51 疑問
園遊会で毒を盛った犯人がコウリン妃であると、そう断定するシードゥ妃。果たして、彼女は一体何をもってそう思ったのであろう。彼女の口から語られるのは――。
「まず、コウリン妃。貴方は我々がご存知の通り、西方の出身であり、当然、西方の国・バルーサの移民達が我が国・ジン国の人々に虐殺されたという歴史は知っているはず」
「…それは、そうです」
おいおいおい…一体急に何を言い出すかと思えば、やはりこのシードゥ妃ってヤツ、何かがおかしい。いきなりコウリン妃のトラウマに触れるなよと、レイレイはますます憤りを隠せない。
だが、今はこちらが憤っていても、ただ不利に動くだけだ。怒りたいのは山々だが、現段階ではシードゥ妃の話を聞くのが最善の策であるし、当然、それはコウリン妃自身も賢いので分かっているご様子。
それはそうとて、コウリン妃が犯人であるのと、西方の国の移民たちの虐殺の歴史の何が関連するんだよと、気になってしょうがない。シードゥ妃の話を聞けば、彼女の考えは分かるはず――だが――、
「コウリン妃…貴方は当然、ジン国の人々をどこか心の奥底では恨んでいるんでしょう?」
「…はい??」
「ええ…正直に言わなくても結構。だけど、歴史ってのは所詮そういうものなのよ。誰かが傷をつければ、傷をつけられた側の誰かには恨みだけが残る。そして、その恨みってのはやがて復讐心という聞こえの良いものに変わるの」
「……」
はっ?? と、レイレイは思った。シードゥ妃――こヤツは何かカッコいいことを言っているようにも聞こえる。が、これはあくまでただの思想論に過ぎず、全く根拠にはなっていない。彼女の口車に乗せられてはならない。コウリン妃――怯えてはいるが、何か言いたいご様子。
「その…シードゥ様。その考えはやはり虚勢のように聞こえますが…」
「いいえ、違うわ。確かに私の考えは少し根拠が弱いように思えるかもしれない。だけれど、貴方――コウリン妃。貴方はジン国の後宮の妃になり、内部から敵国を排除しようと始めから企んでいたんでしょう? そう――その美貌さえも美人計として使って、ね」
「……そんな…そんな訳では…」
って、このシードゥ妃ってヤツ――ガチでマジで失礼だろっ!! と、レイレイの憤りはとうとう限界に近い。いや、そりゃそうだ。なにせ、コウリン妃は決して、そんな平和への反逆行為でもするために現帝の妃になったのではない――そう――彼女は――、彼女…は??
刹那、レイレイの脳裏に、とある疑問がよぎる。いや、この疑問とは、今まで考えていなかった、とある疑問、だ。
――コウリン妃――この人は一体、なぜ妃になる必要があったんだ??




