02 手習い所へ
――全く、新米下女ってのは退屈だ。
毎日洗濯、掃除といった代わり映えのない仕事ばかりで、少々不満を述べるレイレイ。まあ、無理もない。なにせ、年相応の娘にとってこの後宮内での仕事は本当に刺激が足らないものなのだから。
と、そんなわけで、嫌味を垂らしながらも一仕事終え、休憩に向かう。
とはいっても、休憩は休憩で退屈だ。なにせ、娯楽が無いもんでやることがない。ただベンチに座って、妄想に耽ることぐらいしかやることがない。いや、こんなボーッとする暇さえあれば、さっさと手習い所に行って漢字の勉強をする方がよっぽど時間の有効活用になる気さえする。
手習い所とは、後宮内に備え付けられた、下女や女官が文字の読み書きなどを学ぶための教育施設である。新米下女の中にはレイレイのように貧しい身分から成りあがったものが多い。それ故、識字率が極端に低いのだ。故、このような施設が後宮にはあるわけだ。
まあ暇つぶしになるだろうし行ってみるかと、早速手習い所へ向かうレイレイ。
* * *
――なんだかざわついているな。
手習い所に到着したものの、なにやら入り口で女官や下女、宦官やらで人がごった返している。そういえば、宦官については説明がまだだったな。
以前、後宮は女性らのみで構成されていると話したが、やや訂正させていただきたい。否、正確には、彼ら――宦官は男性なのだが、男性たるアレを持ち合わせてはいない。宦官とは、生殖機能を失わせる去勢手術を受け、後宮に仕えた男性の役人である。それは何故かというと、無論、皇帝の純血性を守るなどのリスク管理上、彼らにはそのような行為を物理的に防ぐ必要があったからである。
ったく、なんとも可哀そうな話ではあるが、レイレイは男勝りな性格ではあるが当然れっきとした女子なので彼らの痛みまで完全に理解することはできなかった。
とまあ、やや話が反れてしまった。宦官の話はさておき、今は手習い所でなにやら人がごったがえしている、という話をしていたのだった。少々耳を澄ませてみよう。
「女官が一人、倒れたらしい」
「どういうことだ」
「手習い所で字を学んでいた女官だよ。急に倒れたんだ」
――はっ?!
急な事件発生。一体、どういう訳か――??




