47 アールグレイ
お姉さん気質で誰にも優しく接する藍玉宮の妃・アイリン。物静かでミステリアス、どこか冷たい様子を思わせる紫玉宮の妃・シードゥ。男勝りな性格でやや曲者である黄玉宮の妃・オウラン。そして、人見知りで心配性だが、幼くて可愛らしい紅玉宮の妃・コウリン。
後宮を代表する四人の妃が集まり、妃とその毒見役だけのお茶会が始まった――。
「今回は、アールグレイの紅茶を用意いたしました」
藍玉宮の毒見役が用意した紅茶が妃四人の洋杯に注がれる。アールグレイ――それは柑橘系の果実――ベルガモットの爽やかで華やかな香りがついた紅茶だ。味そのものに甘みはなく、紅茶のすっきりとした渋みやコクに、オレンジやレモンのような爽快な香りが合わさった味がするらしい。
残念ながら、貧しいレイレイはそのアールグレイとやらを飲んだことはないのだが、以前図説で紅茶の品種について勉強したことはある。なにせ、茶葉というのは効能によっては薬になるからだ。
「あら。アールグレイとは、センスあるね」
と、やや上から目線なオウラン妃。
「ベルガモットの香りが素晴らしいわ」
と、素直に褒めるアイリン妃。
「…美味しい」
と、シンプルな感想のシードゥ妃。
さすがは上級妃達だ。高級な紅茶の嗜み方っていうのを分かっていらっしゃる。が、対して、我が主――コウリン妃はというと――、
「あれ、コウリン? お前さん、まさかアールグレイの良さが分からないっていうんじゃないよな?」
「…はわっ」
硝子を手に持ちつつも、まだ紅茶には口を付けていないコウリン妃に迫るのは、男勝りな性格のオウラン妃。どうやら、彼女の圧力のある態度に、コウリン妃はややビクビクしているよう。冷や汗をかき、より一層茶を飲む手が進まない。
「なあ、コウリン。さっさと飲めよ」
「はっ…はい。ですが…オウラン様?」
「あっ??」
「その…私、甘くない茶というのが苦手でして…その、砂糖が欲しいですわ」
「なんだよ、それ? おこちゃまじゃあるまいし」
「…」
とまあ、なんてザマだ。見てられない。コウリン妃はどうやら甘いのがお好きらしく、果実本来の甘さを楽しむアールグレイは好みではないよう。いや、人それぞれ好みがあるってのは別に構わないのだが、茶葉本来の良さが分からないってのは妃としては致命的。それに対し、オウラン妃は強く責める。
「なあ、コウリン。アールグレイってのは、茶葉本来の味を楽しむもんだ。ほら、砂糖なんて入れちゃ、それが楽しめなくなっちまうだろう? 台無しなんだよ? 蛇足なんだよ??」
「ですが…私……」
「ああ? まだ言うか??」
って、なんかずっとギスギスしてる!! ったく、オウラン妃って人は全く、先ほどはコウリン妃の装いに対して褒めてくれてこの人は良い方だなあって少し思ったのも束の間、実はかなりの気分屋である。それはそうとて、この人――思ったことをすぐ口にしちゃう系なのかもっ!!!
――果たして、コウリン妃はこの状況、どう抜け出すっ??




