42 ガラン村
園遊会での毒見の成果を評価され、リンシに褒美として一時的な帰郷の機会を与えられたレイレイ。彼女は早速、故郷である市井――ガラン村へと帰るのであった。
そういりゃ、前の話でレイレイの過去について今までこの小説で全く触れてないとか何だか話したが、作者が忘れていだけで実はちょっと触れていた場面があった。第十五話を見返して頂きたい。最後の方の行に、こう記載されている。
『毒見など、彼女の貧しかったあの頃の経験に比べれば、この後宮スローライフの些細な日常に過ぎない』と。
この文から察するに、どうやらレイレイってのは貧しい身分の出身であるってことは容易に想像できるだろう。それもそのはず、このレイレイって女――前から何かと素行が悪いったらありゃしない。きっとこれも、悲しいことに貧しい身分出身というところから来ているのかもしれない。
とまあ、長々と話しちまった。てな訳で、だ。レイレイは彼女の故郷――ガラン村へと帰る。後宮から数キロ離れたその村は、山に囲まれた小さな村――という感じではない。意外と都会だ。まあ例えるなら、東京二十三区に近い埼玉県の中都市みたいなモンだ。都会のベッドタウン的な感じだ。
だが、少し嫌な点としては、ややその村は治安が悪い。なにせ、隣接する街はジンの国の中でも名高い花街なのである。まあ、歌舞伎町みたいなとこであると言えば、分かりやすいだろうか。
花街に隣接する影響で、ガラン村の路地裏には性病持ちの女に飢えたクソ野郎が多い。はっきり言って地獄絵図だ。どうしたって、この村の凄惨さは直りそうにない。
そして、そんな村に生まれた娘なもんだから、レイレイってのは良くも悪くも、性格は男勝りでかつちょっぴり乱暴に育った。残念だがこの時代、女に生まれたのであれば自己防衛をすることが必須であったのである。男勝りな性格であれば、クソ野郎に絡まれることはない。だが、レイレイの場合は代わりに女官狩りに絡まれちまったわけだが――。
いやはや、よくよく考えたら、レイレイにとって帰郷とは、案外楽しいもんではなさそうだ。なにせ、説明通りこの村はむごい惨状なのだから。案外、後宮での生活の方が幸せだった気さえする。いや、それは彼女――レイレイ自身も自覚はしていた。そう――後宮での暮らしは平和だった。だが、レイレイはこうも考えていた。
後宮での暮らしは、刺激が足らない――と。




