43 孤児院
――久しぶり、師匠。
後宮でのスローライフに退屈していたレイレイ。意外にも早く約数か月ぶりに故郷・ガラン村へと帰ることができた。まあ、あくまで期限付きの帰郷ではあるが。
そして、彼女は自身が生まれ育ったとある孤児院へと向かう――。
「やあ、レイレイ。久しぶり」
「師匠、会いたかったです」
レイレイが師匠と称するその老婆――名をゼンリという。彼女はガラン村にある小さな孤児院・ガラン孤児院で身寄りのない子ども達を預かっては育てているのだ。まあ、この村ではとりわけ孤児が多いもんで。なにせ、村のすぐそばに花街があるもんだから、性病で親を亡くしてしまった哀れな少年少女達が多い訳である。
そして、かつてレイレイもそのような身寄りのない子どもの一人であった。彼女はこのガラン師匠に育てられ、孤児として育った。師匠は確かに師匠ではあるのだが、決して先生としての素質はなく、彼女の指導は余りにも優しい。だから、レイレイは良くも悪くも男勝りでやんちゃに育った。
「レイレイよ…その、後宮での生活はどうじゃ?」
「その…まあ楽しくやってますよ」
「そうか…それは、良かったな」
白髪の老婆はまるで孫にでも会ったかのように嬉しそうに語る。レイレイはというと、こっちもちょっぴり嬉しそうだ。そりゃまあ、久しぶりに育ての親に会えたのだ。嬉しくて当然である。
「ところで、師匠」
「なんだ?」
「その…久しぶりに、実験室に入らせて頂けますか?」
「…おりゃまあ。お前さんったら、まだ毒が大好きなんじゃな」
そう――レイレイが故郷に着き、最初に行きたい場所ってのは必ずと言って良い程決まっていた。だからあんなにも嬉しそうな顔をしていたのである。
錆びれた木造建築の孤児院のすぐ隣に、同じく錆びれた金属でできた小さな建物がある。それこそ、レイレイが呼ぶ『実験室』である。実験室とは、名前の通り、実験をする部屋のこと。レイレイはここでよく実験と称し、様々な毒遊びを試したもんだ。って、毒遊びってなんだよ…
とまあ、ツッコミはさておき、前からきっと読者様も疑問に思っていただろう。そう――レイレイは何故そんなに毒の知識があるのか、と。ぶっちゃけタコ毒とか入浴剤とか、スイセンのこととか普通の人じゃ知らないはずだ。それなのに、彼女はなぜ――と。
そう――その答えは、彼女自身の経験にある。




