35 武官・ガハク
武官――ガハクは四人の娘が毒見をする様子をギャラリーとして拝見していた。武官、文官達にとって、この妃の食事を毒見するという毒見タイムは、さぞかしつまらない時間であった。なにせ、寒空の下、名も知らない娘達が怯えながら食事をする様子を見てなきゃならないのだから。
以前話した通り、毒見役ってのは言わばいつ死んでも良いというか、要は捨て駒の役割である。そんな哀れな境遇の娘達をじーっと見てなきゃならんってのが、ガハクにとってはどうも苦しいのであった。
(あ~、退屈だ)
って、こヤツ――全然苦しくなさそうだが?? あっ、コイツ、分かったわ。このガハクって武官、『アイツ』と同じタイプやん。
そう――この武官、例えるなら、朝の集会で校長先生の話が長くて暇すぎるから、早く終わってほしいって思ってる中学生のノリでこの毒見を拝見してるのだ。
てな訳で、だ。このガハクにとって顔も知らないような娘達の命なんぞ、別にどうだっていいって感じなのだ。なんと軽薄なヤツだこった。それに、だ。退屈だからと言い訳して、コイツは今、毒見役の娘達の顔をじっと観察し、誰が一番可愛いかランキングを頭の中で妄想しているぞ。
ったく、そんなのまるで中学生がノリで作る『クラスの女子誰が一番可愛いかランキング』と同じじゃねぇかと、さっきから例えてばっかやなと、まあそう思うのだが――、
(あの毒見役…紅い衣だからコウリン妃のとこのか…。化粧してんのに全然可愛くねぇな…)
って、ガハクっ!! コイツ、某この小説の主人公ちゃんにまさかの悪口っ!! ったく、主人公ちゃんも大概だが、このガハクって男の方がマジでキショイぞ。
ってか、さっきからこんだけこの男について話したわりに、まだコイツの容姿について話してなかったな。皮肉にも、コイツ容姿だけは意外と良いんだ。それも黒髪ショートウルフヘアに吊り上がった細い目、細マッチョ体型っていうパンク系ロック男子っつう感じの見た目なんだよ、コイツ。武官だから藍色の簡素な衣を着ているのだが、それでもなお魅力的な容姿を保っているのはコイツの素材が良いからだろう。
ったく、理不尽なことである。どんなに性格が悪いヤツでも、容姿がカッコいいとなぜだか許したくなる。ディ〇ニーのヴィランとかに惹かれるのは、これが理由なのだろうか。うん、多分そうだろう。




