09 首領太監・リンシ
――しかし、あの下女は一体、何者だったんだ?
手習い所での騒動の後、リンシはふと考えこんでいた。無理もない。なにせ、あのような物騒な事件を淡々と解決した下女――レイレイは依然としてこの後宮内では無名の存在だったのだから。
だが、このリンシという宦官もまた、随分と見る目のあるヤツだ。レイレイ――この新米下女はのちに、この後宮、否、この国の重要な事件に大きく関わることになる少女なのだから――。
宦官・リンシは、賢妃・コウリン妃の所属する紅玉宮に仕える特別なお方で、彼のように特定の妃に仕える宦官は首領太監と呼ばれている。要は、宦官の中でも位の高いお方という訳だ。まあ、リーダー的な役割ってコトである。
そして、そのリンシだが、なにやら今日は後宮内をウロチョロとしている。おや、偉い宦官としたことが仕事はどうしたと、そうツッコミが入るのも無理はないが、とまあ彼なりに何か考えがあるご様子。
「あの下女…レイレイにまた会わねば。彼女はきっと、優秀な人材に違いない」
独り言を述べる。
なんとまあ、そういう訳か。リンシの考えはこうだ。手習い所での騒動を解決したレイレイ。彼女にもう一度会い、コウリン妃の元へ遣わせる。とまあ、現代風に言うと勧誘――スカウトである。
すると、だ。
「あっ、リンシ様」
「って、君はっ…!」
噂をすれば――ってヤツだ。なんとまあ、タイミングの良いこと。ご都合主義っぽいのはラノベらしいったらありゃしない。ってこりゃまたなんとメタ発言。冷めるからこういうノリは止めるがよい。
とまあ、ひとまずさておき、バッタリと会ったリンシとレイレイ。二人の会話を聞くがよい。
「レイレイ…君を探していたぞ」
「奇遇ですね、リンシ様。私もその…貴方を探しておりました」
「そっ…そうだったか」
「ええ、当然です。なにせ、リンシ様なら私の能力を見抜いてくださると、そうお思いですので」
とまあ、レイレイったらまた、高貴な方を相手になんて調子の利いた態度。だがまあ、こういう性格が全く持ってレイレイらしいったらありゃしない。
どうやら彼女――レイレイもまた、あの事件の後、こう思っていたらしいのだ。物騒な事件を解決し、位の高い宦官のお目に留まればきっと――、
出世できるっ!! と――。




