何を孵化させたのかを聞くと
「大きなトカゲです」
エリマキトカゲとか、あんなのを想像したのだが、実物を見せてもらって絶句した。
知識がないということは恐ろしい。
大きなトカゲの正体は、恐竜だった。
不死鳥と生活を共にするのは私ぐらいなものだと思っていたが、上には上がいたらしい。
恐竜は、いくら懐いていても無理だ。
人の頭と同じぐらいの大きさの卵を孵化させようなんて、よく思ったものだ。
7月16日
ギルドに帰って、山積みになっていた懸賞金のかかっている紙を張り出していったのだが、その中の一枚を見て噴き出した。
あの限界集落に居た料理人に懸賞金がかかっていた。
それも、かなりの額だ。
どんな極悪人だと詳細を見てみると、彼は元々アカデミーの教師で、生徒たちが居場所を探しているらしい。
とりあえず、そのことを彼に伝えるべく手紙を出すことにした。
7月18日
このギルドの中で、お色気担当は誰だという話題が盛り上がっているらしい。
それは分かったが、ギルド内でミスコンするって正気か、お前ら……
珍しく、深刻そうな顔をしているから何だろうと思ったらこれだ。
7月20日
ミスコンが開催されるのはわかった。けど、何で私まで出場しなきゃいけないんだ。
水着審査?
ぺったんこの私に死ねと言うのか。
7月21日
ベベちゃん3歳。道端で転んで鼻血出したので、応急手当てをするためにギルドに連れて来られたけど…
ほんと天使。
社会の荒波に揉まれて、擦れた心が癒される気がする。
7月22日
岩清水さんが来店した。
「干していた下着を盗まれたのよ!」
盗人には死が相応しいわと、物騒な事を言う。
丑の刻に釘を打ちそうな勢いだったので、岩清水さんから購入したとっておきの茶を出して懐柔した。
なんとか、なだめることに成功したが、
「あら、可愛い鳥と精霊ね!」
不気味な笑顔と、押さえきれない魔力……
いや妖力と言ってもいいかもしれない……
ルチルとララバイは彼女が去った直後に倒れた。
7月25日
下着泥棒が捕まった。
デブのハゲ中年男(犯人)が盗品のブラジャーをつけようとしているところを目撃した。
警察はどこですか。
8月2日
あつすぎる。
8月5日
廃墟の遺跡を発見した。涼しい!
未踏破の遺跡は本部に報告しないといけないんだけど、黙っておこう。
8月7日
生きる伝説と言われる魔法使いが凱旋した。
勇者が「興味ないの?」って聞いてきたので「おっさんには興味ない」と言ったら笑われた。
8月9日
風が強い。
トンプス山に雲がかかっているから、明日は雨だろうか。
8月11日
勇者が甥っ子を連れてギルドに来た。
外で泥遊びをしていたはずが、ふと外を見ると泥のゴーレムが出現していて、飲んでいた茶を吹いた。
剣と魔法の世界とはいえ、末恐ろしい子供だ。
虎の子は虎……
ということか。
8月12日
仕事の報酬として提示するものが本物かどうか、虚偽はないかを査定するのも大事な仕事だ。
本人は本物だと思い込んでいるものがいかに多いことか。
おかげでアイテム鑑定のスキルばかりレベルが上がる。




