第7話 いざグランドダンジョンへ ~まずはギルドで上級職になろう~
Aランクダンジョン『愚蟲の樹海』を踏破した俺たちは、特典報酬を受け取ると、いつものようにダンジョン入口へと転送された。
転送された瞬間、待ち構えていた大勢のギャラリーから歓声が湧き上がる。
「待ってましたー!」
「お疲れさまでしたー!」
「今回も最高でした!」
「次の配信も楽しみにしてます!」
盛大な拍手と歓声が、洞窟の入口一帯に響き渡る。
……いやぁ。
俺も随分有名になったもんだ。
まあ、九割九分はアイリーンさん目当てなんだけどね!
『深淵の回廊』踏破以降、俺たちがダンジョンから戻ってくる時間を狙って待機する、いわゆる"出待ち組"が急増した。
特にアイリーンさんの人気は右肩上がりだ。
あの笑顔と、とんでもない戦闘力、そりゃ人気が出ない方がおかしい。
……とはいえ、そのうち本当に何かトラブルが起きそうな気もする。
対策くらいは考えておいた方がいいかもしれないな。
そんなことを思いながら、今回の報酬を確認する。
Aランクダンジョン『愚蟲の樹海』踏破報酬。
獲得経験値 100000
獲得金額 10000000円
そして神器が一つ。
俺が手に入れたのは――
【バグスカメラ発生装置】
Aランク神器。
腕時計型の神器で、自分の意思で小型の蟲型カメラを一体だけ生成できるらしい。
耐久力は低く、すぐ壊れてしまうそうだが、その小ささゆえに入り込める場所も多い。
偵察や隠し撮影にはかなり便利そうだ。
そして経験値だが、現在の俺はレベル99。
すでに下級職の上限へ到達しているため、今回の経験値はそのまま蓄積される。
上級職へクラスチェンジした瞬間、一気に加算される仕組みらしい。
そして賞金……一千万円。
Aランクダンジョン一本で一千万円。
今回で五つ目だから、それだけで五千万円。
さらに以前攻略したSランクダンジョン『深淵の回廊』でも五千万円。
つまり――
「……一億円か」
思わず声が漏れた。
少し前まで、配信機材を揃える金すらなくて頭を抱えていた俺が。
まさか数か月で一億円を稼ぐことになるなんて。
本当に人生、何が起こるかわからない。
感慨に浸っていると、隣から穏やかな声が聞こえてきた。
「ハヤトさん。」
「はい?」
「これでAランクダンジョン五つ踏破の条件は達成ですね。」
「はい! あとは俺が上級職になれば条件クリアです!」
「そうですね。それでは早速、冒険者ギルドへ向かいましょうか。」
「はい!」
そう返事をすると、俺はいつものようにアイリーンさんを抱き上げた。
「それじゃあ、しっかり掴まっててください!」
「はい、お願いします。」
次の瞬間、『神速』を発動。
景色が一瞬で後方へ流れ始める。
すると、案の定。
「また抱えてるー!」
「神速さん、それは許さん!」
「アイリーンさんを返せー!」
「うらやま……じゃなくて、けしからん!」
ギャラリーから盛大なブーイングが飛んできた。
これも最近では恒例行事だ。
出待ち組に囲まれないよう、町までは『神速』で一気に移動する。
普通の冒険者では、この速度について来られる者はいない。
だから逃げ切るには一番効率がいい。
……もっとも、アイリーンさんを抱えて走ることについてだけは、毎回コメント欄が大炎上する。
当の本人はまったく気にしていないのだが。
◇
数分後、俺たちは拠点となる町へ到着した。
町の入口でアイリーンさんをそっと降ろし、そのまま冒険者ギルドへ向かう。
この町の冒険者ギルドは、大型ショッピングモールの一角に設置されている。
周囲には武器屋、防具屋、回復アイテム専門店、素材買取店など、冒険者向けの店舗が所狭しと並んでいた。
当然、人通りも多い。
ということは――
「……見られてるなぁ。」
あちこちから視線が集まってくる。
まあ無理もない。
『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』。
今や俺たちの配信は十万人以上が登録する人気チャンネルになっているため、目立たない方がおかしい。
一方でアイリーンさんはというと――
相変わらず、周囲の視線などまるで気にせず、柔らかな笑顔を浮かべたまま歩いている。
……この肝の据わり方は本当に見習いたい。
そんなことを考えているうちに、冒険者ギルドへ到着した。
受付へ向かい、クラスチェンジの手続きを行う。
「それでは、ハヤトさんですね。上級職への昇格手続きを開始します。」
受付嬢が端末を操作すること数秒――
「はい、完了しました。おめでとうございます。」
「……えっ、終わりですか?」
「はい。」
あまりにもあっさりしていて拍子抜けしてしまった。
恐る恐る端末を確認すると――
ジョブ名が『上級配信者』へと変わっている。
どうやら本当に終わったらしい。
さらに蓄積されていた経験値が一気に加算され、レベルは11まで上昇していた。
上級職はレベル1からのスタートになるため、この数字でも十分高いらしい。
「アイリーンさん、お待たせしました。」
「おめでとうございます。」
「ありがとうございます。これで条件は全部達成ですね。」
「はい。あとは政府機関へ報告して、正式な許可をいただくだけです。」
俺は大きく息を吐いた。
Aランクダンジョン五つ踏破に、上級職への昇格。
政府から提示された条件は、すべてクリアした。
つまり、あと一歩で、あのグランドダンジョン『星崩の大魔宮』へ挑戦できる。
胸の高鳴りを抑えきれないまま、俺はアイリーンさんと顔を見合わせる。
「それじゃあ、行きましょうか。」
「はい。」
二人は頷き合い、政府機関が入る庁舎へ向かって歩き出した。
グランドダンジョンへの扉は、もうすぐそこまで迫っていた。
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