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ALMA -とある魔女のお話-  作者: ROBO
第三章 アウシュラの戦い

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第38話:尋問

「おやおや、遠慮せずに

 二人相手でもいいんだよ?」


私は棒を両手で握り、身体の中心に構えた。

ヴァーノンは自分から動こうとせず、

サーベルで切りつける仕草を

大袈裟に繰り返している。


「私も鬼じゃない。

 君たちが武器を捨てて大人しく……」


私はその言葉を聞き終わる前に

ヴァーノンの懐に入り、サーベルを持つ

手の甲を思い切り叩きつけた。

声にならない呻(うめ)きと共に

サーベルが音を立てて床に落ちる。


そのまま鳩尾(みぞおち)に突きを入れ

蹲ったヴァーノンの背後に回り、

首の下に棒を入れて、グイッと締め上げた。


「うぐおぉ」


先ほどまでの自信満々の表情から一変、

口からよだれを垂らし、目をギョロギョロと

動かして焦る姿は情けないの一言だった。


「あなたたちはアウシュラで一体何を

 しようとしているの? 答えて!」

「ガキが! さっさと離さんか!

 私は代官だぞ! 殺してやる!」


棒で更に強く締め上げると

表面からツタがじわじわと伸び、

ヴァーノンの首に絡みついていく。


「ちゃんと答えて!」

「ぐぐ……」

「アルマ!」


メロディが私を呼んだ。


「力任せにやってもダメ。私が代わるわ。

 そのまま押さえてて」


メロディは杖先に小さな光の玉を浮かばせ、

ヴァーノンの耳元まで近付いた。


「私たちは大人じゃないから、あんたが

 偉かろうが知ったことじゃないわ。

 カミラがアウシュラに向かっているの。

 一刻を争う状態なの。わかる?」


光の玉がヴァーノンの耳たぶに触れると

じりじりと黒い煙が立ち始めた。


「熱い! やめろ!」

「さっさと話した方がいいわ。

 私たち突然殺されかけて、凄く怒ってるの。

 両耳が潰れたら次は鼻よ」


皮膚が焼ける嫌な臭いが部屋に流れ始める。

メロディはひどく落ち着いた様子で

その口調は冷徹そのものだった。


ヴァーノンは暴れようとしたが、

既に首から張り巡らされたツタが

両肩あたりまで覆い始めており、

身動きが取れないようだ。


「わかった! 話す!

 話すからやめてくれ!」

「“話すから”じゃなくて早く話してよ。

 私がやめるのは話し終わったときよ」


凄い……メロディの姿はまるで拷問官だった。

普段からよく怒ってはいるものの、

本気で怒るとこんなにも……少し彼女が恐くなった。


「アウシュラとディムドの戦争が始まるんだよ!

 俺はただそのことをあの魔女に伝えただけだ!」


メロディがこちらをチラリと見た。

嘘だ、この男は何かを隠している。


「嘘! 昨日の夜、あの女を利用するとか、

 “自分が故郷を襲うことになる”とかなんとか

 言ってたじゃない!」


私の言葉を聞いて、メロディは再び

耳元に光を押し付けた。


「ぐあああああ! 痛い! 熱い!」

「ほら、アルマは嘘って言ってるわ。

 さっさと本当のことを話した方が良いわよ」


ヴァーノンの右耳たぶは真っ黒に煤け、

その熱は耳介(じかい)にまで達し始めている。


「人を魔物に変えて襲わせるんだよ!」


ヴァーノンの叫び声を聞き、

メロディは耳元から光を離した。


「どういうこと?」


額に脂汗を浮かべながらヴァーノンが話し始める。


「近衛師団の魔術部隊が編み出した魔法だ……。

 魔力を持つ人間を魔物に変えるんだよ。

 恐ろしいことを考えるもんだよな」

「いいからさっさと続きを話しなさいよ!」

「……何回か実験をして、ようやく完成したんだ。

 だから魔法使いどもを集めて魔物に変えて、

 アウシュラを襲わせるのさ。王都周辺に出てきている

 魔法使いなんざ大体がアウシュラ出身だ。

 故郷が隣国のディムドに侵攻されたと言えば、

 ホイホイついてきたよ」


ゾッとした。あまりにも非人道的すぎる。

意識が遠くなるほどの衝撃だった。


「なぜそんなことを!? あそこは

 ルイーザ・ベルの領地のはずでしょ!」

「アウシュラは魔法都市だ。今や王都以上の力を

 持ち始めている。これ以上増長する前に

 ちょっと灸をすえてやらねばなあ」


ヴァーノンのにやけ顔を見て

メロディが光を鼻先へ持っていく。


「鼻がなくなって、骨の穴だけになっても

 そうやって笑っていられる?」

「……」

「でも待って。どうしてそれが戦争に繋がるの?

 あんたの話が本当ならディムドは無関係じゃない」

「……ディムドは元々アウシュラと

 いがみ合っていたからな。話を持ち掛けたら

 二つ返事で協力するとさ! アウシュラを潰す

 またとない機会だからな」

「ひどい……今すぐやめさせてよ!!」

「ふん、もう手遅れさ」


何やら下の階が騒がしい。

店主と誰かの言い争う声が聞こえる。


「ガキどもめ。俺が時間になっても戻らないから、

 兵士たちが見回りに来たぜ! 終わりだ!」

「最低ね、このクソ野郎……」

「明日には戦争が始まるだろうさ!

 お前らが今から行ったところで

 間に合いはしない!それにガキの

 世迷言なんざ誰も信じねえよ!」


ヴァーノンを拘束していた棒にグッと力を入れると

ツタの拘束が弱弱しく剥がれ落ちていく。

嬉しそう立ち上がったヴァーノンの顎を、

私は思いっきり棒の先で突き飛ばした。

ぐるんと白目を剥いてその場に倒れる様を

見届けた後、私たちは急いで窓から飛び出し、

屋根伝いに店の裏手へと非難した。


宿周辺には幾人かの兵士たちがうろついており、

私たちは細い裏道を縫うように走って

なんとか城門付近までたどり着いた。

しかしそこでは門番以外にも、

数人の兵士が何かを話し合っている。

既に先ほどの騒動が伝わっているのか?

このままでは王都から出られない……。


「どうしよう……」

「……」


メロディもぐっと下唇を噛んだまま、

苦い表情を浮かべていた。


「あなたたち、どうしたの?」


透き通った女性の声が聞こえ、

私たちが咄嗟に後ろを振り返ると、

そこには驚いた表情で立ちすくむ

踊り子の姿があった。

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