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ALMA -とある魔女のお話-  作者: ROBO
第三章 アウシュラの戦い

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第29話:ルイーザ・ベル観光

運ばれてきた『魔法使いのスープ』を

じっくり満喫した後、

(前回の反省を活かし、二杯目は頼まなかった)

私たちは大通りに連なる様々な店を訪れた。


古着、銀細工、食器、薬草、靴、絵画、

酒、土産物、武具、魔道具、鍛冶屋……

この町で手に入らない物はないのではないかと

思うほどに、あらゆる店舗が軒を連ねている。


服やアクセサリーは確かに魅力的だが、

カミラの前で身に着けるわけにもいかないし、

買えるものも限られてしまう。


それにきっとお金の減り具合にも

勘付くはずだ、大きな買い物は出来ない……。


涼しいハーブの香りが漂う仕立て屋に並ぶ

色とりどりの古着。子ども用は少なく

着られそうなものはないが、どれもしっかり

補修されていてまるで新品のようだった。

真っ白なレースの可愛いドレス……

いつか私もオシャレしたいな。


「ねぇ! こっち!」


メロディが前で手招きしている。

そこにあったのは鉱石や魔道具を売っている

不思議なお店だった。


「ちょっと見てもいい?」

「うん」


私も多少は興味があったので

メロディの後に続く形で店内に入った。

その瞬間、すっと外界の音が遠くなる。

書店などの静けさとはまた別物、

ここだけが深い森の奥にでも

隔離されたような……とにかく静かだった。


水が流れる心地よい音、

ときおり水晶を軽く叩いたような

高く澄んだ音も響いてくる。


クリスタル、アメジスト、黒曜石、シトリン……

色あせた机の上に並ぶ様々な鉱石の結晶。

それらが埋め込まれたバングルや指輪、

耳飾りにペンダント。


乾燥ハーブの詰まった小瓶や

無造作に積まれたルーンストーン。

目に入るものすべてが幻想的で美しかった。


中でも目を引いたのは、店の中央に

置かれた半透明の巨大なクリスタルだった。

その中央ではピンク色の小さな光が

微かに明滅しており、

まるで心臓の鼓動のようにも見える。

私はこれに見覚えがあった。


カミラの家に到着したとき、

私のポケットに入っていたあの石も

中で青い光が点滅していた。


カミラに取り上げられてから

どこへいったかはわからないが……

色々なことがあってその存在すらも

忘れてしまっていた。


「それが気になるかい?」


クリスタルに触れようとした瞬間、

後ろから声を掛けられた私は

飛びあがるほど驚いた。


そこに居たのはおそらく店主だと思われる

長い黒髪を携えた老婆だった。


「これはねぇ……精霊の化石だよ。

 はるか昔に石の中に閉じ込められて

 そのまま生き続けている……

 いわば命の光さ」


老婆が私の横をゆっくり通り抜けて

滑らかなクリスタルの表面を撫でる。

か細く、血管の浮き出た腕。動くたびに

どぎつい香水の匂いが周囲に漂う。


「彼らはねぇ……私たちをずっと見ている。

 この濁ったクリスタル越しに何千、

 何万年もの間。美しいだろう?」

「これは……何なんですか?

 私これと似たものを見たことがあって」


老婆の目が一瞬きらりと輝く。


「そうかい、それは幸運だね。

 あんたも監視されているよ。彼らの眷属に。

 彼らは忘れない。一度見たもの、聞いた声は

 決して忘れないよ」

「……」


言葉の意味が良く分からず困っていると、

メロディがこちらに気付いてやってきた。


「どうしたの?」

「ううん……」

「わあ!随分でっかいクリスタルね。

 でもなんだか濁ってて……

 あまり綺麗じゃないわ」


その言葉には違和感があった。


「濁ってる? 中の光が見えないの?」

「光? クリスタルの中に?

 くすんで汚れてるだけでしょ……」


私たちの問答を老婆はそばで

黙って眺めていた。その口角が僅かに上がっている。


「さぁさぁ、小さな魔女お二人さん。

 こちらへおいで。占いをしよう」

「占い? そんなの興味ないわよ」


メロディは何かの押し売りだと思ったのか、

老婆を冷たくあしらった。いや、それ以前に

私たちが魔女であることを

なぜ知っているのだろう?


「金髪のお嬢ちゃん。お代はいらないよ。

 ただ見せてもらうだけさ、あんたらの未来、

 あんたらの大切な人の未来もね……」


ドキッとした。語り口調は穏やかだが、

この老婆からは何か特別な雰囲気を感じる。

人とも魔女とも違う、まるで魔物のような……


「見てもらおう」


気付くと私はメロディにそう話していた。


「え? あんた占いに興味があったの?」

「そういうわけじゃないけど……

 この人の占いには興味があるの」

「ふーん、まぁ暇つぶしにはいっか。

 お金は絶対に払わないからね!」

「ふふふ、余計な心配は無用。

 これは私が趣味でやってることさ」


老婆に促されるままに、私たちは店の奥にある

古くて分厚い扉の奥へと進んだ。

そこには正方形の小さなスペースがあり、

巨大な木製のテーブルと三脚の椅子が

既に用意されていた。


床には金縁の真っ赤な絨毯(じゅうたん)が敷かれ、

四方の壁にキャンドルが灯っている。

窓がないため、この薄灯りで

なんとか部屋の中が見渡せた。


影が落ちた卓上には、

いびつな水晶の玉が置かれている。

それは炎の揺らめきを反射し、

オレンジ色の光で縁を彩っていた。


「さぁ、並んでお座りなさい」


老婆がテーブルから引き出した椅子に並んで座る。

ギシギシと軋む小さな椅子で、

座り心地は最悪だった。

その間に老婆は流れるように準備を続け、

キャンドルからセージの葉の束に火を移すと、

そこから出た煙を水晶に向けて擦り付けている。


「二人がここに来ること、わかってたよ。

 これは運命だ。いいかい、

 バカにしちゃいけないよ」


老婆がドスンと私たちの向かい側に腰掛ける。

水晶越しに見る老婆の顔は

先ほど店内で見たものとはまるで違う……

何十歳も若返ったように生き生きとして、

自信に満ち溢れていた。

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