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ALMA -とある魔女のお話-  作者: ROBO
第三章 アウシュラの戦い

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第28話:ちょっといけないこと

こんなときに頼れる魔女でも居ればいいのだが

ヘレナはアウシュラに行ってしまったし、

クロエやドロシーはどこにいるかわからないし……


「あーあ、光の玉は浮かべられるのに……」


メロディがふとそんなことを呟く。

そうだ! きっと原理は同じはず。


「ねぇ、光を浮かべるときって

 どんなことを考えてるの?」

「いや、別に。杖の先で

 持ち上げるような感じかしら?」

「一度箒から降りて、箒だけで浮かせてみたら?」


メロディも何かに勘づいたようで

急いで箒を地面に寝かせ、杖を取り出した。

私は彼女の左手をぎゅっと握る。


「箒も光も同じだと思えばいいのね」


目を瞑って集中し始めるメロディ。

すると間もなくして箒がカタカタと揺れ始め、

その場でふわりと宙に浮いた。


それは最初垂直に立っていたが

徐々に水平に向きを変え、人が乗れそうな高さに

停滞し始めた。


「いくわよ!」


メロディの掛け声に合わせて

私たちは箒の真横へと近づいた。

並んでそっと跨り、箒を正面に構える。


僅かだか先ほどとは違って箒の浮力を感じた。

しかし人を持ち上げるのは重労働なのか、

股の下で箒だけがふわふわと浮いているような

状態が続いた。時折ぐいっと持ち上げようとする

力は掛かるのだが、この程度ではとても無理だ。


「これはちょっとコツが……いるわね。

 まずは箒だけで飛ばす練習をしないと

 ダメかも」

「そっか……そうだよね」


本当に空を飛べる! そう期待したのだが

さすがにまだ無理だったようだ。

でもスタートラインには立てた気がする。

あとはきっと技術と慣れの問題なのだろう。


「きっと飛べるようになるよ。

 初めてでここまで出来たんだから!」

「当たり前でしょ? カミラが

 戻って来る頃には飛んでみせるわ!」


メロディはそう宣言した。

カミラが家を出て二日……行き先はおそらく

アウシュラだろう。馬車を使ったとすれば

まだ目的地にすら着いていないはずだ。


果たしていつ帰って来れるのだろうか?

一日一日がとても長い。杖術を訓練したり、

こうしてメロディの魔法を手伝っている間だけは、

ほんの少しだけ現実の不安を忘れられる。


「そろそろ食料も調達しなきゃね」


メロディの言葉にハッと我に返った。


「それもそうだね、どこで買う?」

「せっかくだから城下町へ買いに行かない?」


それは驚きの提案だった。


「え! いいのかな?」

「せっかくカミラが居ないんだから、

 この時間を楽しまなくっちゃ!

 それに今ならキャラバンを見ても

 文句は言われないわ……」


さっきまでの心配はどこへ行ったのやら、

キャラバンという言葉の魅力的な響きに

思わず胸が高鳴ってしまった。


「うん……買い出しのためなら仕方ないよね」

「よし! 決まりね。お金はあるし、

 すぐに出発するわよ!」


私たちはバタバタと着替えを済ませ

大きな押し車……は持たず、リネンで出来た

中くらいの背負い袋をそれぞれ肩からかけ、

ルイーザ・ベルへと出発した。


    ◇


道中は身軽なうえ、カミラのプレッシャーがない分

普段よりもゆっくりと歩く余裕があった。

目を凝らせば森の中には様々な植物が

根を張っており、色鮮やかな果実も生(な)っている。


「これって食べられるのかな?」


そんな何気ない会話をしながら

城下町へと向かう道中は最高に楽しかったし、

少しいけないことをしているみたいで

終始妙な高揚感があった。


私たちはほどなくしてルイーザ・ベルに到着。

子どもたち二人だけでは

門番に止められるのではないかと

少し不安だったが、声すら掛けられずに

素通りすることが出来た。


「あんなんで警備は大丈夫なのかしら?

 何だか間抜けそうな顔だったわ」


メロディはお気に入りの花柄のワンピースが

一瞥(いちべつ)すらされなかったことに

腹を立てているようだ。


私たちはまず食材の買い出し……ではなく、

『魔法使いのスープ』を一杯いただくことにした。

お腹が空いていては頭もろくに働かない。

これは必要経費だった。


前回と同じ店のテーブルにつき

流れるように注文をした後、

リラックスして椅子に深く腰掛ける。


「今日買うものは野菜とお肉と……

 パンは別のお店を探さないとね。あとは……」


頭の中を整理している私を見て

メロディは大きくため息をついた。


「あんたってホントに真面目ね……。

 買い物なんて後でいいわよ!

 それよりもまだ見れていないお店が

 いっぱいあるんだから、城下町を

 ぐるっと一周するっていうのはどう?」

「それは……ホントにいいのかな?」

「カミラが帰ってきたら絶対に回れないわ!

 ま、私は一人でも行くけどね」


向かい合う私たちの真ん中に

スープが二つ運ばれてきた。

うーん、何度嗅いでも病みつきなる

甘くてクリーミーな香りだ。


「ごめんなさいカミラ……やっぱり私も行くよ!」

「そうそう! 素直にそうすれば良いのよ。

 じゃあルイーザ・ベルに乾杯ね!」


樹で出来た器を掲げ、

コツンとぶつけ合う。

きっと今の私たちを見たら、

カミラは激怒するだろう。


でもこれまで毎日家事をこなしてきたんだから、

たまにはいいよね……? 私はとにかく頭の中で

あらゆる言い訳を考え、自分を納得させた。


反面、何ら悪びれている様子のない

メロディの姿からは、大人の余裕すら感じた。

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