第26話:炸裂魔法の応用
私の弱点は俊敏性だ。
瞬時の攻撃に対して最適な反応が
出来ていない。一旦杖をその場に置き
再びメロディに魔法をお願いする。
「今度は避けることに専念するから
私を狙ってどんどん撃って!」
「はぁ!? まだ懲りてないの?」
メロディが凄まじく嫌そうな表情をしたが、
私は食い下がった。
「わかった、あと五発だけ!
それが終わったら
メロディの魔法を手伝うよ」
「五発……」
その声には今までとは違う
不安のようなものが感じられた。
「もしかしてもう魔力が……」
「バカにしないで! こんなの楽勝よ」
メロディは何かを振り払うように
頭を振った後、杖を構え直した。
「いくよ!」
杖の先から速く、小さな光の玉が飛び込んでくる。
手に何も持っていない分、今度は上手く避けられた。
次は二発同時、これも大丈夫。なぜだろう?
手に杖があるのとないのとでは
こうまでも身体の軽さが違うのか。
思い返せばカミラは杖を自分の身体の
一部のように扱っていた。そこに何か
秘密があるのかもしれない。
ふと次の玉が飛んでこないことに気付き
目線を上げると、メロディがその場で
蹲っていた。
「メロディ! 大丈夫?」
駆け寄った瞬間、
メロディは勢いよく立ち上がった。
「なんでもない! ちょっと暑くて
ふらついただけよ!」
強がってはいるものの、
その表情からは疲れの色が窺える。
どうやら無理をさせてしまったらしい。
「ごめんね。私が無理言ったせいで……」
私はそっとメロディの手を握った。
淡い黄色の光が一瞬見えたかと思うと、
顔の血色がみるみるうちに良くなっていく。
「凄い……どういう原理なんだろう……」
メロディは興味深く私の掌を見つめ、
引っ張ったりつねったりした。
「アルマは何ともないの?」
「うん、別に……。多分一気に吸われなければ
大丈夫なんだと思う」
「魔法が使えないのに魔力があるって
なんか不思議ね……もしかして総量は
私より多いのかも」
「ねぇ、もう私は充分!
だから今度はメロディの番だね。
試したい魔法は無いの?
やってみようよ!」
「……実は一つあるの。魔導書を読んで
ずっとイメージしてたやつ」
「それってどんな魔法?」
「私が使っている光の玉。でもその形は
本来自由に変えられるんだって」
「そんなことが出来るの?」
「そうみたい。自信は無いけど……」
不安で少し震えているその手を
私は強く握り返した。
「きっと出来るよ」
「……うん」
小さく頷いた後、メロディは杖を
顔の正面に持って目を閉じた。
静寂の時間が流れると同時に、
私の掌が熱を帯びていくのを感じる。
小さく円を描くように杖が振られると
虚空からいくつかの光の玉が姿を現す。
それらは球体から徐々に縦に伸びていき、
鋭い剣の形状へ変化していった。
周囲で熱気が渦を巻き、風が吹き荒れる。
「凄い……!」
私の声を聞いてメロディはゆっくり
目を開けたが、集中しているのだろう。
特に反応を示さない。
三本の光の剣はメロディが体の向きを
変えると、同じように向きを変えて
追従している。やがてその照準は
以前メロディが炸裂魔法を放った
小ぶりの岩にピタリと合った。
杖が勢いよく振り下ろされると
一本の剣が目にもとまらぬ速さで放たれ、
巨大な爆発音とともに岩を粉々に粉砕した。
かなり離れているにも関わらず、
弾けた小さな石片がこちらに
飛んでくるほどの衝撃。
ちょっとの焦げ跡を残すぐらいだった
以前の魔法とは比べ物にならない威力だ。
メロディは自分でも驚いたようで
私の手をパッと離すと、残りの二本の剣は
霧のようにその場から消え去った。
炸裂魔法に詳しくない私から見てもわかる……
あれはきっと簡単な魔法ではない。
かなりの修練が必要なもののはずだ。
瞬間的な熱量と爆発力だけ見れば
おそらく炎の魔法をも凌駕しているだろう。
「ねぇ、今の初めて使ったの?」
「ええ、まぁ……」
「凄いね!」
「ほんとに出来るとは思ってなかった……。
あれ、上級魔法なの。でもずっと
使ってみたくて」
魔力が足りないという理由で
周囲から蔑まれてきたメロディ。
でも実は彼女には凄い魔法の才能が
あったなんて……物語の主人公みたい!
「あれならバイコーンにも負けないかも!
ねぇ、もっと色んな魔法を使おうよ。
今までの分を取り戻さなきゃ!」
「もう! 勝手なことばっかり言って……。
でも、ありがとう」
私の魔力にも限界があるとはいえ、
先ほどの魔法ぐらいではまだ元気だった。
一体自身の体にどれほどの容量があるのか、
いずれそれも把握する必要がありそうだ。
それにしても火とも雷とも違う、弾けるような
あの炸裂魔法は一体どうやって生まれたのか?
魔導書が存在するということは
その歴史はそれなりに古いはずだ。
私のドレインの魔法のように、その起源を
辿っていけばメロディの生まれ故郷や、
実の両親の存在もわかるかもしれない……。
「あのさ、もう一つやってみたいことがあるの」
メロディの言葉でハッと我に返る。
「なに?」
「箒で空を飛ぶ魔法」




