30 目覚め
――気が狂い、二週間ほど寝込んだ。
市井のごくごく普通の娘であったレイレイ。ひょんなとこから今は後宮で賢妃・コウリン妃の侍女兼毒見役として仕えている。彼女は湯殿での女官殺害事件を解決したのだが、犯人が目の前で自害してしまい、そのショックで気が狂ったそうな。そして、紅玉宮で二週間寝込んだ――。
* * *
「レイレイ…体調はどうだ?」
「…ん?」
「目覚めたようだ、な」
目を覚ますと、紅い天井が広がっていた。ここは紅玉宮――賢妃・コウリン妃の住まう後宮内の宮殿である。レイレイを起こしたのは、久しぶりの登場であるあの男――、
「ごきげんよう、リンシ様」
「おっと。ちゃんと意識はあるようだな、レイレイ」
「はい…ちゃんと、覚えています」
「その…湯殿でのことは聞いたぞ。さぞ、ショックだったことだろうが…気を取り直して、毒見役としての任務にも努めてくれ」
「…承知です」
リンシと話し、レイレイは正気を少し取り戻した。そうだ――自分は毒見役なのだ、と。コウリン様の役に立てるよう、努めなければならないのだ、と――。
――そして、数日が経つ。
* * *
その日。特に仕事はなかったのでレイレイは自分の部屋で文字の勉強などをしていた。すると、だ。
「レイレイ、入るわよ」
「はい」
コウリン妃に仕える侍女の一人――ランランが、レイレイの部屋に入って来た。彼女――ランランもまた、リンシ同様久しぶりすぎる登場である。登場回もかなり少なかったため、忘れている読者もいると思うだろうが、詳細は十五話を今一度読み直して頂ければ幸いである。
とまあ、そんなことはさておき、ランランは何かレイレイに話すことがあるよう。一体、何を?
「レイレイ。ついにこの時期がやって来たわ」
「この時期…と、言いますと??」
「ええ。毎年二回行われる、園遊会の時期のことよ」
「ああ、それですか」
って、なに当たり前みたいな感じで話しているんだよと、そうツッコミたくなる気持ちも分かるが、まあ後宮で過ごすレイレイにとって、園遊会というワードは良く耳にするモノであったから仕方もない。
なにせ、後宮では園遊会に向けた準備で会の前からずっと園遊会園遊会園遊会――。ホント、耳にタコができるんじゃねぇかって勢いでその会の名を聞いたもんだ。女官やら侍女やらがずっとその話をするもんだから、さぞ大切な会だってことは嫌でも分かるモンなのだが――。
「園遊会――コレは、事件の匂いがするぞ」




