10 毒見役
――これはチャンスだ!
と、レイレイは思った。なにせ、このような高貴なお方――リンシの目に留まるという機会はそうそう無い。それに、レイレイはまだ後宮下女になったばかり。これは俗に言うスピード出世っていうヤツである。
「リンシ様…お願いですから、どうか私を雇ってはくれませんか」
「おっと。君とヤツはまた、なんとド直球なこった」
とまあリンシ、まさかのツッコミである。まあ、無理もない。なにせ、この新米下女といったらなんとまあこう何でもかんでも自ら進んでいこうと思えるのか、不思議でならない。いやまあ、こういうグイグイ行く系の性格であるから先の手習い所での事件を解決できたのではないかと、そう思えるのも確かではあるが。
「リンシ様…どうかお願いです…」
「ああ分かったよ。君を雇うよ」
「ほっ、ホントですかっ?!」
って圧に負けてんじゃんっ!! リンシよっ!!
とまあ、齢十四の純粋な好奇心とその煌めく眼差しを見てしまえば、誰だって彼のように肩の荷を下ろしてしまうに違いない。それに、このリンシという宦官は少女にはやたらと甘いのだ。
リンシに認められ、嬉しさで笑みを浮かべるレイレイ。だが、リンシにはまだ何か考えがあるよう。
「ああ確かに、私は君を雇う。ただし…」
「ただし…と、言いますと?」
「君には紅玉宮の毒見役となってもらう。よいな?」
「どっ…毒見役ですか?!」
そそ――毒見役。
レイレイが驚くのもまあ、無理はない。なにせ、毒見役ってのはな、簡単に言えば、だ。後宮内ではたびたび妃に恨みだの妬みだのなんだの、そういった悪い感情を持ったヤツってのが現れるもんだ。そんで、そんな妃たちを殺そうとたくらみ、ソイツらは妃の食事に毒を入れる。んで、それじゃ危険だ。じゃ、この危険を回避するにはどうしたら良いか。そこで彼ら――毒見役の出番ってわけ。
毒見役ってのは妃の食事を彼女らが食す前に先に味見し、その食事に毒がないかを確認する役職だ。って、ここで一つ疑問に思うかもしれない。じゃ、ホントに食事の中に毒があった時、毒見役はどうなるかって? そりゃまあ――、
「私、捨て駒ですか?」
「まあ、悪く言えばそうなるな」
ああ説明する手間が省けた。レイレイが先に答えが言ったよ。そう――毒見役ってのは所詮捨て駒。死んでなんぼの妃のオモチャである。




