15 命は平等に軽い
「レイレイ、最初のお仕事よ」
コウリン妃に仕える侍女の一人――ランランが、レイレイを呼び止めた。
賢妃・コウリン妃の元にはレイレイの他、三人の侍女が仕えている。侍女の中で最も位が高く妃への信頼の厚いリーダー的存在のことを侍女頭と呼ぶのだが、ランランがまさにここ紅玉宮の侍女頭ってヤツである。
ランラン様は背が高く、大人びた印象を持つお姉さんであった。茶色の短髪であり、細く優しい目をしている。なるほど、この人であれば確かにリーダー的素質がありそうで間違いない。
と、ランランのことはこのくらいにして、レイレイは彼女に呼び止められ、仕事を与えられたのだった。そう――これが紅玉宮に来てレイレイがする最初の仕事である。
「コウリン様のお食事の用意ができたので、試しに貴方に毒見をお願いしたいの」
「承知いたしました、ランラン様。」
きたーっ!! 毒見っ!!!
と、普通なら命にかかわる仕事なので毒見何ぞ怖くて当然なのだが、なぜだかレイレイはそんな気もせずどこかちょっぴり嬉しい様子。いやはや、レイレイ――彼女、あまりにもさっきから暇だったもんで、やっと仕事ができるんだと、こりゃもう嬉しいんだとか。なんだか彼女、変わってるね。
とまあ、レイレイが変わってるだなんて、なにを今更と思うかもしれないが、毒見という仕事に関しては変わりモンの方が性に合っている。なにせ、誰しも命の価値は軽く扱えないのだから。
「ねえ、レイレイ」
「なんですか? ランラン様」
「貴方、毒見が怖くないの?」
優しいランランはレイレイの不安げのない顔を見て、不思議に思った様子。当然である。なにせ、若い侍女が毒見などという捨て駒のような仕事に駆り出されるのだ。侍女頭のランランの立場からしたら、入ったばかりの可愛い後輩ちゃんが死に迫っているという状況は余りにも不憫でならない。
が、しかし――、
「ランラン様。私は全く怖くありませんよ」
「えっ??」
そう――この新米侍女、全く怖がっていなかった。毒見など、彼女の貧しかったあの頃の経験に比べれば、この後宮スローライフの些細な日常に過ぎない。淡々とした表情で、レイレイは言った。
「命は平等に軽いのです。虫も、花も、人も。そして当然、私自身のもです」




