46 十人十色
――ったく、退屈だ。
後宮に戻ったレイレイを待っていたのは、またも退屈続きな生活だった。特に大きな事件が発生する訳もなく、淡々とスローライフは続いていく。
一方、紅玉宮の妃・コウリン妃の方には進展があった。彼女はその幼い様相から他の妃達からやや距離を置かれているのを気にしていた。それを解決するため、妃達と仲良くなりたいとも考えていたのだ。
そして、その解決方法として、今度、妃達とのお茶会ってのをやるらしい。どうやら、園遊会の時のように藍玉宮のアイリン妃としか話せない――なんてことにはならないように気を付けねばと、彼女なりに頑張りたいと思っているようだ。
しかしながら、コウリン妃――やはり年上のお姉さん達である妃達とおしゃべりをするのはやや気が引けるよう。やや人見知りで心配性の彼女なので仕方ないかもしれないが、それでも気合を入れなきゃならぬ。なにせ、妃同士で友好的関係を築くのはここ・後宮の環境を内部から整えるためにも重要なことなのであるから。
* * *
お茶会の当日――紅玉宮の侍女達はコウリン妃のことを心配していた。侍女頭のランランを筆頭に、侍女・リンファ、メイリン、そしてレイレイもまた妃の様子をうかがう。毒見役であるレイレイだけが今回のお茶会に妃達と同席できるのだが、その他にも藍玉宮、紫玉宮、黄玉宮に仕える毒見役の侍女達も一緒に来るようだ。同業者と出会うのは、レイレイとしては園遊会ぶりである。
「緊張するわ…」
「大丈夫です、コウリン様。ほら、深呼吸して」
「はい…」
お気に入りの可愛らしい衣を纏ったコウリン妃は、この衣装がお茶会に適しているのかやや気にしていた。西方では俗に蘿莉塔衣装風と称されるこの衣装は、コウリン妃のお気に入りの装いであったが、やや浮いてしまうのではないかという自覚はどうやら本人にもあったよう。
レイレイがなんとかフォローするが、コウリン妃は依然として不安な様子。どうしようと、レイレイが困っていた、その時――、
「おや、コウリン。なんだか随分と可愛らしい装いだこった」
「…っ、まあオウラン様。可愛いだなんて…その、ありがとう」
「良いってコトよ」
そうコウリン妃をサラリと褒めるのは、男勝りな性格の黄玉宮の妃・オウラン妃。彼女はコウリン妃とは対照的に、まるで宦官ではないかと見間違うほどに簡素な装いの服を着ていた。
いやぁ、一概に妃と言っても、ホント十人十色だなと、レイレイはそう思った。




