44 楽しい
――以前とあまり変わってない、な。
懐かしさに浸るレイレイの胸の内は、なんだかいつもよりも温かみに満ちていた。実験室に入ると、壁一面に棚があり、その中には山から集めた山菜やら毒草が沢山入っているのだ。
そう――この山菜や毒草、すべて、子供の頃のレイレイ自身が集めたもの。彼女はやんちゃで、よく山に遊びに行ったもんだ。そんでもって毎回得体の知らない毒草を集めては、よく師匠を困らせたもんだ。ただ、このやんちゃな彼女の趣味は良い方向にも進んだ。それは、彼女に知識を与えたこと。
レイレイは言わずもがな、薬の知識においてはピカイチ。そのあらゆる知識を用い、彼女は後宮でも数々の難事件を解決している。その知識はまさにここ・実験室での経験から得た。
「久しぶりに、実験するか」
レイレイは早速、昔のように毒草を取り出し、机に広げて実験を行う。そう――レイレイの実験とは、なにも習ったものとかではない。驚くべきことに、すべて彼女自身の独学である。
「ったく、ホントに実験が好きなんじゃな」
「ああ師匠。実験てのは、コツコツと無心になってできるから楽しいんだよ」
「なるほどな…お前らしい考えじゃ」
師匠と話しながら、レイレイは久しぶりの実験に取り掛かる。後宮ではこんなにも自由に実験をすることができなかったから、なんだかとても気分が良い。
師匠はレイレイがなんでそんなに実験が好きなのかとよく問いていたが、レイレイはいつもこう言っていた――実験はコツコツと無心になってできるから『楽しい』と。
いつも何にでも蔑んでいるように見えるレイレイから『楽しい』なんて言葉が出てくるなんて、驚きである。それはそうとも、レイレイは実験大好き変態毒野郎なのだ。ほら、今だってなにか毒草を引きちぎっては、笑みを浮かべている。
ああ楽しい…楽しすぎる…毒草をいじるのは楽しすぎて草だ。草だけに。




