08 魔法の実
「ほら小娘。俺の指紋やるよっ」
ックーー!! となる。ったく、態度の悪いこの宦官――チョウコときたら、間違いなくコイツが犯人に決まってるって感じの態度だ。コイツの指紋と先ほど筆から採取した指紋を照らし合わせば――、
「一致した」
意外とすんなり決着はついた。レイレイの採取した指紋とチョウコの指紋が一致し、犯人はチョウコで確定。だがしかし、まだ腑に落ちない部分がある。
ぬぬ~と、崩れ落ちるチョウコに、レイレイは問い詰め始めた。
「なあチョウコさん。アンタのやったことで間違いないって、これで分かったよ」
「…ああそうだよっ。俺があの女官を殺したんだっ」
「んじゃ、聞かせてもらおうか」
「んだよ…まだなんかあんのか」
ったく、なんかあるに決まってるじゃねぇかと、この分からずやの宦官に言って聞かせてもたぶん一生分からないだろう。なにせ、コイツは知らない。殺人事件ってのには、必ず犯人の動機が必要だってことを、だ。
「チョウコさん。アンタはなぜあの女官を殺害した」
「それは、だ…」
「それは…?」
「今はその…言えない…言ったら『あの方』に…」
「は??」
どういうことだ?? チョウコはなにやらまだ何か隠し事をしている様子だった。冷や汗をかき、目が泳いでいる。レイレイは困惑した。リンシもまた、ヤツの不自然な容姿に戸惑っているよう。
刹那、チョウコは何かをポッケから差し出す。
――無色透明な液体が入った小瓶と…何かの…木の実??
刹那、チョウコは不敵な笑みを浮かべた。って、コレはマズいっ!! コイツ…まさか、レイレイとリンシをこの場で殺す気だっ!! それで自分の犯行を帳消しにしようとっ!!!
と、誰もが思ったはずだ。が、しかし――、
「俺が毒でお前さんたちを殺すって…?? まだ俺がそんなことを企んでいるような顔に見えるか??」
「はっ…アンタ…まさか…?!」
「ああっ…俺はトンだ極悪人だよ。最期まで、な」
「ッバカヤロー!!」
レイレイは止めようとした、が遅かった。チョウコはその無色透明な液体――毒と謎の木の実を自ら飲み込み、そして――、
「嘘だっ…自ら命を絶つなんて…卑怯だろっ」
「レイレイ…コレは…」
動揺するリンシと、目の前で倒れ死ぬチョウコを前に、レイレイは冷静に事を説明した。
「アレはケシの実ですよ、リンシ様」
「ケシ…だと?」
「はい…アレはまあ簡単に言うと、『苦しまずに死ねる』。そんな魔法の実です」




