52 Re:トンだ無礼者
コウリン妃の中にはジン国への恨みが残っており、その復讐心によって園遊会での殺人未遂に至ったと丁寧に説明するシードゥ妃。彼女の説明は表面上の聞こえは良いが、根拠としては弱い気がする。
が、しかし、この説明を聞き、レイレイは以前は考えもしなかったとある疑問を抱く。それは、そう――コウリン妃に隠された、まだ誰も知らない秘密であった。
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コウリン妃――彼女は一体、なぜ妃になる必要があったんだ??
レイレイは初めて、そのことを疑問に思った。いや、今まで別にそんなこと気にしていなかったし、当たり前とすら思っていたのだ。でも確かに、改めて思えば確かにそうである。シードゥ妃――彼女の暴論についてはあまり納得はいかない。だが、この疑問については純粋に考える余地があるのだ。
コウリン妃――彼女が移住先であるジン国の妃になる義理というのは基本的にない。なにせ、あの虐殺の中で生き残り、そしてある意味敵国側の妃に出世するってのは、あまりに急である。
確かに、先帝はまあ特殊性癖であり、かなりの美貌とたわわな果実を持つ妃に手を出すってのは一男としておかしくはない。が、そんな野蛮な男は病気で死に、晴れてコウリン妃は一時的に自由の身になったのだ。にもかかわらず、コウリン妃は続けて現帝の妃になることを選んだ。一体、それは何故――?
考えうる理由は主に二つ――一つは、にわかには信じたくないが、シードゥ妃の言う通り、コウリン妃自身がジン国への復習を望んでおり、妃という立場から国を亡ぼすことを計画しているということ。
そして、二つ目――これはあくまで侍女であるレイレイの希望的観測に過ぎないし、コウリン妃への忖度でもある。だが、これなら納得できるって説だ。その説とは――そう。コウリン妃は決して自らの意思で現帝の妃になることを望んだのではなく、誰かに仕向けられ、強制的に妃になった――という説である。
正直、前者も後者もそれを証明する根拠はない。だが、レイレイは感情論的にはなってしまうが、今までのコウリン妃の人としての優しさから、後者の説を推していた。
そうだ――コウリン妃――彼女って人は、侍女であるレイレイに対し、まるで友達かのように優しく接してくれた。そして、今も、だ。彼女は今、紛れもなく嘘のない顔で座っていらっしゃる。
「私は、コウリン妃を信じます」
無意識に口からこぼれたのは、レイレイ自身の感情。刹那、場は凍り付いた。
やってしまった――と、レイレイは思った。あの時と――手習い所の時と同じだ。このレイレイ――妃を前にして自分の考えを口に出してしまう――トンだ無礼者だ。




