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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第三章 地獄の鬼たちと新たな希望
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第2話 激突!鬼たちとの攻防


 セイラと清十郎が到着したことにより、戦場の様子はこれまでとは一変していた。


 「せいやぁ!」


 セイラは激しく地面を踏みしめながら、強烈な正拳突きを目の前の甲冑姿の鬼に見舞う。

 完璧に決まった一撃は、甲冑を砕きそのまま鬼を吹き飛ばす。

 そこへ巨人タイプの鬼が迫る。

 激しい咆哮を上げながら、思いっ切り振りかぶった右の拳をセイラ目掛けて叩き込んできた。


 「おおっとぉ、そんな大振り……」


 セイラがひらり回避すると、その拳は轟音を響かせながら地面にめり込む。


 「わたくしに、当たるわけがありませんわぁあ!」


 すかさず、その手首の辺りを両手で掴むと、思いっ切り引っこ抜くように持ち上げ、ぐるりと一回転させながら遠心力を効かせながら放り投げた。 

 全力で投擲された巨人はさながら巨大な弾丸のような速度で、他の鬼たちを巻き込みながら彼方へ飛んでいく。


 しかし、間髪入れずその横から巨大な斧を振りかぶりながら重装歩兵の鬼が突っ込んでくる。


 「お嬢様、大丈夫ですか?」


 斧がセイラへと達する寸前で、清十郎が斬撃を放ち重装歩兵の鬼を鎧ごと両断してしまった。


 「ありがとう」


 「いえいえ、この程度ならばお嬢様ならご自分で何とかなされたでしょうけど……」


 「ええ、でもこの戦いは恐らく長期戦、お互い助け合いながら戦って行きましょう」


 そう言いながら正面を見据える二人の視線の先には、まだまだ大量の鬼たちが控えている。


 「結構な数を倒したはずなのに、まだまだ数は減らないみたいですね」


 嘆くように呟いた清十郎の背後にはこれまでの戦いで仕留めた百体を超える鬼たちの屍が存在していた。 

 二人が到着して経過した時間は未だ五分程度、こんな短時間でこれだけの数の鬼を倒してしまった二人の姿に、周囲の冒険者たちは驚きを隠せなかった。


 中でも『金剛の刃』のクランオーナーである金剛寺アキラは、目の前の光景が俄かに信じられなかった。


 「やはりこの二人は化け物かよ……」


 ダンジョン統括省での劉愛蕾との戦闘の時でも感じたが、Sランク冒険者であるセイラはともかく、自分と同じAランク冒険者であるはずの清十郎と比較しても、戦闘力にかなりの開きがあるのを実感していた。 

 しかも、この二人で戦った場合、お互いのことを知り尽くしているような連携を見せてくる。

 一人一人でも強力な戦闘能力を有しているのに、二人揃えば相乗効果でさらに凄まじい戦果を挙げてくるのだ。


 「悔しいが、さすがとしか言いようがないな」


 アキラがそんなことを考えている間にも、二人は見事な連携を見せながら、鬼たちをどんどん倒していく。


 「さあ、ぼさっとしてないで!あなた方の役目はわたくしたちが撃ち漏らしたモンスターたちを倒すことですわよ!」


 セイラの言葉通り、いくら二人が強くとも、相手は数百にも及ぼうかという鬼の群れだ。

 いくらかの撃ち漏らしはどうしても発生してしまう。


 しかし、その数は数分の間でわずか数体に過ぎなかった。


 強力な鬼のモンスターと言えども、万全の状態でそれだけの数を相手にするだけで済むのだ。

 さすがに負けることは考えられなかった。


 正面から向かってくる多数の鬼をセイラと清十郎が処理し、撃ち漏らした少数の鬼を後ろに待ち構えているアキラを始めとする『金剛の刃』が倒していく。


 「よし……もうすぐで他のクランや冒険者も応援に駆けつけてくれる、このまま行ければ……」


 グランドダンジョンが起因となり発生した未曾有のスタンピードではあったが、セイラと清十郎の参戦が功を奏した形となり、最序盤に関しては上手く乗り切ることが出来ていた。


 しかし、相手はグランドダンジョンのモンスターたちだ。

 この先にはまだまだ強敵との戦いが控えているのは間違いない。


 そんなことを頭の片隅で考えながらも、まずは有利な戦況のままで事を運べていることに、安堵の表情を浮かべるアキラなのであった。


 ◆


 ――同刻、グランドダンジョン『鬼皇の死都』の最奥部。


 このダンジョンは、いわゆる巨大都市型。

 巨大な建造物が立ち並ぶ都市が、全て廃墟と化し、そのままダンジョンへと変化してしまったような見た目をしている。


 その廃都市に生息するのは、様々な鬼タイプのモンスター。

 現在、セイラや清十郎が戦っているようなタイプのみならず、様々な種類の鬼たちが跳梁跋扈の如く徘徊している。


 そして、その全ての鬼たちの頂点に立っているのが、


 グランドダンジョン『鬼皇の死都』のボスであり、『統率者』の一人でもある『修羅皇』大凶丸である。

 その大凶丸は、自らの居城の玉座にて、不機嫌な態度を隠そうともせずふんぞり返っていた。


 「おおい!何だこの体たらくはよぉ!せっかくスタンピードなんてことになってるのに、何故俺はこんなところにいなきゃならねぇんだ!?」


 「仕方ないじゃないですか。いくらスタンピードだからっていきなり大凶丸様が出て行って良いわけがないでしょう?物事には順序ってものがあるんですから」


 「そんなことは知ったこっちゃねーんだよ!現に俺の部下共は人間如きにやられちまってんじゃねぇか!さっさと俺が出て行って人間共を残らずぶち殺した方が速いだろうがよぉ!」


 「いやいや、前も言ったじゃないですか。万が一、あなたが倒されちゃったらこのダンジョンも踏破判定されちゃうんですからね、それだけは何があっても避けなければならないんですよ!」

 

 「ああん!?お前は俺が人間如きに後れを取るとでも思ってやがるのかよ!ふざけたこと言ってやがるとお前からやっちまうぞ、コラァ!もう知らねぇぞ、俺は行く!止められるもんなら止めてみやがれ!」


 ドン!と肘掛けに拳を振り下ろすと、そのまま立ち上がり玉座の間を出て行こうとする。


 大凶丸は『統率者』であり、最強の鬼でもある。

 実力行使に出られてしまうとこの場で止めることが出来るものなどいるはずもない。

 結局、ドシンドシンと大きな足音を響かせながら玉座の間を出ていく大凶丸のことを止めるものは誰もいなかった。


 「ああああ!子供みたいなことばかり言いやがってよぉ!おい、残りの四天王を集めろ!こうなったらこっちも外へ出るぞ!」


 大凶丸の側近でもある優男風の鬼は、自らの忠告に聞き耳を持とうともせず、外に向かってしまった鬼の王に対し、怒りの声を吐きながらも後を追うべく、戦力を集め始める。


 期せずして、鬼たちの最高戦力が早くも地上に出て行こうとしていることを、地上の冒険者たちは知る由も無い。

 冒険者と鬼たちの全面戦争の機会は、大凶丸の短絡的な行動により、想定よりも早まってしまったのは間違いない。


 グランドダンジョン『鬼皇の死都』でのスタンピードは、これより急速な展開を見せることなるのであった。

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