36 毒スリル味わいバカ野郎
――毒見が始まった。
これから妃達がお召しになる食事の中に、毒は盛られてもおかしくない。命がけの毒見だったが、侍女・レイレイはというと、この死ぬか生きるかの瀬戸際を楽しんでいるよう。
(なぜだ? なぜあの侍女、楽しそうなんだ??)
少女の不可解な様子に動揺していたのは性格クズ武官・ガハク。彼はレイレイのその楽しそうな面を見るなり、やがて彼女のことが気になりだしてきた。
(あの侍女…不細工だが、ちょっとだけ気になる…)
って、相変わらずこの男は失礼だ。なにせ、初対面の娘に対し、不細工だ不細工だと、いくら心の声だからといってその発言はどうにかしてほしい。
それはそうとて、だ。レイレイ――コイツはというと、怯えて誰も口に運べなかった怪しい小鉢を手に取って、得体の知れない冬野菜を口にしたではないかっ!!!
(ん…??)
ガハクは何かおかしいと思った。刹那、レイレイはニヤリと笑い、そして、こう言う。
「これは…スイセンですかね? まあ、毒ですね」
(って、えぇ?! こヤツ、今――『毒』って言ったか?? いや、確かに言ったよな???)
その侍女――レイレイは頭がおかしかった。毒性のある野菜を口にし、『毒ですね』と平然と答えてのける。今や彼女の身体に毒が回ってるんだっていうのに、だ。
ガハクには訳が分からなかった。その侍女が毒見のし過ぎで脳がバグってしまったんじゃないかって心配するほどに、だ。だが、実を言えば、彼のその考えは半分正解で、半分間違いだった。
そう――その侍女――レイレイは確かに頭がおかしい。だが、それは彼女が毒見役になったからおかしいのではなく、元から彼女は人とは違うのだ。毒スリル味わいバカ野郎なのだ、こヤツは。
「侍女が…毒を食ったぞっ!!!」
レイレイのその突拍子もない行動に、現場は混乱する。すぐそばにいた宦官が慌てて彼女を厠まで連れて行った。まるで女性のような、綺麗に整った顔立ちを持った宦官が、だ。
そして、どうやらガハク、この宦官をどこかで見た気がするよう――。
(あの宦官…リンシ…か??)
そう――ガハクの言う通りだ。レイレイを急遽連れて行った宦官の正体は、読者の皆さんもおなじみのイケメンナルシスト宦官・リンシ様だっ!!!




