18 水死体
後宮の湯殿とは、妃や下女たちが体を洗い、入浴をするための巨大な大浴場のことである。湯浴みや脱毛、時には侍女が妃のマッサージを行うなど、利用方法は様々あります。
そんな下女たちと憩いの場、と言っても過言でもないその場所で、その物騒な事件は起きました。一人の女官が浴槽で死んでいるのが発見されたのです。まあなんてこと。見てられません。
「ご存知の通り、水死体はガスなどで顔や身体が大きく膨張し、皮膚の変色やふやけが起こる。腐敗や損傷で、最悪の場合、殺人の証拠が無くなってしまう可能性もあるぞ…」
と、レイレイは冷静になって分析をしました。レイレイの友だち下女・セイランはというと、当然ながら怯えています。いや、こっちの方が正常なリアクションです。レイレイが異常な推理バカなのです。
とまあ、そんな感じで事件現場に向かった二人なのですが、案の定――、
「手遅れだったか…」
「そんな…」
女官の水死体は既にそれはそれはおどろおどろしい状態となっていました。これじゃあ、先ほど申した通り、腐敗や損傷の影響で殺人の証拠を死体から得るのはほぼ不可能な状況です。
どうすれば良いかと、レイレイは必死になって考えます。セイランはというと、そんな恐ろしい死体なんぞまじまじと見てられません。だって、グロテスクなのは彼女苦手なのですから。
「水死体から死亡時間を割り出すことは難しいぞ。それに、これはかなりの重傷だ」
「やめたげて。言葉を聞くだけで吐き気がしそう」
「ごめんよ、セイラン。でも、私はこれが生業なんだ」
「死体観察が生業だなんて、気の毒ね、レイレイ」
レイレイとセイランが話をしていても、推理が進むことは決してありません。さすれば、この事件――未解決事件として終わってしまうのでしょうか??
いや、名探偵・レイレイとて、そんなはずはありません。ですが、彼女一人の力ではこの事件、どうも解決まで届かないようです。では、どうすれば――??
と、その時――、
「お困りのようね、レイレイ」
「って、えぇ?!」
その声の主は、ミルクティブラウン色の美しい髪を持った美少女。そう――コウリン妃だっ!!




