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ALMA -とある魔女のお話-  作者: ROBO
第三章 アウシュラの戦い

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25/25

第25話:カミラのいない家

「アルマ……こんなときぐらいやめたら?」

「ダメだよ。毎日続けないと!」


カミラが出かけてから2日、

私は空き時間があれば一人で

素振りの稽古を続けた。


近衛師団の兵士たちの戦いぶりに

触発されたから……だけではない。

もしカミラのいない間にこの家が

魔物に襲われたら、守るのは私とメロディだ。


以前よりも素振りのスピードも早くなり、

スタミナも付いたが、まだ足さばきが

上手くいかない。


突然の襲撃に対して

対応できる気がしない……。


「……そうだ!」


私はふと思いつき、メロディを手招きした。


「いつも稽古中に小さな光を

 出してるよね? あれを私に向かって

 撃てたりする?」


メロディは正気じゃないと

言わんばかりの引き攣った表情を見せた。


「あんたね! あれは炸裂魔法だよ!

 瞬間的ではあるけど炎よりも熱いし、

 ぶつかったら凄い衝撃なんだから!」

「それでもいいの! お願い!

 やってみて!」

「いやよ! 怪我でもされたら

 堪ったもんじゃないわ」

「気を付けるから大丈夫!

 この前私の欲しいものをくれるって

 言ったでしょ? 私は今、あなたの

 魔法が欲しい!」


自分でもなぜここまで頼み込んでいるのか

よくわからないが、とにかく私は焦っていた。

最近王国の周辺で何か妙な動きが起きている。

ただの考えすぎなら良いのだが、もしそれが

突然こちらに降りかかって来る禍だとしたら……


自衛できる力を付けなければ、

子どもの私たちはただ災厄に

飲み込まれるだけ。


でも戦える力を持ったカミラは、

きっとそれに立ち向かおうとしている。


「バカじゃないの? 誰がそんな危ないこと

 するもんですか!」

「メロディだってこのままでいいの?

 ずっと何もしないで、カミラに

 守ってもらうつもり?」

「なんですって!?」


メロディが私に掴みかかる。

背の高さは僅かに負けているが、

カミラのスパルタ稽古を受けていたおかげで

腕力や体幹は私の方が上だ!


私たちは取っ組み合いになり、

お互い何度も平手打ちをくらった。

草原の上でもみくちゃになりながら、

髪の毛を引っ張り合う。痛い。


「私は強くなるって決めたんだ!

 誰かに頼らなくても生きられるぐらい!」

「まだ十歳のくせに、なに大人ぶってるの!?

 カミラのまねっこして強くなったつもり?」

「そっちだって魔法を使えるくせに、

 努力もせずに逃げてるだけじゃない!」

「あんたに何がわかるの!?

 あんたは一回だけだけど、

 私は何度も家族に捨てられてるんだ!

 出来損ないの魔女だって言われてね!

 その屈辱がわかる? 惨めさがわかる?」


いつの間にかメロディの目からは

大粒の涙が流れ落ちていた。


「どんなに頑張っても私は自分の身体からしか

 マナを生み出せない! 基本の魔法ですら

 まともに使えない!」

「それならもっと私を使いなさいよ!」


その言葉を聞いてメロディがふと

動きを止めたため、私の渾身の頭突きが

彼女の額に直撃してしまった。


「痛っ……」

「一人でダメなら二人なら!?

 私の使い道のない魔力を

 メロディが使えばいい!」

「勝手なこと言わないで!」

「私知ってるよ! 毎晩メロディが

 魔導書を読んでるの。それなのに

 新しい魔法の訓練をしてない!

 結局逃げてるだけじゃない!」

「私のマナじゃ出来っこないの!」

「メロディだって、誰かに甘えるのは

 嫌なんだ。私だってそうだよ!

 だからこうして一人で訓練してるの!

 強くなれるかなんてわからないけど、

 それでも信じてやるしかないんだ!」


私はメロディの手をグイッと掴んだ。


「メロディは魔法を使えるの。私には

 どうやったって使えない。だから

 私の代わりに“私”を使って」

「……」

「カミラが言ってた。私たちは不思議な縁で

 結ばれているって。私はメロディに協力する。

 だからメロディは私に協力して」


メロディは少し黙ってから

頭を乱暴に掻いた後、

頬を伝った涙の後を袖で拭き取った。


「……火傷しても知らないから」

「私はカミラの弟子だよ? なめないでよね」


私たちはお互いに距離を取り、

それぞれ杖を構えた。


「本当にやるよ! いいのね!」

「うん!」


メロディが杖を振ると、小さな光の玉が一つ

ふわりと舞い上がった。そしてもう一度杖を

私に向かって振り下ろした瞬間、

玉がこちら目掛けて飛び込んできた。


加減しているのだろう、

十分避けられるスピードだが

それでは意味がない。

私は敢えてその玉を杖の中心で受け止めた。


パァン!と弾ける音と共に

杖を通じて激しい振動が指先に襲い掛かる。


「ぐっ」


光の玉は中空に霧散して

キラキラと太陽の光を反射した。


なかなかの衝撃ではあるが

カミラの一撃と比べればまだまだ弱い。

杖には僅かな焦げ跡が付いていた。


「大丈夫!?」

「全然! もっと早くやって!」


メロディは呆れた表情を浮かべたが、

再び光の玉を私まで飛ばした。

早い! けどまだ受け止められる。

今度はこちらから杖で弾いてみた。

光は激しく飛び散った後、ふわりと空気に溶けた。


「メロディ、もっと本気でやって!

 今度は二発同時でお願い!」

「もう!」


杖の先から二つの玉がふわりと浮かび上がり、

メロディの合図と同時にこちらの飛びかかってきた。

一瞬で距離が詰まる。


私は咄嗟にその場で身体を反らし

一発目を避けたが、二発目の対応に杖が間に合わず

二の腕の辺りにもろに受けてしまった。


腕が吹っ飛ぶかと思うほどの衝撃で

その場で体制を崩す。鋭い痛みの後から

熱さもやってきた。


「ちょっと! 大丈夫!?」


メロディがこちらに駆け寄って来る。

何度か手の平を握ったり開いたりしてみたが、

骨は問題はなさそうだ。


「ありがとう、大丈夫。早かった!

 それにとっても痛い。凄い魔法だね!」


メロディは目を丸くした後、

長いため息をついた。

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